ゲイエスの異変
台輪結界を正常に戻す物、それは最近手に入れた、あの刀のことしかない。
「亜弥瑪のことですか……!」
ゲイエスの答えにマイダは満足そうに微笑んだ。
「台輪が始まったのはナガハルの治世。彼はサイヴァッタの安全を守るためにこのシステムを構築したと言われています。そしてその鍵となるのは彼の愛刀、亜弥瑪なのです」
「そんな話、初耳です……!」
今まで悪役に仕立て上げられていたナガハルの功績に、タツミは信じられないというふうにつぶやいた。
だがゲイエスはどこか嬉しかった。
城でナガハルの子孫だと言われ、歴史の勉強でも悪く言われていた記憶しかなかった彼の子孫であることが恥ずかしく、嫌だった。
でもマイダの話と、地下墓地でのナガハルとの出会いから考えるに、ナガハルは歴史の教科書が言うほど悪人ではなかったのだ、と。
それがとても嬉しかった。
「近年の研究で明らかになってきたことです。勝者の語る歴史のみが真実とは限らないのですよ」
まるでナイショ話をするようにマイダは唇に人差し指を当て、片目を瞑った。
その仕草にゲイエスは奇妙な気持ちになった。
胸がざわざわとして、そしてどこかくすぐったい。彼に特別扱いをされているのが嬉しい。
「ナガハルの愛刀亜弥瑪を見せていただけますか?あなたがたにお貸ししたらしばらく見れなくなるのは寂しい」
「もちろんです。キンちゃん」
マイダの要望に二つ返事で了承をすると、キンちゃんを見上げて呼びかけた。
「え……それはさすがに…ちょっと無理キン。それに、ちょっとマイダさん様子が変だキン」
すぐに貸してもらえると思っていたが、マイダを怪しむキンちゃんはそれを拒否した。
「なんで?どこが変なの?こんな素敵な人いないよ?いいから、早く渡してよ!」
「ゲイエス?ちょ、やめるキン!!」
ゲイエスは嫌がるキンちゃんに構わず、乱暴に青い台座に手を突っ込み、かき回して亜弥瑪を探し始めた。
「イヤだキンっ!乱暴にしないでキン!!やめるキン!!ゲイエスっ!!やっ、イヤァァァ!!!」
「はい、これです」
キンちゃんの抵抗も虚しく、亜弥瑪を見つけたゲイエスはマイダ所長に手渡した。
「ひどい、ひどいキン……こんな辱めないキン……」
「キンちゃん……ゲイエス!ひどいよ!!なんでこんなことするのよ!」
打ちひしがれるキンちゃんを抱き上げミルフィが責めるが、聞こえないのか振りなのか、ゲイエスは見向きもしない。
「ゲイエス殿?」
彼の様子を訝しがり、タツミは槍を握る手に力を込めた。
こんなにはやく王の懸念が現実になるとは信じたくなかった。
「おお……これが愛刀亜弥瑪……!ンフフ、ついに、ついに手に入れましたわ……!!」
「おめさんがた、その人はマイダ所長じゃねーこて!」
マイダが高笑いをしたとき、そこへ電話の子機を手にしたスンズキが乱暴に扉を開けて入ってきた。
「マイダ所長は奥さんを病院連れて行かねばなくなったっけ午後からくるって電話が今来たこて!」
その言葉に上機嫌で高笑いをするマイダへゲイエス以外の視線が注がれる。
「やぁん、怖い顔」
それをうけ、マイダは両拳を握り、口元によせるとぶりっ子のように体をくねらせた。




