国王ハイデクツ
王命を受けるため、ゲイエスたちは謁見の間に向かいます、
四者面談を終え、ゲイエスはミルフィたちと合流し、謁見の間の前室にいた。
騎士団から同行者を出すため、王命を受けなければならないとマツヤから言われたためだ。
「親御さんとの話し合いは終わったのか?」
「ああ。俺は決めたよ。がんばるんだ!」
ヴォールの問いにゲイエスは廊下に貼ってある、セシリアが防犯週間のキャンペンガールになっているポスターに目を向けてガッツポーズを作った。
そんなゲイエスの腕にミルフィが抱きついてきた。
「聞いてよゲイエス!もう信じらんないのよユベーシ様!!カレーにうどんにチャーハン!どれだけ食べるのよ!!」
そして満足したらしいユベーシは食後の昼寝に入ったらしく、合流するまでミルフィは騎士団の射撃場で弓の鍛錬をしていたという。
「百は軽く射ってきたわ。まだ足りないくらいよ…」
食べた分痩せなきゃ、とミルフィは頭を抱えた。
「皆様お揃いですか?では、参りましょうか」
両親と保険などの手続きを済ませてやってきたマツヤに先導されて一行は謁見の間に進んだ。
中央に敷かれた赤い絨毯の先、階段の上にある玉座にはこの国の王、ハイデクツ・ミゾグ・サイヴァッタが居た。
傍らには大臣と見られる太めの男性が。その階段のすぐ下には、王の警護を行う騎士が左右にニ名ずつ、計四名の騎士が待機している。
新聞の写真や広報などでしか見たことのない、雲の上の存在が目の前に居る。
その事実はひどくゲイエスを緊張させた。
年の頃はゲイエスの両親とほぼ同じくらいだったと記憶している。
灰色の髪に、その昔はさぞ憧れの的だったであろう、ロマンスグレーな見た目のハイデクツ王は、眉間にしわを寄せ、難しそうな顔をして玉座に深く座っている。
「陛下、王宮神官マツヤでございます。伝承の赤き神の使いに選ばれた方をお連れいたしました」
「うむ」
王に報告をすると、マツヤは赤い絨毯の上から引き、傍らにに何本かたつ円形の柱のそばに移動した。
「そなたが赤き神の使いに選ばれしゲイエス・タサイバか」
「は、はひっ」
まさか王に名を呼ばれる時が来るとは。
緊張のあまり返事が裏返り、恥ずかしさから耳までキンちゃんと同じくらいに赤くなる。
「こたびの魔王討伐の件、引き受けてもらえたこと、深く感謝する」
「とと、とんでもごじゃ…ごじゃいましぇん!」
「言い直して結局噛んだキン…」
「 大丈夫キンか?」と心配そうに言うキンちゃんを涙目で睨む。
ゲイエスの頭の中は緊張から混乱しすぎていて、敬語を正しく使えているかなどに気を向ける余裕もない。
「此度は魔王の元へ向かう危険な旅になるであろう。ゆえに、余の警護部隊から騎士を一人同行させよう」
王に促され、ゲイエス側から見て玉座の階下、左側にいた一人の女騎士が歩みでた。
金の髪を濃い紫のバレッタでまとめ上げた、涼やかな瞳の美人である。
彼女が纏う銀の鎧の胸元には、サイヴァッタの国花であるアヤメと菱が組み合わされた国の紋章が記されている。
「同行させていただく、タツミ・ベヤスビィです」
少し低めの、落ち着いた声だった。
まだ20歳を過ぎた頃にしか見えない彼女が、騎士団の最高部署である王の警護部隊に入っているということは余程腕が立つ騎士なのだろう。
「あれ、ベヤスビィって…」
「はい、ホリィ・ベヤスビィは私の先祖です」
つぶやいたミルフィの問いを拾い上げ、タツミが答えた。
「彼女はわが国でも数名しかいないブヨウ流の継承者だ。きっと強い戦力になろう」
ブヨウ流とは、英雄ホリィが編み出した流派で、一撃必殺の奥義があるのだと言われている。
だが複雑な型が多く、その技の数々を自分のものにするには大変な根気と努力が必要だといわれている。
だから、サイヴァッタでも使えるものが少ないと有名な流派である。
「さて、魔王を倒した暁にはひとつ、その方らの望みを叶えてやろう。ただし、余にできる範囲、でだがな…」
そう言って、王は眼下に跪いている赤き神の使い一行をみつめた。
次回は王の視点で書きたいと思います
早く旅立たせたいです(;´Д`A




