10 取り巻きは一応いるらしい
「7組の佐倉真由子ってさ。同じクラスに誰か仲いい子っているの?」
真由子サンと図書室で会った翌週の月曜日。
先に来ていたみんなにおはようの挨拶をして、席に着くなり、気になっていたことを聞いてみた。
「取り巻きみたいなのは、いるみたいだけど?」
「そっかー」
花蓮の答えに頷いていると、葵と雪音が微妙な顔をした。
「佐倉真由子って、あの学年トップの人だよね? あの人ってさあ・・・・」
「桜ちゃんの友達じゃないの? あ、まあ、そういうことは、本人には聞きづらいと思うけど」
二人の意見を、花蓮は鼻で笑った。別に二人をバカにしているとかいう訳じゃない。
私が見透かされているだけだ。
「やー。真由子サンとは元々学校以外での付き合いってなかったからさー。二年になってクラス替えしてからは疎遠になってたっていうか。ほら、3組と7組って離れてるから、偶然会うこともあんまりないし」
一応、言い訳のようなものを試みてみる。
「ふっ。この桜がクラス別れた後も話題にするなんて、桜にしては十分関心があるんじゃない? てっきり、存在を記憶から抹消したのかと思ってた」
ちょっと、花蓮さん。やめてくれる?
私、どんだけ、薄情な人なの?
てか、あなた、楽しんでるでしょ?
あ。二人とも。そんな目で見ないで。
えーと。どう言い繕えばいいの? これ?
考えていると、助け舟を出してくれたのは花蓮だった。・・・・突き落としたのも、花蓮だけどな。
「まあ、分かるけど。あの女、感じ悪いよね。クラスが分かれてまで付き合いたくないっていうのは分かる。私の、この学校で最も嫌いな女のうちの一人だし」
花蓮さんは容赦がないなー。
まあ、この、はっきりとした物言い、嫌いじゃないけど。
花蓮とはクラスが違う一年の頃から付き合いがあったけど、こいつたとえ社交辞令的にでも真由子サンを一緒に誘うとかしなかったからな。
「うん、まあ。クラスではつるんでいたけれど、仲がいいかといわれると、ちょっと微妙かな?」
女子的にちょっと濁しつつ答えておく。
「そっかー。そうなんだ。桜ちゃんがあの人と仲がいいと思ってたから、今まで言わなかったんだけどさ」
「うん?」
葵が、遠慮がちかつちょっと前のめりという器用なことをしながら話を切り出してきた。
何か、情報が?
「部活の友達から聞いたんだけどね。あの人、7組のクラス委員長なんだけど、副委員長とすっごく仲が悪いんだって。常に上から目線って言うか。岡田さんっていうのが副委員長なんだけど。『これは、岡田さんには難しいかな?』とか、『これなら、岡田さんにも出来ると思う』とか言われたって」
「うっわ。何ソレ? ヤな女」
割とどうでもよさそうに聞いていた雪音が顔を盛大にしかめた。
「まあ、あいつも悪い奴じゃないんだけどね。ただナチュラルにうちの学校の生徒のことを見下してるだけで。親切にアドバイスとかしてくれるんだけど、その発言に本音が見え隠れっていうか、全く隠れてないっていうか、それだけで。うん、悪気はないんだよ」
一応、フォローにならないフォローを試みておく。
何も言わない方がよかったかもしれない。
「あ、桜ちゃん相手でもそんな感じだったんだ?」
「うん。まあ、割と。たまにカチンとくることもあったけど、基本的にはさらっと流してたかな。プライドが高い人とは、めっちゃ相性悪いと思うよ」
「桜が甘やかしたから助長したんじゃないの?」
「ええっ!? あれ、私のせい!?」
せ、責任を押し付けられた。
失言だって気づいてないなら、教えてあげた方が本人のためかもしれないけどさー。失言したって、自分で気づいててあれなんだよ?
あー。それとも。
他の生徒と見下しているという自覚がないってことなのか?
うん。まあ。
機会があったら、それとなく聞いてみる・・・・・かも知れない。
出来れば、今度は図書室以外で会いたい。
あいつとは、図書室では会いたくないんだよな。あんまり。
本のチョイスに水を差されるとか、そういうことじゃない。
いや、それもあるけど。
あいつ。推理小説の犯人ばらしやがったんだぜ?
私、これから読むとこだったんですけど。
「あ、それ。私も読んだことある。○○が犯人の奴だよね?」
とか。さらっと言いやがって。
知らないっつの。
まだ、読んでないっつの。
自分のしでかした罪の重さに気付いて、盛大に謝ってはくれたけどさあ。
まあ、悪気はなかったみたいだから、一応表面的には許したけどね。
図書室の本だからただだったし。
金払って買った本だったら、許さなかったかも。
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本当に、悪気はなかったんだろうな? あいつ?




