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本日、2回目の投稿になります。

 公爵令嬢としての見栄を捨てて悩みをに打ち明けたものの、二人は一瞬言葉を失って切なそうな顔をした。


 その顔を見て、私は「言わない方がよかったのか」と、また不安に襲われる。

 いくら親身になって仕えてくれるからといって、主人の心の奥の悩みを侍女である二人に打ち明けてしまったのは間違いだったのか。


 私はまた空気を読めない行動に出てしまったのか……


 私に掛ける言葉を失ってしまった二人の顔を今度は私が見れなくなってしまった。


 下を向いて、この場の空気を変える方法を必死で考える。

 けれど、あまり優秀とは言えない私の頭では中々良い方法は見つからなくて。


 ああ、こんな重い悩みを打ち明けるんじゃなかったと、さらに落ち込む。

 もう、いっそのこと「なーんちゃって!嘘、嘘」とか言って笑って誤魔化そうかな、なんて馬鹿な考えが頭を過る。


「ティフォンヌ様、そんなことをお考えでしたの…」

「なんて…なんて、おいたわしい…」


 私が支離滅裂な考えで頭をいっぱいにしていたら、目の前の二人は涙を流し始めた。

 その様子を見るに、いきなり重い悩みを打ち明けた私に呆れるとか手に負えないとか、そんな風に思っている感じではない。


 本心なのか気を遣っているのか定かではないが、あからさまに「めんどくせーこと言い出したよ」みたいな態度を取られなくてホッとした。


 よし!この流れに任せて『今言った悩みは無かったことに』作戦に出てみよう。

 そして、最初の恋愛相談への場面に戻そう。


「あの、急にごめんなさいね、変なことを言い出して。気にしているって言ったけど、えっと、皆が私のことを大切に思っていてくれているのは分かっているから、その、それは嬉しいし、この家に生まれて良かったって思ってるから」


 我ながら、説明下手だと自分でも反省する。

 もっとスマートに己の言動をフォローできないのかと。

 大体、フォロー出来ないならあんなこと言うなよって、自分で自分にツッコミたい。


「いいえ、ティフォンヌ様。私たちティフォンヌ様の真の悩みをしかと受けとりました。ティフォンヌ様の悩みを少しでも解決すべく、私たちは全力でサポートいたします!」

「そうですわ、ティフォンヌ様!私たちはずっとティフォンヌ様が一番可愛らしいと思って仕えて参りましたが、ティフォンヌ様にそのような悩みを抱かせ、なお気付かないなど侍女として未熟でございました」

「これからはもっと精進し、ティフォンヌ様をさらに美しいご令嬢に導きたいと思います!」

「ご要望があれば、何でも仰ってくださいね!」


 二人は私をさらに美しくすると無謀な誓いを立て「頑張りましょう!」と奮起し、「今から計画を練り、準備します!」と言って部屋から出ていった。


 部屋に一人残された私は暫く呆然とする。

 そして、ハッと我に返り、一番最初に思ったことが二人のポジティブさについてだった。


「すごい…なんて、前向きなの…」


 私が家族の中で一人平凡顔だという悩みを受け、これからそんな悩みがなくなるぐらい綺麗になるように頑張りましょう!なんて、普通……思わないよね。

 実際、本人は全くそんなこと思ってなかったよ。

 確かに、私一人だけ(かぞく)と顔が違うって僻み根性がなかったと言えば嘘になるし、(かぞく)みたいに綺麗な顔になりたいって願望も正直ある。でも、現実問題絶対そんなの叶いっこないって分かってるし、そこを目指すのは時間と無駄というか努力するだけ無駄っていうか。

 だから、二人とも「そんなことないですよ」「ティフォンヌ様は可愛いですよ」って、言葉だけの慰めをくれるだけだと思ってた。


 なのに、頑張ろうって、一緒に頑張ろうって……


 どうしたんだろう、私?

 涙で前が見えない。


 どうして泣いているんだろう?


 悲しい?

 虚しい?


 違う。


 私、嬉しいんだ。


 二人が私のことであんなに真剣になってくれて、あんなに前向きに考えてくれたことが、すごくすごく嬉しいんだ。


 前世ではこんなに私のことに親身になってくれる人なんていなかった。


 それでも、人のせいにしては駄目だと、人は一人で戦って生きていくものだと言い聞かせていた。


 味方なんて……いらないって。


 でも、でも、心のどこかで求めていた。

 私の味方になってくれる人のことを。

 信じられる人の存在を。


 ありがとう。

 ありがとう、シーラ、フィンリー。


 私、頑張るね。

 二人が私のために頑張ってくれるなら、私は二人のために頑張るね。

 最初から無駄だって決めつけないで、最後まで頑張るね。




 私は涙を拭いて、机の上のノートを見つめた。

 私の悩みや欠点がたくさん書いてあって、見ているだけで胸焼けしそなノート。

 でも、無駄じゃない。


 こうして文字にして書くことで自分に向き合えて、気持ちを整理できたと思うから。


 まだ、ノートに書かれた悩みの答えは全然出ていないけど、私はノートを静かに閉じた。


 そして、机の引き出しにそっと仕舞う。


 また、必要になる時がくるかもしれない。

 でも、今は必要ないと思える。


 頭の中でぐるぐる考えて、頭がパンクしてしまう時にはまた出して気持ちを整理すればいい。




 今は、シーラとフィンリーに勇気をもらったから、結果に拘らないで頑張ろうと思う。







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