ロマンスグレーは突然に
一体誰が…?!
では誰が、と入り口を振り返ると、七三に髪を分けたロマンスグレーが立っていた。
「所長!」
彼の姿に表情を変えた事務員の男に構わず、所長と呼ばれたロマンスグレーは事務服を羽織りながら部屋に入ってくる。
そして一台の机の上に積み上げられているクリップボードの中から一つを選び、事務員の男に手渡した。
「スンズキさん、おめさん昨日休みだったこて。実は昨日、城からファックスがきてたんだわ」
手渡されたそれを見た途端、スンズキと呼ばれた男の顔がみるみる青ざめていった。
「では、あなたは本当に騎士様なのですか?」
「ええ、そうです」
震えながらクリップに止められた書類を持つスンズキの問いに、ようやく信じてもらえたタツミは満面の笑みを浮かべて頷いた。
その笑顔が静かな怒りと苛立ちを表しているようにも見えたのか、スンズキはパイプ椅子から転げるようにおり、白い床の上に平伏した。
「申す訳ありません!」
薄くなり始めた頭頂部から汗のしずくが飛ぶイメージが湧くほど、彼は慌てているように見えた。
「いいのです。人は誰でも過ちを犯します……私は謝罪をした人をさらに責めることはしたくありません」
「それ……本心?」
「ええ、本心ですとも…!!!」
しかしミルフィの問いかけに振り向いたタツミの表情は、怒りを必死で押さえ込んでいる、まるで鬼のような形相であった。
「ヒッ……ッ!」
思わず叫び声をあげそうになり、ゲイエスは口元を慌てて抑えた。
「まぁ、私が騎士であろうとなかろうと、あのように決め付けた態度で人を責め立てるのは感心しませんが」
「は、はぁ……」
ハレイを連れて行った時と打って変わり、スンズキはしおらしくなって頷いている。
「いや、タツミちゃん、騎士だって人なんだからさ、許せないって怒ったっていいと思うけどな」
ハレイがソファから立ち上がり、タツミの肩に手をかけた。
「ハレイ様…、そういう訳には参りません。心静かにいることを続けるのも、騎士に必要な素養なのです」
いつも冷静沈着に。何が起きても的確な判断を下せるように、特に王の身の回りを警護する役目についているものには必要なことだ。
「スンズキさん、ここはもういいですから。まずはこの書類のチェック、お願いしますね」
「はい、所長……」
スンズキはすごすごと自分の席に戻り、山積みになった決済板を処理し始めた。
「では皆様、ここではなんですから、ね。別室にご案内します」
その様子に満足げに頷いたロマンスグレー所長はそう言って、ゲイエスたちを事務室の斜め向かいにある部屋へと
通した。
ロマンスグレー所長は一体何を語るのか。




