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裏声金魚に導かれし冒険譚  作者: 南波 由花
サイヴァッタ城でまさかの四者面談
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四者面談の決着

キンちゃんの様子がおかしいですね…いったいどうしたのでしょう。

ぽとりと机の上に落ちて5分ほど経っただろうか。


「キンちゃん?」


全くウンともスンとも言わなくなった金魚台輪が心配になり、ツンツンとつついてみるが全く反応はない。


もしかしたらキンちゃんという存在は実はいなくて、すべてゲイエスの妄想だったのではないか…そんな不安が湧き上がってくる。


(まぁ他のひともキンちゃんと会話していたからそれはありえないだろうけど)


なんて考え、その疑問を即座に否定する。


「ふー、やばかったキン。しゃべりすぎだと金魚神様に怒られてしまったキン」


しかしやはり心配なので、キンちゃんを持ち、覗き込むとすぐに起き上がり、てへぺろとヒレで頭を掻く。


短すぎるヒレでは大きなその頭には全く届いていないし、可愛いつもりなのだろうが声が男の裏声なので不気味なだけだ。


「でもあたくしは結婚して家を出たのに…」


母親はどうしてこの子が、と焦燥気味につぶやく。


「“家”よりも“血”だキン」


なんでもないことのように再び浮遊し、もっともらしい風に言う。


「血だというのなら、本家の方にも…!」


「ゲイエスを選んだのは、タサイバの血も関係あるキン」


「僕の家かい?」


悲痛な声を遮ったキンちゃんの言葉に、それまで空気だった父親は驚いて目を見開いた。


「お父さん、何か心当たりあるの?!」


「いやー…うちも分家だし、僕は三男だしなぁ…」


全く思い当たらないのは本当のようで、襟首をつかむ母親の手を押さえながら困ったようにキンちゃんを振り返った。


「タサイバもナガハルの子孫だキン」


「そうなのかい?初めて知ったよ…」


「当然だキン。千年以上も前のことだキン。伝承が伝わっているのは最もナガハルに近い筋だけだキン」


結局は宿命だと言われているのだ。


「母さん、こうなったらもう諦めなさい。きっとこれはゲイエスにしかできないことなんだよ」


父親がうつむいて額に手を当てたままの母親に優しく語りかける。


「そう、そう…ね」


あれ、おかしいぞと、だんだんと旗色が悪くなって行くのを感じ、ゲイエスはこの場から逃げたくなる。


「ちょ、ちょっと父さん、母さん…」


そしてずっとさっきから気になっていたことがある。だれ一人としてゲイエスに意思の確認をしていないのだ。


「では、お願いがございます。制服を汚されるのは困るので、そちらから良い装備をあたえてはくださいませんか?王命で魔王討伐に行くんですもの、他にも保険のこと、諸経費のことについても…」


(ちょっと待ってくれ。母さんはこの話を断ってくれるんじゃなかったのか?)


予想外の提案に母親を凝視する。


あいた口がふさがらない。衝撃すぎてとても間抜けな面になっているだろうが、百八十度方針転換した母親にあいた口がふさがらない。


あんなに反対していたのに、許可を出すなんて…!と。


「経費については騎士団の特別費から歳出させます。この討伐には騎士も同行いたしますので。装備、保険についてもそちらのご要望通りにいたします」


完璧に敗北した。ゲイエスにはもう、

断るという選択肢はなくなったのである。


そして悲しいことに、当事者のゲイエスを置き去りにして大人たちだけで話がどんどん進んでいく。


「あ、あの!俺の意思は確認してくれないんですか?!」


思わず叫んで立ち上がる。このまま流されて魔王のところになんか行きたくない。


セシリアちゃんの写真集を買いたいし、ライブだって行きたい。


「これは宿命、避けられない運命だキン。諦めるキン」


「えぇー…。」


大人って汚い。泣きたくなった。


「ゲイエス、セシリアちゃんのためにも頑張ってみないか?世界が平和になれば、セシリアちゃんも喜ぶと思うぞ」


「セシリアちゃんが…喜ぶ?」


父親の言葉に、ゲイエスの頭の中ではアイドルの衣装を着たセシリアが上目遣いに自分を見上げ、お願いポーズをしている姿だった。


『セシリアのために、魔王をやっつけて…!お・ね・が・い』


セシリアちゃんのため、とゲイエスは大きく頷いて顔を上げた。


「わかった、俺、がんばるよ!!」


「あーあ、単純だキン」


やれやれという風に疲れたようなキンちゃんの声は無視した。


長かった四者面談も終わります。早く旅立ってくれ〜〜>_<



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