ギルドのいがみ合い
たどり着いた町では、何やらいがみ合いが起きているようです。
石戸神社を出たゲイエスたちは、幸い魔物にも会わず無事にスミョシにつくことができた。
「何の騒ぎだキン?」
見れば中央の広場に人だかりができていた。
その中では二手に分かれて何やら言い争っているようだ。
「このスミョシは代々我らティギシーがギルドを運営してきた町だ。お前たちナァリスなどは必要ない」
赤い着物に身を包んだ娘が出て行け、と手を振っていうと、対面に立つ白髪の男はやれやれと首を振って肩をすくめた。
彼らの背後には多くの人が並んでおり、それぞれお互いにらみ合って火花を散らしている。
そのせいで町の空気はとても悪い。
息が詰まりそうだ。
もう帰りたい。
「それを決めるのはあなたではなく、町の人々では?」
「それは聞くまでもなかろう」
「さぁ、それはどうでしょうねぇ」
意味深に言う白髪の男の言葉に、赤い着物の娘は怒りのためか顔を赤くした。
「スミョシの人々が我らを選ばぬはずがなかろう!」
「そうだそうだ!」
激昂した娘の言葉にギルドのメンバーたちが応じる。
中には今にも飛び出していこうとする者もおり、それらを片手で制した娘は
余裕の笑みを浮かべる白髪の男を無言で睨みつけた。
それまで騒がしかった広場は シンと静まり、緊張が走る。
「さぁて、わらわは棒状黒糖蒸しパンを探すかの♪」
だが、そんな状況などお構い無しに、再びミルフィに入ったユベーシは浮き浮きとどこかへ行ってしまった。
人の世の争いは神にとっては気にとめるほどの価値など無いように。
「ナァリスとティギシーってなんだキン?」
「ギルドさ。困っている人の手助けをするんだ。お使いから護衛、魔物退治までなんでもやるんだ」
スミョシはもともと【ティギシー】がギルドを始めた町でもある。
そこに、新しく発足したギルド【ナァリス】が拠点を作ったらしく、それで揉めているようだ。
にらみ合いの中央にいる赤い着物の娘と白髪の男がそれぞれのギルドマスターなのだろう。
ティギシーのギルドマスターである赤い着物の少女の名はツタイ・ミズクという。
ティギシーは赤い花がギルドの象徴になっており、彼女が身にまとう着物にも、ギルドの象徴となっている花が描かれている。
ツタイの姿は少女だが、力の強い魔導師で、実際の年齢は還暦を超えてるという噂もあるらしいが、多くのギルドメンバーを従え、白髪の男と堂々と対峙する様子を見るからには、その噂も本当なのだろうとゲイエスは妙に納得した。
ナァリスのギルドマスターである白髪の男性の名はデリス・アカシャという。ギルドの象徴は二羽のカラスだ。
年はおそらくツタイの噂の実年齢と大して変わらないと思われる。
彼は若い頃から有名な剣士で、ドラゴンスレイヤーの異名も持っている。
「っていうか、通れないキン。人の役に立つどころか迷惑になってるキン」
どっちも使えないギルドだとつぶやくと、広場にいた全員の視線がゲイエスに向けられた。
「お、俺何も言ってませんよ?!」
慌ててキンちゃんの口を塞ぎ、弁解するが。
「キンちゃんたちは急いでいるキン!くだらない争いで道を塞がないで欲しいキン!!」
「き、キンちゃん!!」
「くだらない、だと?」
しーっ、しーっ!!っと口に手をあてるが、キンちゃんの言葉にツタイは片眉をピクリとさせ、不快そうにしたが、デリスの方は細目のためか、感情が読み取れない。
しかしその背後にいるギルドのメンバーたちは一様に色めき立ち、ザワザワとしている。
中には物騒なことに武器を持っているものもおり、部活で使っている竹刀で太刀打ちできるのか、と膝がガクガクした。
たくましい体格の、生傷もある戦士たちなど歴戦のものたちに睨まれ、まるで蛇に睨まれたカエル。
正直泣きたかったし、ちびりそうだった。
でもセシリアちゃんにカッコ悪いところは見せられない、といつ飛びかかられても大丈夫なように密かに竹刀を握った。
「ん…?少年、さきほどから喋っているその、赤いものは…?」
「…もしや伝承に聞く赤き使い、ですか?」
いがみ合っていたことも忘れ、ツタイとデリスは顔を見合わせた。
「そうキン。キンちゃんは伝説のキンちゃんキン」
伝説のキンちゃんとは伝わっていないだろ。とおもったがあえて黙っておく。
「やはり赤き神の使い、ですか」
面白そうにデリスが呟いた。
ティギシーの本部に支所を作ることにしたナァリスなので、ギルマスが出張っています。
ちなみにユベーシが食べに行った棒状黒糖蒸しパンは、新潟県民にはおなじみのお祭りメニューです。
ただ、新潟市と地元とでは呼び名が違います。ぽっぽ焼きと蒸気パンです。うちの方は蒸気パンです。ぽっぽ焼きの方が有名ですけどね…。
新潟県民にはムフフでも他県民には何のこっちゃですみませんな話ですが、少しでもモデルとなって居る新潟県某市に興味を持ってもらえたら嬉しいです。




