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 友達が私の恋バナに興味を持ってくれたのは凄く嬉しかったけど、ここで調子に乗っては駄目だよね。


 私は「ここで生まれ変わった私の真価が問われると思え!」と気合いを入れる。


 まだ、13歳。もう、13歳。


 年齢は関係なく、どんな場面でも己の立場・役割を把握し、それに合った対応ができる者が幸せを勝ち取ることができるのだ。


 若いから許されるなど、そんなことは絶対にない!


 私は公爵令嬢。


 平凡顔のツルペタスタイルの公爵令嬢。


 決して、王太子殿下に相応しいと言ってもらえるような容姿ではないことを自覚せよ。


 私はこの国で二番目に偉い方と噂になっているかといって嬉しそうな顔は絶対にしないで、何とも思っていないという顔で、興味津々な皆の質問に答えた。


「王太子殿下とはほんの少し話をしただけですから。それに、殿下が私に声を掛けてくださったのはお兄様と殿下が学友だからだと思います」


 よし、完璧!

 模範解答だと、自画自賛する。これなら、自慢に聞こえないだろう。


 でも、満足気なのは私だけで、お三方は「えっ?それだけ」みたいな顔をしていた。

 そして、皆が息を合わせたように、フウッとため息をついた。


「じゃあ、殿下の他には?いくらお兄様目当てのご令嬢たちに囲まれていたとはいえ、全く男性と話をしなかった訳じゃないんでしょ」


 そう言われて、私はお茶会のことを頭の中で一生懸命思い出す。


「えーと、お兄様のご学友の方が何人か挨拶に来てくれました。でも、挨拶をしただけですね」


 私がそう答えると、また目の前のお三方はため息をついた。

 そして、ローザリエ様が呆れたようにこう言った。


「ティフォンヌ、貴方、優しくて穏やかな方と結婚したいと結婚に前向きなのに恋愛に対してはずいぶん消極的ね」と――


 それに続くようにシルビア様も。


「色んな方とお話しないと優しくて穏やかな方は見つからないわよ。それに見つかったからといってすぐ結婚なんてことはならないんだから。まずは、向こうにも興味を持ってもらわないと」


 ううっ、正しく正論。

 ローザリエ様とシルビア様の言うことが尤も過ぎて、私は反論できなかった。

 それに、それは私も己の欠点として理解しているのだ。


 どうにも異性に対しての苦手意識が抜けきれず、恋愛したい、結婚したいという気持ちだけは強いのだけど、その気持ちが行動に移れないのだ。


「ティフォンヌ様は奥手だから、集団のお見合いより一対一のお見合いの方が合っているのかも知れませんわね」


 そんなアドバイスをくれたのはリリアナ様だった。アドバイスは有り難いけど、一対一はハードルが高過ぎるよね。


「私には一対一は無理です」と正直に言うと、リリアナ様は「困ったわねぇ」と母親のように呟いていた。


 ヤバイ…自分で恋バナを振っといて、私が一番恋愛下手なことがバレてしまった。


 自ら墓穴を掘ってしまい、私は項垂れるしかなかった。


 そして、最終的に3人から言われたことは「まず結婚相手を探すよりは恋人を作った方がいい」だった。

 手当たり次第付き合えとは言わないが、最初から結婚相手として見ていると相手もプレッシャーを感じるからと言われたときは、


『えー、それじゃあ、駄目になった時、また一から相手を探さなきゃいけないの』と思ったし、


 取り合えずお茶会や夜会に出席した時には色んな人と会話をしろと言われた時は、


『そんなたくさんの人に声を掛けるなんて無理。でも、一人の人とゆっくりじっくり話すなんて高度な技も持ち合わせてない』と思ってしまった。


 結局この日は、皆から恋愛についてのアドバイスを貰ったものの、己の進歩のなさに気付かされただけだった。

 私は帰りの馬車の中で、家に帰ったら一人反省会をしようと決めた。






 夕日が沈む前に屋敷に着き、私は自室へと籠る。

 夕食までにはまだ時間があるので早速今から一人反省会をしようと思う。


 まず、ノートとペンを用意し机に向かう。

 前世では人生半分諦めていたから自分の欠点を分かっていても向き合うこともなければ改善しようとも思わなかった。


『どうせ、私なんて…』


 が、合言葉のように全てを諦め、ぬるま湯のような生活を送っていた。


 しかし、現世ではそんな人生を送りたくない!幸せな人生を送りたい!と決心したのだから、私は私の欠点から目を背けずに真っ向から挑む義務があるのだ。


 だから、頭の中でぐるぐる考えていているだけでは駄目だと思う。

 そんなことをしていても、出口のない迷路をただ歩き回っているようなものだ。


 自分では前進しているつもりだったけど、今日、友人から忌憚ない意見をいただき、半歩ぐらいしか前進していないことを知った。


 正直、ショックだった。

 自分では成長しているつもりでも、他人から見たら全く成長していないことに。


 でも、私は挫けない!諦めない!


 前世のように『どうせ…』なんて言葉に縛られたりしない。


 馬鹿は馬鹿なりに努力するのみ。

 よって私は、自分の欠点をしっかり紙に書いて具体的な改善策と目標を立てようと思う。


 まず、今日ご指摘いただいた恋愛についてだが、これはやはり前世のことが尾を引いていると思う。

 37年間も彼氏なしの人生を送ったのだ。男にも慣れてないし男心なんてさっぱりだ。


 身内だと平気なのに、身内以外の男性とコミュニケーションを取るのは私にとってはかなりの神経を使う。

 でも、それでは駄目だと分かっているから、お茶会という場にも勇気を出して出掛けたのに、結果は散々だった。

 自分では参加しただけでも進歩だと思い込んでいたけど、やはりそれでは駄目なのだ。


 もっと具体的な対策を練らないと。


 まず、第一に私は男性に対して警戒心が強すぎる。

 それは、単に自分が傷付きたくないからだ。それは、前世でも分かっていた。確かに子供の頃に傷つけられたはしたが、それをいつまでも引きずってしまったのは私の心が弱かったから。

 悔しいなら見返してやりたいなら、もっと痩せる努力をして勉強して自分磨きに励めばよかったのに、それをしなかったのだから、人のせいばかりには出来ない。


 現世では頑張って細い身体をキープしているが、そこで止まってはいけない。


 むしろ、これからが勝負なのだ。


 そこで、私が一番の課題とするのは『男性への苦手意識をなくす』ということだ。苦手意識をなくすためには、まず傷付くことを恐れないということ。

 何でもありでは困るが、何も始まっていないのに、裏の裏の裏まで考えていては何も始まっていないのに始まらない。

 悪い方、悪い方に捉えて、人の悪いところばかりを見るのは止めよう。

 それは、異性に関わらず同性でも善いところを見た方が良いに決まっている。


 私はそのことをひとつひとつ丁寧にノートに書いた。


 さて、その次は――と、具体的な改善策に移る前に、侍女から「夕食のお時間です」と言われた。


 もうそんな時間なのかと、私はペンを置いた。

 そして、椅子から立ち、食堂へ向かった。


 自分の都合で人を待たせてはいけないもんね。








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