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裏声金魚に導かれし冒険譚  作者: 南波 由花
石戸神社
4/31

とりあえずの目的地

神官から行け、と示された場所は…?

「あ、めおと饅頭!」


神官の家の茶の間に通されると、しばらくしてお茶とともに、おじいさんとおばあさんの顔を模した饅頭が出てきた。


国王夫妻の夫婦円満を願い、その昔に作られたサイヴァッタ銘菓である。


白い皮のズズサ饅頭のほうは普通のあんこ、薄桃色のババサ饅頭には白餡が入っている。


サイヴァッタの昔の言葉で、ズズサは、おじいさん、ババサとはおばあさんのことである。


おじいさん、おばあさんになるまで、なってからも仲良く過ごせるようにということである。


ゲイエスは好物である黒あんの方のズズサ饅頭を頬張った。甘いあんこと少し塩気のある皮が絶妙だ。


「ゲイエス、おめさんはおれがよく聞かすてたこの伝承、覚えてらってか?」


世界が危機に瀕すとき

赤き神の使いが現れ

選ばれし物を導き

虹の橋をかけるであろう


その問いにゲイエスは呟くように言った。


小さい時から神官から何度も聞かされていた言葉で、もう諳んじて言える。


だからキンちゃんをみて、すぐ神官の元に行かなければと思ったのだ。


「でもこれが神のお使いなんですか?」


男の裏声で喋るこれが、神の使い?と、まじまじとながめる。


「ゲイエス、そんなに見つめるとおいらに惚れてしまうキンよ」


惚れねーよ。俺にはセシリアちゃんがいるわ。とムッとして目を逸らした。


「そーいんだて。おめさんもすって(知って)のとおり、チンギョ(金魚)台輪は子どもたつ(子どもたち)がしっぱる(引っ張る)台輪らども、台輪というのは神様の乗り物だこてや。だすけ、チンギョ(金魚)台輪もまた、神の乗り物であるんだてば」


「ほとんど何を言っているかよくわからないキンが、とりあえずこの神官が言う通り、キンちゃんは神の使いキン」


えっへん、とキンちゃんは胸を張って言う。


「おめさんのとこに、この神のお使いがいらすたのも何かの運命だこってな。うん、よっす、ゲイエス。これからおめさんはサイヴァッタ城へ行きなせ」


「え、城に?何故ですか?」


「詳しくは王宮神官から直接話をききなせ。おれよりも詳しく知ってるすけに。国にだば、すりょう(資料)もいっぺこと(沢山の意味)あるこてね」


茶箪笥の引き出しから紙と筆を出して、神官は何やら書き始めた。


「でも俺、今から学校…」


「休みなせ。おれから連絡しておくすけ」


そう言いながら指を唾をつけて、二枚目の便箋をめくる。


「親には…?」


「ご両親にもおれから連絡しておくすけ。心配ねーこって」


筆を置いて封筒に入れ、蝋で封印した。


「それはおいらが預かるキン」


そう言って、神官がゲイエスに差し出そうとした封筒を、下の台の部分に吸い込んだ。


「え、どういう仕組みこれ」


キンちゃんよりもはるかに大きな封筒だった。それが一瞬で吸い込まれたのだ。


「いやーっ!やめるキン!!エッチ、スケッチ、ワンタッチだキーン!!」


不思議に思い、キンちゃんを捕まえ、逆さまにして台座部分を覗こうとしたが、何も見えなかった。


「こんなはずかしめ…ひどいキン…」


何だつまんない、とキンちゃんをポイと放ると、今度は、ババサ饅頭を頬張った。黒あんよりもあっさりした白あんがお茶に合う。


饅頭を食べながら仕組みを考える。甘いものを食べると考えがはかどるのだ。


「あの台座部分との継ぎ目に何か仕掛けがあるんだろうか…神官様、目打ちあります?」


「目打ち?何に使うんだが?」


「この継ぎ目をちょっと広げてみたくて」


「い、いい加減にするキンーー!!!ゲホッゲホッ」


裏声で叫び、むせた。あれはやっぱり作ってる声なんだな、と感心してしまった。



神官のセリフにカッコ書きで訳を入れました。見づらいかもと思いましたが、わたしだけわかってもな、と思ったもので。

おじいちゃんおばあちゃんがどんな風に言っていたか思い出しながら書いています。

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