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裏声金魚に導かれし冒険譚  作者: 南波 由花
王命
29/31

キンちゃんの涙

キンちゃんが泣いた理由は…

「ではあらためまして、はじめまして。所長のマイダです。よろすく、お願いします」


時々訛りながら挨拶をし、代表者と見たのか、名刺タツミに渡した。


「先ほどは失礼しました。こう言ってはなんですが、スンズキは歴史オタクでしてね。墓守の仕事に対してあまりに熱心すぎて行き過ぎたことをたまにしてしまうのです」


やれやれとマイダは首を振った。今回のようなことは初めてではないようだ。


マイダは汗を拭き吹き、苦笑した。


「それだけじゃないキンね」


「は?」


「それだけじゃないキン、あの男は大変なことを企んでいるキン!そうでなかったら、キンちゃんの、キンちゃんのあんなところを覗くわけがないキン!!」


「え…?お土産品の金魚台輪が…飛んで、喋った?!」


涙を流しながら浮かんで叫ぶキンちゃんにマイダが腰を抜かしたように震えている。


知らない人が見たらある意味怪奇現象みたいなものだから、こういうマイダの反応こそ、ごくごく一般的なものだろう。


城では伝承を詳しく知るマツヤも王も、キンちゃんを伝承にある“赤き神の使い”だと思い、たいして驚きはしなかった。だからマイダの反応はとても新鮮だった。


しかしゲイエスを睨んだキンちゃんが至近距離まで迫ってると、彼はすごいスピードでまくし立てた。


「ゲイエス!なんであの男を止めなかったキン!キンちゃんは、キンちゃんは…あんなところを見られてもうお婿にいけなくなったキン!!」


キンキンとおっさんの裏声でまくしたてられ、頭が痛くなる。


「何のこと?キンちゃん落ち着きなよ」


キンキンとする耳をかいていると、見かねたミルフィがキンちゃんをゲイエスから引き離した。


「あの男は、キンちゃんの荷台を覗き見したキン!人間で言ったら、スカートめくりと同じレベルだキン!!男で言えばズボンを下ろしてパンツまでやっちゃった系と同じだキン!」


でもそこにナガハルの亜弥瑪あやめが入っているのだから、彼の勘は鋭いのだとおもうがそれよりも。


他の貴重品もキンちゃんのパンツの中に入っているようなものなのか、と知り、ゲイエスは複雑な気持ちになった。


「まあ、たしかにスンズキは所長の座を狙っていると酔った時に豪語していたので、それもあるかもしれません……ね……。所長として、部下の不始末を謝罪します」


おいおいと泣き声をあげるキンちゃんに、マイダは深く頭を下げた。


そんなことより本題に早く入って欲しい、と当事者であるがまるで他人事のように遠い目でその様子をゲイエスは眺めていた。

次話、詳しいお話をマイダさんから伺います。

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