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 部屋に戻って、私はシーラとフィンリーにお父様から買い物の許可をもらったことを嬉しそうに話した。


 二人は「わざわざ旦那様に許可をもらうほどの買い物ではありませんよ」と笑いながら言うけど、いやいや、結構な買い物をしようとしてるよ、私。


 念のため、どんな買い物なら許可がいるのか訊ねてみると、二人はそうですねぇと少し考えてから、別荘とかでしょうかと答えた。


 別荘!


 私はその答えに心臓が跳ね上がるほど驚いた。

 だって、許可がもらえたら買ってもらえるってことだよね。


 別荘が欲しいとは思わないけどあまりにスケールの大きさに、私はとんでもない家に生まれてしまったんだなって再認識した。


 とりあえず別荘の話は置いといて、私はシーラに「どのお店に買いに行くの?」と訊ねてみた。

 すると、シーラの返事は私の予想を反していた。

 なんと、商品は買い物に行くのではなく取り寄せるのだという。


 色んな店の商品を取り寄せて、家で商品を選ぶという正にセレブなお買い物方法をするそうな。


 でも、これはセイラン公爵家に限らず貴族なら当たり前の購入方法で、貴族が街に下りて買い物したり食事をしたりするのは遊びの一つで、日常的に行うことではないし、ガチ買い物は自分で店に買いに言ったりしないのだそうだ。


 私の予想では、お母様とかは使用人をぞろぞろ連れて、大人買いとかしてるのかと思っていたけど、そうか、この世界でもセレブはやっぱりセレブな買い物をするんだ。


 私は自分が優雅に「コレとアレと、そうね、ソレも」と、自分の部屋で商品を選ぶところを想像して、ほほう、と感嘆の声を出してしまった。






「午前中は、化粧品や香油等のお品を選びましょう。それから午後はドレスを。今朝、ティフォンヌ様がドレスがもう少し欲しいと仰っておりましたので今、王都で人気のデザイナーを呼びました」


 今日の予定をフィンリーから聞いて、なんて仕事が早いのかと感心する。

 それにしても、人気デザイナーをいきなり呼び出すなんて、そんなこと出来るの?


 私がその事を訊ねると「セイラン公爵家に呼ばれて断る者はおりませんわ」と返された。


 いや、でも、着るの私だからね。

 お母様やミルティナだったら、デザイナーも「腕がなるわ!」って喜ぶかもしれないけど、私だったら来てビックリ、そして、ガッカリってなるかもしれないのにセイラン公爵家の名で呼びつけるなんて無謀過ぎる……


 と、またネガティブな考えをしてしまう私だった。











 ◆◇◆


 午前中の商品選びは順調に終わった。

 シーラたちが私に合いそうな3つのブランドを選んでくれて、その中から一つ一つ試して、その内の一つがとても気にいったので、そこのブランドを購入することを決めた。


 そのブランドの名は「キャロル・フェル」という名で、キャロルとフェルという二人の女性が立ち上げたブランドだそうだ。

 二人は幼馴染みで、化粧品の店を出すのが幼い頃からの二人の夢だったらしい。

 20歳になった今も結婚せずに仕事一筋で頑張っているらしい。


 二人は私が自分たちの商品を選んだことをとても喜んでくれて、そんな若い二人を見ていると私も選んで良かったって思うし、夢を持って働く女性は本当にキラキラしていて凄いなって思う。


 午後からはドレス選びだったけどシーラたちが呼んだデザイナーも若い人だった。

 しかも、シングルマザー。

 子供さんが一人いて、両親に助けてもらいながらデザイナーの仕事を続けていると言っていた。

 旦那様とは離婚して、デザイナーの仕事が忙しくてすれ違いの生活が続いて、旦那様が浮気して離婚してそうだ。


 この世界でも、前世でよく聞いた家庭事情というのは存在するのだなぁと感慨深く思う。

 色々苦労してるんだなって思うけど、ドレスの腕は一流だった。

 この腕なら、旦那捨てて仕事を取るなって思うほど。


 私はシャルロット氏のドレスをとても気に入って、既製品のドレスを3着購入した。

 そして、新しいドレスも3着オーダーした。

 私が口でこんな感じのドレスが欲しいと伝え、それを元に新しくドレスをデザインしてくれるという。


 これにて、本日の買い物は終了となった。



 楽しい時間はあっという間に過ぎて、今は一息ついてお茶を飲んでいる。

 それにしても、あれだけの商品を目の前に並べられたら、どうしてあんなに欲しくなるんだろう。


 一つ一つ商品を試して、ドレスも一着一着試着して。


 皆も一緒に選んでくれて、凄く楽しかった。


 でも、ちょっと買いすぎたかなっていう気持ちもあって、少し不安になる。


「ねえ、今日買いすぎたかしら?」


 私は側にいたフィンリーに訊ねてみた。


「いいえ、買いすぎなんてことはありません。本当はもっと買っていただきたいぐらいです」


 フィンリーは私の不安を吹き飛ばすぐらいはっきり言い切った。

 ちょっと安心するも、それでも、あれ以上買うって……


「それは言い過ぎよ。そんなに買ったらお父様に怒られてしまうわ」

「そんなことありませんわ。ミルティナ様は毎月、これぐらいの買い物をなさっていますのよ。奥様にいたっては金額がお嬢様方よりも0が一つ多いです」


 我が家の女性郡の浪費ぶりに私は頭がクラクラした。

 そこに私も加わろうとしていることに罪悪感が拭えないが、フィンリーが「それぐらいセイラン公爵家にとっては屁でもありません」と言っていたので気にしないようにしよう。


 でも、


「次は宝石ですわね。新しく買ったドレスに合う宝石を買いましょう。さっそく宝石商を呼ばなくては」


 と、フィンリーが言い出した時は流石に私は止めに入った。

 けれど、「宝石は必需品です!」と押し切られてしまった。





 ああ、本当にお父様に怒られたりしないかしら……







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