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4 たまには恋バナとかもしたい

 昼休み。

 じゃんけんに負けた私と葵は、一階の自販機までジュースを買いに行かされていた。

 もうお弁当は食べた後なので、急ぐ必要はない。



 花蓮はいちごオ・レ。雪音は、ばななオ・レ。

 私は何にしようかな?

 紙パックのジュースが並ぶ自販機を前に迷っていると、隣の葵がためらいがちに話しかけてきた。

「桜ちゃん、一年生の時に、男の子とお付き合いしたことがあるんだよね?」

「うえ?」

 あ。しまった。

 同様のあまり、うっかりボタンを押してしまった。

 カフェオ・レか。まあ、いいか。オ・レ繋がりってことで。

「んー、まあ、一応。一週間くらいだけどねー。花蓮から聞いたの?」

「うん。この間、合コンの話になって、その時に」

 あー。花蓮は結構、出会いに貪欲というか、彼氏と別れた後はよく合コンしてるみたいなんだよね。

 たまーに。急に女子が足りなくなったとかで、私も駆り出されたことがある。知らない男子とおしゃべりするのって、苦手なんだけど。まあ、お金は払わなくてもいいって言うし。断り切れなかったんだよなー。

 せっかく、高校生になったことだし、一度くらい合コンを経験しておくのも悪くないかーっていうのもあったし。

 ただ、まあ、結局のところは。私は花蓮のことが嫌いじゃないってことなんだろうなー。



 自販機の前を譲ると、葵はためらうことなくオレンジジュースのボタンを押した。

 葵がジュースを取り出すのを待って、自販機から離れる。

「えーと、もしかして、あんまり話したくないことだったりするのかな?」

 遠慮がちに尋ねられて、私は慌てて否定する。

「え? いや、そんなことないよ。話したくないというよりも、実際のところ、大して話すことがないというか・・・・。たぶん、ご期待に沿えるお話にはならないというか」

 葵はどうやら、うちの学校に好きな男子がいるみたいなんだよね。

 はっきり聞いたわけじゃないんだけど、何となく察せられるというか。

 うちのクラスの男子ではなくて、推測だけど、一年の時に同じクラスだった男子・・・なのかなあと勝手に当たりを付けている。

 4人でいるときに、その手の話が話題に上ったことはない。

 クラス替えから約一か月。まだまだ、お互い探りあっているところで、そこまで深く許しあってるわけじゃないというか。

 あと、メンバーに花蓮がいるせいもあるだろう。

「普通に生活してれば、彼氏なんて自然にできる」とか言う女のいるところで、甘酸っぱい片思いの話とかする気になれないのは分かる。

 雪音は雪音でなー。好きな男の話をふったら、好きな食べ物の名前とか返ってきそうな気がするし(勝手なイメージだけど。本人に言ったら、怒られる気もする)。



 話を聞きたそうに、葵がチラチラとこっちを窺ってくる。

 ふ、ふわっ。

 ここは、大事なところだ。

 私とて、これでも女子高生の端くれ。

 恋バナに興味がないわけじゃない。というか、他人の恋バナには興味がある。

 話の流れによっては、ここから葵の恋バナへと発展させられるかもしれない。

 葵ちゃんのそういう話、聞いてみたいなーって思ってたんだよね。

 緊張のあまり手のひらを汗でしっとりさせながら、私は話始めた。



「んーと、去年の5月の終わりくらいかなー。花蓮に合コンに誘われてねー。クラスはバラバラだけど、相手はみんなうちの学校の男子でさ。正直、最中に何話してたかとかさっぱり覚えてないんだけど。それで、その時はそれで終わったんだけど、しばらく経ってから花蓮に、この間の合コンで私と付き合いたいって言ってる男子がいるから試しに付き合ってみたらどうかって言われてねー。まあ、花蓮が勧めてくるならそんなに変な相手じゃないんだろうし、初めてのことで私も舞い上がってたというか、とにかくまあ、お付き合いしてみることにしたわけですよ」

「うんうん。それで?」

 葵が期待に目を輝かせてこっちを見ている。

 続きを話すのがためらわれた。

 うん。話している内に段々思い出してきたんだけど、この先を正直に話すと、せっかくの機会をふいにしてしまう気がする。

 するけれど。

 今更、後にも引けないしなー。

 仕方がなく、正直者の私はありのままをお話しすることにした。

「まあ、結局、デートとか一回もしないまま、メール交換してただけで別れちゃったんだけどね」

「そ、そうなんだ?」

 気遣いつつも好奇心が見え隠れする葵の視線が痛い。

 うん。ごめん。

 そういう意味でも、ご満足いただけるような何かはなんにもなかったんだよ。

「うん。なんか、しょうもないことで一日に何度もメールしてきてねー。一応、お付き合いしてるんだし、私も頑張って一日一回は返事をするようにしてたんだけど。一週間くらいたったところで、桜ちゃんはどうしてちゃんと返事をしてくくれないのかという抗議のメールが届きまして。あ、こりゃ駄目だなと思ったので、お断りのメールをさせていただきました」

「へ、へえ・・・? ま、まあ、桜ちゃん、あんまりマメにメールする方じゃないもんね。一日一回メールを返してたなんて、桜ちゃんにしては頑張った方だよね。ちょっと、桜ちゃんとは相性が悪かったのかもね。そ、それで。え、えと、その後は?」

 フォローいただき、ありがとうございます。

「その後かー。まあ、最初ので懲りたっていうかねー。お別れのメールをするのも心苦しいし、あまり気軽に付き合ったりはしない方向で、今に至るっていうかねー」

「・・・・・・。なんで、付き合う前から別れる前提なの・・・・・・」

「う、いや・・・・・なんとなく、つい。最初のがトラウマで・・・・」

 葵はガクリと肩を落としている。

 これで、私たちの恋バナは終わった。

 いや。これ、最初から、恋バナじゃないな。

 えーと。私たちの会話は、恋バナに至ることなく終わった。



 もっと、女子が喜びそうな感じに話を盛っておけばよかったのかなー?

 でもなー。嘘をつくのもなー。

 それとも。

 女子たるもの、これぐらいの嘘はさらっとつけなければならんのだろうか?

 うーむ。

 女子の道は険しい。


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