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裏声金魚に導かれし冒険譚  作者: 南波 由花
王命
30/31

台輪結界

事務所所長のマイダから国を守るシステムについて聞き出します。


興奮しておっさんの裏声で泣き叫んでいたキンちゃんを落ち着かせ、マイダの咳払いとともにようやく本題に入った。


「皆様は台輪結界をご存知ですか?」


「台輪結界……?」


一行が首をかしげると、マイダは地図をテーブルの上に広げた。


彼が動くたびにコロンのいい香りが漂ってくる。


さすがロマンスグレー。身だしなみには気をつけているのだろう。


マイダはゲイエスが自分のコロンにうっとりしているのにも気付かず、胸ポケットから赤のサインペンを取り出し、六つの丸をつけた。


「サイヴァッタには六台の台輪があります。台輪といえば神様の乗り物です。今までは聖なる力を秘めた台輪が悪しき力からサイヴァッタを護っていたはずなんです」


「護っていた、“はず”?」


マイダの言葉を聞き逃さなかったタツミが聞き返すと、深刻な表情でマイダは頷き、胸の前で腕を組んだ。


「はい。何らかの力が働き、或る日突然台輪の神聖な力が失われてしまったのです」


「それで魔王エリスにサヴァヤスを乗っ取られたんですね」


ハレイの言葉にマイダが頷く。そして地図に指を這わせ、赤いラインをなぞった。


「台輪は、ここのすぐ近くにあるイズミマチから直線でオーテの、このカミアキラ神社まで通っているレイ・ライン沿いに六ヶ所あります。各台輪がゲートとなり、悪しきものを六重の結界で弾く役目を担っていました」


その中央にあるのはもちろんサイヴァッタ城だが、台輪がある場所から伸びた結界を示す円の中にはサイヴァッタの街が全て収まっている。


「でも、いましたってことは……?」


「今は機能していないキン。サヴァヤスが占領されたことで、防御システムが混乱しているんだキン」


代わりに答えたキンちゃんが首を振るように体を振るわせた。


「そんなこと、初めて聞きました……王宮神官は何も言っていなかった」


本来であれば旅立つときに知らされてもいい情報だ。だが、城から出るとき神官のマツヤは何も言っていなかった。


茫然とつぶやいたタツミに、マイダは苦笑した。


「このことを知っているのは一部の、それもほんのごくわずかの人間です。悪用されたら困りますからね。このシステムを正常に戻すことで、途切れたレイ・ラインを復旧させ、魔王エリス軍の進行を食い止めることができるはずです」


何せ今までにないことが起きている。台輪結界が破られたのも初めてのことだ。だから経験のないことは予測することしかできない。


だが今は一つでも可能性があれば行動すべきだ。


「システムを正常に戻すっていうけど、どうやって戻すんですか?」


「あなた方は手に入れたのでしょう?ナガハルの宝を」


マイダはまっすぐに質問したゲイエスを見つめた。


焦げ茶色のその瞳が向けるまなざしは少し微笑んでいるように優しく、全て見透かされているような言葉にゲイエスはどきりと胸を震わせた。

なんか終わり方がBLテイストになっちゃいました…。


ナガハルの宝、亜弥瑪は台輪結界にどう関わっているのか!?


次話結界のシステムを復旧させるための方法がかたられます。

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