ギルドの護衛
それぞれのギルドから、提案を受けます。
「ならば少年、君は伝承の選ばれし者、なのか?」
「え、えぇ…と」
大きな瞳で見つめるツタイから目をそらし、はぐらかす。
自分から「はい、俺は伝説の選ばれし者です」だなんて答えて厨二病だと思われたくないじゃないか。
「そうキン。ゲイエスはキンちゃんが選んだ勇者キン」
「何と!」
だから代わりに答えたキンちゃんの言葉に赤面してしまった。
「ほら、伝説の勇者さまに早く道を開けるキン」
得意げに言って胸ビレをしっしと動かす、いやに不遜な態度だ。こっちが恐縮してしまう。
「お待ちなさい。では、その魔王打倒の旅に我々のギルドから護衛をつけましょう」
「へ?」
デリスからの思いもよらない提案に、ゲイエスもキンちゃんもぽかんと口を開ける。
「抜け駆けを申すな!われらティギシーも護衛をつける!」
「え…でも…」
心強いが、ギルドに依頼する場合に必要なものがある。
それは、お金だ。
依頼の内容によって金額はことなるが、魔王討伐の護衛となれば数十万単位となるだろう。
そこらへんの魔物の討伐や護衛とは格が違う。
ゲイエスは財布の入っているポケットを伺った。
今財布には二千サイーヴしかない。そのなけなしのお金は、今週発売のセシリアのグラビアが載る週刊誌に充てる予定で、 あとはお昼ご飯とかノート代と言った雑費につかうものだ。
「キンちゃんたちが依頼したわけじゃないキン。それに高校生にそんなお金はないキン。ただでさえゲイエスはアイドルにつぎ込ん…ムゴっ!」
慌ててキンちゃんの口をふさぐ。それは事実だが、こんな大勢の前でアイドルにつぎ込んでいるなんて暴露しなくてもいいだろうに。
「いえいえ。もちろん、報酬はいりません」
キンちゃんの言葉にデリスは手を振ってにこやかにいう。いや、細目だからにこやかに見えるだけかもしれないが。
「どちらのギルドが役に立つか証明するには、魔王打倒は絶好の機会だからな」
鼻息荒くツタイも目を輝かせた。
「ナァリスからはトップクラスの剣士であるハレイ・シンをつけましょう」
デリスの言葉に一人の青年が出てきた。金の髪を一つにまとめ、すらりとした高身長の、整った顔立ちをした一見爽やかな好青年である。
「ハレイ・シンだ。こいつらより役に立つってことを、証明してやるよ」
ハレイがにっこりと笑うと、整った白い歯がキラリと光ったような気がした。
「キザったらしいやつキン…」
「ティギシーからは拳闘士ヴォール・ロックを。こやつは先だって行われた世界大会で優勝した実力の持ち主だ。きっと役に立つだろう」
まだ少し幼そうな見た目の、青年と少年の中間くらいで、かっこいいというよりは可愛い、という表現が似合いそうな男だ。
額当てをし、いかにも暑苦しそうな彼は拳を突き出しながら飛び出してきた。ツンツンと逆立っている髪は闘気の表れだろうか。
「ヴォール・ロックだ!よろしくな!」
「あ、もうすでに暑苦しそうな感じだキン」
「では、魔王を倒すまで、我々は休戦ということにしましょうか」
「承知した。だがうちの顧客には手を出すなよ」
「選ぶのは依頼人の方ですからね…」
「フン、言ってろ」
意味深に笑みを浮かべるデリスを鼻で笑い、立ち去った。
それぞれのギルドマスターが去ったことで二つのギルドはにらみ合いをやめ、それぞれの拠点へと引き上げて行った。
そうしてスミョシの広場はようやく穏やかなじかんが流れ、市場の人々も商売を再開し始めた。
「おお、解決したかの?」
そこへ棒状黒糖蒸しパンを抱え、そのうちの一本を上機嫌で食べながらユベーシが戻ってきた。
相変わらず行儀が悪い神だ。
「ん?なんじゃ、こやつらは」
棒状黒糖蒸しパンを食べ終わり、目の前の二人を怪訝そうに見た。
「俺はヴォール・ロック!魔王打倒のため、強力させてもらうティギシーのメンバーだ」
片手でガッツポーズをして自己紹介する。
「俺はハレイ・シン。ナァリスのメンバーだ。ティギシーのやつより役に立つってことを証明してやるよ」
「何だと貴様!」
「お?何だ、やんのかガキンチョ?あ?」
「なんと血の気の多い奴らじゃ。わらわは苦手な部類じゃ…」
あぁ、うるさいうるさい、とふたりの熱気に当てられたように額に手を当て、さっさと退散してしまった。
「う、うーん…はっ!なぜ棒状黒糖蒸しパンを…?!やだ、あたしのお小遣い減ってる!!ユベーシさま……!」
自我を取り戻したミルフィは、持っていた棒状黒糖蒸しパンに驚き、恐る恐る財布を確認してわなわなと悔しそうにつぶやいた。
「あら、えと、なにこの人たち」
そこでやっとヴォールとハレイに気付いたようで、ゲイエスを振り返った。
「俺はヴォール・ロック!魔王打倒のため協力させてもらうことになった、ティギシーのメンバーだ!」
「俺はハレイ・シン。ナァリスのメンバーだ。ティギシーのやつより役に立つってことを証明してやるよ」
「何だと?!」
「お、何だ、やんのかガキンチョ、あ?」
「また同じ様なセリフを言ってるキン…バカなのかキン?」
キンちゃんが呆れたように呟くが、にらみ合う二人には聞こえていないようだ。
「ギルドって、そんなお金あるの?」
「なんかタダだっていわれて…」
ひそひそと聞いてくるミルフィに、疲れた様に答える。本当にどっと疲れが出てきたのだ。
「押しつけられたようなものキン」
「えぇええー…」
せっかくゲイエスと二人でデート気分だったのに、とがくりとうなだれるミルフィには、キンちゃんの存在などはずっと眼中になかったようだ。
「とにかくさっさとサイヴァッタに行くキン!」
こうしている間にも世界の危機が進んでいるのだと、珍しく真面目に言ってゲイエスたちをせっついたのだった。
ハレイ・シンとヴォール・ロックは本当強いです。ますます主人公ゲイエスの影が薄くなってしまいます…




