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 ドレスやら化粧品やらを多量に購入し、次は宝石だと張り切るシーラたちに私は「宝石はまた今度でいい」と伝えた。

 二人は渋っていたけど、大体のものは揃えたし納得してくれた。


 本当は立ち止まることなく、“美”への道を突き進んだ方がいいのかなって思ったけど、ちょっと思うところがあったのだ。


 私はその事について考えたくて「一人になりたい」と二人に伝えた。





 私が考えたい事というのは、今回我が家に来てくれたキャロルさん、フェルさん、シャルロットさんの人生についてだ。

 夢を叶えた三人ともが私の目にはキラキラ輝いて見えた。


 実際は私が思っている以上にとても大変だと思う。

 でも、夢のために三人とも必死で頑張ってる。


 悩んだり後悔したり泣いたり、色々あるだろう。

 でも、決して夢を手離さないで前に前に進んでる。


 だから、あんなにキラキラしているんだと思う。

 それは、外見じゃなくて内から発せられる輝きだ。


 そんな輝きを見せ付けられたらスルーなんて出来ないよ。

 考えさせられちゃうよ。


 馬鹿な私は自分の外見を毎日コツコツ磨こうと決意したのに、ここに来て、また内面も磨いた方がいいのではと心がグラグラ揺らいだ。


 ああ、こんなことだから、私は駄目なんだとまた落ち込む。


 あっちもこっちもと目移りして、『自分』というものが無い。


 外見磨きだろうが内面磨きだろうが、自分がどちらに重きを置くのかさえ、すぐに人に影響されて迷ってしまう。


 昨日、シーラとフィンリーに励まされ外見磨きを頑張ろうと決めたのに……


 今日のように、あんなにキラキラしている人たちを見ていると羨ましくなる。

 私も夢を持って、あんなにキラキラ輝たいって思ってしまう。






 私は机の引き出しからノートを取り出した。


『欠点改善ノート』だ。


 煮詰まった時は、ノートに書いて気持ちを整理しようと思う。


 まず、外見か内面か、ということだが、これはどちらも磨きたいというのが正直な思いだ。

 もし、どちらも頑張るとして外見は昨日決めたようにシーラたちに協力してもらいながら毎日コツコツ頑張るとして、なら内面は?


 夢や目標を持って、それに向かってひたすら努力する。


 でも…私の夢って何?目標って何?


 夢は幸せな結婚?目標は悪役令嬢回避?


 どちらもピンとこない。

 幸せな結婚もこの人がいいって決まってるわけじゃないから具体的に欠けるし、悪役令嬢に関しては不幸になりたくないからって理由で前向きじゃないし。


 確かに、幸せな結婚がしたくて外見磨きを頑張ろうって思ったけど、それって本当に私の望みなのかな。人生の全てをかけてもいいって思うほどの夢なのかな?

 悪役令嬢にしても、それってただの逃げじゃないのかな?

 損な役回りをしたくなくて、ただ避けてるたけだよね。


 いつも損得で物事を考えて、少しでも自分が嫌だな損だなって思うことをさけてばかりで。


 そんな考えだから前世で結婚も恋愛も出来なかったんだよね。


 分かっていたけど、年を取るにつけてその傾向が酷くなっていったような気がする。


 一人で生きていくんだから、これぐらい厳しい目で他人を見ないと自分が痛い目に合うって、どうせ皆他人、いざとなったら誰も助けてくれないって思ってた。





 ここまでノートに書いて、私はすごく暗い気持ちになった。


 色々理由をつけて利己的な考えを正当化していたけど、なんて寂しい人生だったんだろうって思う。


 結局私は、他人(ひ と)を全く信用していないのだ。


「きっと」「どうせ」と悪い方にばかり考えて、自分から変わろうとしなかった。

 傷付きたくない。ただ、それしか考えていなかった。


 分かっていた。分かっていたけど、こうして文章にすると悲しくなってくる。

 私の性格は幸せになれる要素が一つもない。


 こんな人間を好きになってくる、大切にしてくれる、愛してくれる人なんて、絶対にいないよね。


 私だったら、こんな性格の人間絶対に好きにならない。


 だったら、どうすればこの性格を変えられる。どうすれば、この欠点を改善できる。


 ノートには人の悪い所を見ない。悪い方に考えないって書いてあるけど、もっともっと具体的に考えないと駄目だと思う。

 やっぱり世の中には悪意をもって近付いて来る人もいるし、何でもかんでも信じてばかりもちょっと…って思うし。


 だから、私は他人のことが気にならないくらいの夢が欲しい。


 欲しいって思っている時点で駄目かも知れないけど、傷付いてもその傷が気にならないくらい、ううん、糧になるくらいの夢中になれる夢が、目標が欲しい。


 そうすれば、私は外見も内面も輝けるような気がする。


 まだ、その夢は見つかっていないけど、このまま人生の困難を避けて通るだけの人生を歩むのは止めよう!


 たとえ、壁にぶつかっても乗り越える力と精神力を鍛えよう!


 その壁にぶつかった時が真の勝負だ!


 具体的な案も方針も決められなかった。

 でも、私は少しすっきりした気分で、自分の悩みや思いを綴ったノートをまた閉じた。








「ティフォンヌ様、そろそろ夕食のお時間です」


 私が机に向かって、あーだこーだと考えているうちにたいぶ時間が過ぎていたようた。

 フィンリーに声をかけられ、時計を見ると、確かにもう夕食の時間が迫っていた。


 いつもと同じ時間の流れ、生活パターン。

 でも、今日は化粧品を買ったりドレスを選んだりと、私にしては中々充実した一日だった。


 何より一番の収穫は、夢を叶えてキラキラと輝いている人たちに出会えたことかもしれない。


 私は椅子から立ち上がり、軽い足取りで食堂に向かった。

 もちろん、その際、シーラとフィンリーに「今日はありがとう」というお礼を告げて。









 ◆◇◆


 今日はお父様も早く帰宅できたらしく、夕食は家族全員で食卓を囲む。


 いつものようにワイワイガヤガヤ、楽しく食事……のはずが今日はどうもお父様と様子がおかしい。

 口数も少ないし、表情も固い。

 お父様は普段から負の感情を面に出す人じゃないのにどうしたんだろう。


 私が不思議に思っていると、お父様が私に声をかけた。


 ドキッ!


 もしかして、怒ってる理由は私?私、何かやらかした?ひょっとして、今日の買い物の請求額が凄すぎたとか?


 嫌な汗が背中を流れる。


 けど、声をかけられた理由は違う理由だった。


「ティフォンヌ、実は、王妃様からお茶会へのお誘いを受けているんだが…」


 えっ、お茶会?また?


 お父様が神妙な面持ちで語った内容に私は思わず疑問形になる。


「また、お茶会ですか?お兄様も一緒に?」


 また、お茶会という名の集団お見合いを開くとは王妃様は意外に世話焼きなのだろうか?

 それとも暇なのか?


 ちょっと意地悪な考えをしてしいたら、お父様は神妙な面持ちを不快感満載な面持ちに変え、私に爆弾発現を落とした。


「いや、先日のようなお茶会ではなく王妃様の極めて私的なお茶会だ。ティフォンヌとマリーシアを招待したいと……」


 私的な…お茶会…


 あ、それ、無理です。お父様、断ってください。







 ちなみにマリーシアとはお母様のことです。














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