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6 女子高生とチョコレート

 葵若菜は、私たち4人の中では、一番普通というか、標準的な女子高生だと思っていた。

 思っていたのに。

 思っていたのになー。

 認識を改めた方がいいかものしれない。



 昼休みのことだ。

 お弁当をつつきながら、何を思い出したのか、葵がキラッと瞳を輝かせた。

「そういえば、昨日ね。部活でちょっと嫌なことがあって」

「う、うん?」

 葵は弓道部に入っている。ちょっと、カッコいい。

 それはさておき。

 部活の愚痴が始まる・・・・・・にしては、やけに楽しそうなんだけど。

 一体、何の話が始まるの?

 話の先が読めずに、雪音と花蓮も不思議そうに首を傾げている。

 嫌なことがあったけど仕返しがうまくいった、とか。そういう話じゃないんだよね?

 私たちの様子は目に入っていないのか、葵は構わずに話を続ける。

「で、家に帰ったら、お徳用の大袋入りのチョコレートがいっぱいテーブルに載っててね。お母さんが衝動買いしたらしいんだけど」

「う、うん」

 みんなの視線が自然と葵に集まる。

 話の流れ的には、ついついチョコレートの自棄食いしちゃったー、とかが予想されるんだけど。

 それにしては。なんで、こんなにうきうきしてるの?

 早く続きが話したくてたまらないみたいにうずうずしてるの?

 それ、やっちゃいけないヤツだよね?

 そういう話なら、もっと懺悔っぽく始まるべきだよね?

「我慢しようと思ったんだけど、やっぱりどうしても誘惑に抗えなくて。夜の10時なのに。晩御飯もちゃんと食べたのに。お徳用を丸々一袋、一人でいっちゃったんだよ」

 いや、それやったらダメなヤツだよね!?

 女子高生として、やったらダメなヤツだよね!?

 なんで、そんなに身も心もつやつやしてるの?

 それが、チョコレート効果なの?

 雪音はなんだか羨ましそうに、今にもよだれを垂らさんばかりに話の続きを待っているけど、花蓮は嫌そうに眉間にしわを寄せつつも、手元のサンドイッチに意識を切り替えている。

 花蓮さんはクールだなー。

 もう興味を失っちゃったの?

 葵さんは、ここからが本番! みたいな顔してますけど?

 てゆーか。ここから、どう本番に繋がっていくんだ?

「チョコレート食べ過ぎたら鼻血が出るって、本当だったんだね。都市伝説だと思ってたよ」

「え? 鼻血出したの? 大丈夫だったの?」

 まあ、見るからに大丈夫そうだけど、一応聞いてみる。

 本当に、なんでそんなにつやつやしてるの?

 鼻血による出血をも上回るチョコレート効果なの?

 あと、都市伝説の使い方、間違ってるから。

「うん、大丈夫。何ともないよ。ありがとう」

 うん。まあ、聞かなくても分かったけど。

「でね。結構、いい勢いで鼻血が出てきたから、どれくらい出るのか確かめたくなってね。それで、洗面台に栓をしてその中に垂らすようにしてた鼻血を溜めてみたんだけど」

「は、はあ!?」

 何やってんの、女子高生!?

 何やってんの、本当に!?

 なんで、そんなことしようとか思いついちゃったの!?

 てゆーか、思いついてもやるな!

 小学生男子か!?

「ちょっと溜まってきたところで弟に見つかっちゃって。気持ち悪いから止めろって、線抜かれちゃったんだよね。お母さんにも怒られたし、仕方ないから、諦めて大人しく止血したんだけど」

 残念そうに言うな!

 そら、怒るわ!

 いろんな意味で!


 しかし。

 それ、そのまま続けてたら、どうなったんだろう?

 ちょっと、想像してみる。


 貧血を起こして倒れている姉。栓をした洗面台の中に並々と満たされた血液。それを発見する弟。

 ・・・・・・・・・・・。

 もはや、ホラーなのかギャグなのか分からない。

 とりあえず、大惨事に至る前に発見した葵の弟よ。よくやった。

 そして、ご愁傷様です。

 いや、それとも。葵家では割とよくある普通のことだったりするんだろうか?

 葵の口ぶりだと、慌てて止めたというよりも、結構冷静に対処しているみたいな感じがするし。

 意外な葵の一面を知ってしまったとか思ってるのは私たちだけで、葵家ではこれが通常運行だったりするんだろうか。

 知りたいような、知りたくないような・・・・・。



「自然に止まるまで続けてたら、どれくらい溜まったのかな? 試してみたかったなー」

 葵は、理科の実験にワクワクする小学生男子のように瞳を輝かせている。

 話に夢中になるあまり、お弁当はほとんど進んでいない。

 うん。もう少し、自分は女子高生だという自覚を持とうか。

「やるなよ」

「・・・・・・・うん」

 雪音に釘を刺された葵は、どこか遠くをうっとりと見つめながら頷いた。

 今の間はなんだ?

 本当にやるなよ・・・・・。

 そして。いいから、もう早くお弁当を食べなさい。




 普通の。

 普通の子だと思ってたのになー。

 なに?

 この、山の民の話にも匹敵するほどのインパクトの強さ。

 なんで、そう、微妙にスプラッタなの? 君たちの話は。


 

 浴室のドアを開けたら血抜きされてる鶏が吊る下がっている家と、洗面台に鼻血をためる女子高生の住む家か。

 うん。

 どっちも、ないな。


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