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王妃様主催のお茶会は二週間後に開催されるそうだ。
極秘&内輪のお茶会ということで、メンバーは王妃様、アルフィス王太子殿下、私、セイラン公爵夫人の4名のみ。
これって確実にお見合いの図式だよね。
まだ、父親たちがいないのが救いだろうか。
前回招待されたときはアルフィス殿下は(表向きは)メンバーに入っていなかったが、今回はしっかりと最初からメンバーの一人に入っている。
向こうの本気度が窺える。
お父様に決定だと言われ異義を唱えることはできない私は今、お母様の手によって自分磨きに励んでいる。
お父様から事情を聞いたお母様は俄然やる気を出している。
しかも、いつものミーハーモードではなく本気モードだ。
王太子妃候補として恥ずかしくないように仕上げようとする思いがビシバシ伝わってくる。
それは、シーラやフィンリーも同じでいつにもまして私を磨く。
その成果か、私の肌は輝き、まるで乳児のような肌に生まれ変わった。
髪も神々しいぐらいに艶やかだ。
そんな、自分磨きの日々が過ぎ、気が付けば、お茶会は明日になっていた。
その間、私が考えて出した答えは――私は漫画のストーリーから逃れられないということ。
私がどう思おうと、どう行動しようと、悪役令嬢回避のために対策を張り巡らそうが、私は悪役令嬢になるしかないのだ。
だって、あんなに私が王太子妃になるのを反対していたお兄様やお父様があっさりほだされ、賛成派(応援派)になるし、何よりアルフィス殿下の行動力がすごすぎる。
私の方がアルフィス殿下に好意を示さず、王太子妃になることに難色を示したので、殿下の方が私を王太子妃にするべく動き出した。それこそ、感情さえもコントロールされて。
ここまで急展開で王太子妃への道を用意されると、婚約回避は絶望ではないかと思い始めた。
アルフィス王太子殿下とヒロインのリディア様の恋には、悪役令嬢ティフォンヌが必要不可欠ということなのだろう。
悪役令嬢ティフォンヌ――アルフィス王太子殿下の婚約者にしてアルフィス殿下とリディア様の恋の障害となる人物。
どうもがいても、私はその役柄からは逃れられないのだ。
あの日から一週間で、その考えに至り、それから、また一週間でその考えに自分を納得させた。
自分の運命と役割を受け入れようと――
それでも、公爵令嬢としての誇りを忘れた行いだけはしたくなかった。
毅然と優雅に、アルフィス殿下に捨てられる悪役令嬢を演じようと、私は心に決めた。
ネガティブで優柔不断の私が二週間で悪役令嬢の運命を受け入れるなんて、やっぱり私もコントロールされているようだ……
◆◇◆
「今日はお招きありがとうございます、王妃陛下」
「ようこそ、セイラン公爵夫人、ティフォンヌ嬢。今日はゆっくり楽しんでらして」
「ありがとうございます、王妃陛下」
お茶会、当日。
王妃様の私室に通された私とお母様は笑顔で挨拶し、王妃様も笑顔で迎えてくれた。
そして、この人も――
「セイラン公爵夫人、ティフォンヌも、よく来てくれました」
アルフィス殿下も笑顔で私たちを迎えてくれたので、私もそれに応えた。
「ごきげんよう、アルフィス王太子殿下。お招きありがとうございます」
にこやかに始まった、お茶会。
このお茶会が終わった後、私の運命が大きく動き出す予感がする。
アルフィス殿下が私に手を差し出す。
その手を取り、私はアルフィス殿下にエスコートされて奥の部屋へと進む。
私は大きく息を吸い、背筋をシャンと伸ばして、運命が用意したお茶会に挑んだ。




