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先のことばかり考えて、今を大事にしていないことが間違いだったと気付いた私は、もっとアルフィス殿下に自分の気持ちを伝えていこうと決めた。
いきなり「好き好き」言うなんて(性格上にも)無理だけど、こう、何ていうか、さりげなく伝えていこうと思う。
まず、明日、学園に登校したらアルフィス殿下に謝りにいこう。
逃げるような真似をしてごめんなさいって謝ろう。
それから、アルフィス殿下のこと嫌いじゃないって言おう。
そして、そして、いつも優しくしてくれるアルフィス殿下のこと、す、す、す、すきって言えるかなぁ?私……
う~ん、難しい。ハードル高い。
だいだい、前世で一度だって異性に好きなんて言ったことないのよね、私って。
人生初の告白になるのかな。
うわぁ、どうしよう。私、ちゃんと言えるかなぁ。
やっぱり言うの止める。
いやいや、ここで逃げちゃダメだ。
女は度胸!当たって砕けろだ!
そうと決まれば練習しよう!
きっと緊張で頭が真っ白になるだろうから、いっぱい練習して身体に覚え込まさないと。
一大決心した私は、早速練習するために鏡の前に立った。
表情も大事だからね。
変な顔にならないようにしないと。
私は鏡の前に立ち、まず笑顔の練習をした。
本当なら笑顔を作るなんて簡単にできるのだけど、告白となれば別だ。たとえ練習でも、緊張して笑顔がひきつる。
ヤバい。なんだ、このぎこちない笑顔は。
こんな笑顔で「好き」とか言われても信じてもらえなさそう。
やっぱり、止めようかな……
って、ダメダメ!頑張らないと!
さっ、練習練習!練習あるのみ!
「わ、わ、わたし、アルフィス殿下のこと、す、す、す、す、す……き?」
って、どうして疑問系になるの。
「好き」っていう二文字を誰かに伝えるのがこんなに難しいなんて知らなかった。
告白できる人を私は心底尊敬する。
はぁ、さっきからずっと練習してるけど全然上手くできない。
漫画のティフォンヌもリディア様もけっこう簡単そうにアルフィス殿下に「好き」って言ってたのになぁ。
ん、待てよ。
リディア様はアルフィス殿下に「好き」って言ってたけど、たしか、ティフォンヌは「お慕い申しております」だったような。
おっ、そっちの方がいいんじゃないか。
なんだが、その方が言いやすそうな気がする。
気を取り直した私は鏡に向かって、また練習を始める。
「アルフィス殿下、私はずっと殿下をお慕い申しておりました」
おお、言えた。
しかも、笑顔ではなく真剣な顔で言った方が本気度アップだ。
よし!これでいこう!
私の心に一筋の光が射し、心の中で私は豪快なガッツポーズをきめた!その時――
「お姉様、何してるの?」
………………ひえぇぇぇぇーーー!?!?!
急に後ろから声をかけられた私は心臓が止まるかと思うほど驚いた。
心の叫びを声にしなかったのを褒めてほしい。
恐る恐る振り返ると、そこには弟のフィリックがいた。
天使の笑みを浮かべて。
「フィ、フィリック、ど、ど、どうしてここに?」
思わずどもってしまった。
恥ずかしい……
「お姉様の様子がおかしいって聞いたから心配で様子見に来たの」
「えっ、でも、鍵は?」
「合鍵で開けてもらったよ。皆、心配してるからすぐに開けてくれたよ」
そうか、合鍵か。
で、一番私が怒れないフィリックを寄越したのね。
まあ、たしかにフィリックの天使の笑顔の前では怒ったりできないもんね。
「で、お姉様何をしてたんですか?体調が悪いのではないのですか?」
真っ直ぐな瞳で私を見る天使に、私は何て答えたものか悩む。
「えっと、体調はもう良くなったわ。心配かけてごめんなさいね」
「そうなんですね。よかったお姉様が元気になって!」
「心配してくれてありがとう、フィリック」
「それで、鏡の前で何をしているのですか?」
げっ?!
そこ聞く?
意外とグイグイくるわね。
「べ、別に何もしていないわよ。ただ、髪が乱れていないか気になっただけで……」
ちょっと苦しい言い訳だけど、これで納得してほしい。
「でも、何か鏡の前でブツブツ言ってませんでした?」
げえぇぇぇーーー?!?!?!
見てたの?!そこ、見てたの?!で、そこ追求してくる?!
若干、空気読めない感を感じさせる弟にどう誤魔化そうかと私は必死で考えたけど良い案なんて浮かぶわけがなかった。
「……わないで」
「えっ?」
「お願い!さっき見たことは誰にも言わないで!」
もうこうなったら姉の威厳は捨てて、他言しないように私はフィリックに縋った。
「さっき見たことって?」
「だから!鏡の前でブツブツ……のことよ!」
「ああ、お姉様が鏡の前で『アルフィス殿下、私はずっと殿下をお慕い申しておりました』って言ってたことですか」
………私、今なら恥ずかしさで死ねる。




