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11 山の民とカエルの歌

「そういやさー。昨日の夜、雨が降ったからか、いっぱいカエル死んでたねー」

 休み時間。

 登校途中に道路で見かけた、車に引かれてぺしゃんこになったカエルを思い出して、ふとそう洩らすと、葵には微妙な顔、花蓮には嫌そうな顔をされた。

「カエルかー。思い出すな・・・・」

 山の民である雪音は、何だか懐かしそうな顔をしている。

 しまった。

 失敗したかもしれん。

 山の民の昔話は、何が飛び出すか分からないからなー。

 葵と花蓮の責めるような視線が痛い。

 まあ、ほら。

 本人はすっかり話す気になってるし、一応聞いてあげようよ。

 もしかしたら、心温まるいいお話が聞けるかもしれないし?

 うん。まあ、そんなことないって分かってるけどね?



「小学校の時さー。風呂に入ったら・・・・」

「またお風呂の話なの?」

「山の民の風呂は、一体どうなってるの?」

「お風呂で、カエル・・・・?」

 三人で同時に話の腰を折った。

 ちなみに、上から、花蓮・私・葵の順です。

 山の民は、何事もなかったかのように話を続ける。

 そ、そんなに話したいの? それ?

「・・・・風呂に入ったら、蓋をしてでっかい石で重しをしたバケツが置いてあってさ。なんか、ガタガタ音がしてるんだよ」

 そ、その中に、カエルが・・・・・?

 あ、葵が耳をふさいだ。

 花蓮は嫌そうな顔はしているけれど、興味はあるらしい。一応、聞いている。

 ゴ、ゴクリ。

 そ、それで?

「なんだろうと思って、蓋を開けてみたんだよ」

 あ。鳥肌立ってきた。

 でも、聞いちゃう。怖いもの見たさってヤツ? いや、怖いもの聞きたさ?

「そしたら、中からすっごいでっかいカエルが飛び出してきてさー」

 そう言って雪音は、両手で胸の前に空間を作る。

 え? それ、話、盛ってない?

 子供の頭くらいあるんですけど?

 それ、本当に日本に生息しているカエルなの?

「ウシガエル・・・・・・んーと、食用カエルってヤツ? ちょっと前に、うちの親父がそんな話してたの覚えてたからさ。これ、食べるヤツだ。逃がしたらまずい! と思って、慌てて何とか捕まえてバケツに戻したんだけどさー。もー、ほんっとビックリだったよ。ちゃんと、言っといて欲しいよねー。あーいうの。逃がしたらすっごい怒るくせにさー。親父、食い意地張ってるから」

 ・・・・・・・・・・・・・・。

 びっくりしすぎて、何にびっくりすればいいか分からん。

 びっくりするところが多すぎる。

「いくら小学生の頃とはいえ、よくそんな大きなカエルを捕まえられたよね。さすが、山の民。私には絶対ムリ」

 花蓮ちゃんはこんな話を聞いたあとなのに、どうしてそんなに冷静なのかなー?

 まあ、確かに。もし、そんな事態に遭遇したら、カエルより先に自分が逃げるけど!

 捕まえるとか、マジありえない!

「いやー、さすがにあのサイズはちょっと気持ち悪いし、怖かったけどさ。それよりも、逃がしたらまずいって気持ちの方が大きくてさ。うちの親父、食い物のことに関しては大人げないからさー」

 恐ろしいことを何でもないことのようにサラッと語るこいつが恐ろしい。

 てゆーか。カエル逃がしちゃったからって、小学生女児を怒る父親って、児童虐待にはならないの?

 私的には、完全にアウトなんですけど!?

「それで、雪音も食べたの?」

 ひ、ひぃっ!?

 カ、カエルっ・・・・。た、食べっ・・・・・・・。

 か、かれ、花蓮さん!?

「うーん、どうだろ? あんまり、よく覚えてないんだよね。まあ、覚えてないってことは、食べたとしても大したことない味だったんじゃないかな?」

 ふ、普通に答えてるし。

 そ、それ本当に日本の話? 平成の話なの?

 山の民は、本当は何時代の何人なの?

「ふうん? そうなんだ。カエルって、鶏肉みたいな味するって聞いたことあるんだけど」

「あー。淡泊だったから、小学生的には物足りない味で覚えてないのかなー?」

 そ、そんな普通の世間話みたいにー!?

 花蓮さんは、こういう話平気なんだー!?

 最初は、嫌そうな顔してたくせにー!?

 それに、山の民もだよ!? そんな衝撃食材を食べたかどうか覚えてないっていうのが、そもそも信じられないんですけどー!?


 も、もういい。後は、お二人でごゆっくりどうぞ。

 もう二度と、山の民のお風呂の話は聞かない。


 うう。

 早く、授業始まってくれないかな?

 こんなに授業を待ち望んだのは、長い学生生活の中でこれが初めてだよ。


 鳥肌をさすりながら、ふと隣を見ると。

 耳を塞いだ葵が机に突っ伏して震えていた。

 あー。これ。聞こえてたんだな。

 自分よりひどい有様の人を見ると、少し心に余裕が生まれる。

 ふと、いたずら心に駆られて、葵の耳元でそっと囁いてみた。

「ぴょん」

「ふぎゃっ!」

 途端。悲鳴を上げて、葵の体が椅子の上で飛び跳ねる。

 さながら、カエルのように。


 えーと。ごめん。

 つい、出来心で。

 そんなに、いい反応するとは思わなくてさ。

 反省してます。

 だから、そんな涙目で睨まないで?


 て、てへっ?


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