第五話 方向
間違えて2話投稿予約していたことに気が付く。
公開しちゃったものは仕方ないのでそのままイクゾ-!
「なんだか凄い雑な理由だな」と表情を引き攣らせながら修也は思うが、今は情報収集に徹さなければならないと考え感想は一旦脇に退けて更に質問を続ける。
「メイリアさんはさっき頭を下げてたけど、あれはどうなの?」
彼の質問に対してメイリアは特に考える様子も見せずに答える。
「一つの方向しか向けないと申し上げましたが、頭を下げたり軽く左右を見たり、うつ伏せになったり仰向けになったりする程度のことは出来ます」
「そうでなければ不便ですから」と冗談めかして続けるが、振り返ることが出来ない時点で相当不便だろうと修也は冷静に心の中で突っ込む。
「じゃあその方向はどうやって決まるんですか? 全員一緒なんですか?」
「いえ、その生き物が産まれた場所によって方向が決まります」
「国によって違うとか?」
「その点は良く分かっておりません」
「どういうことだ?」と修也は思う。そう思っているのが彼女にも伝わったためか、彼女は苦笑しながら言葉を続ける。
「その場所で産まれると同じ方向を向くのか、国がそこにあることにより同じ方向を向くのか、その因果関係はよくわかっていないのです。昔から調査はされているのですが、調査のために国を新しく作ることも国を滅ぼすことも出来ませんので」
わかったようなわからないような、まあどうしてそうなるのかは分からなくても結果だけわかっていれば問題はあるまい。
そのように修也は思い、「そういえば」と部屋に窓が無いことに気づくが、自分が逃走するのを防止するためだろうと考える。
今は昼なのか夜なのかがわからず、時計も見当たらないためメイリアに時間を聞くことにした。
「ところで今の時間はどれくらいなんですか?」
「そろそろ日が暮れる頃かと」
どうやら正確な時間を教えてはくれないようだ。それとも正確な時間を計る術は無いのだろうか。「日が暮れる頃なのか」と時間を意識した途端に修也は空腹を感じ始めた。昼食を食べるのが億劫で部屋でごろごろとしていたため朝食以降彼は何も食べていないのだ。
「あー、夕食はいつ頃になりますか……」
「しばらく後の予定でしたが、今すぐご用意致しましょうか? 」
どうやら修也が空腹であることはすぐにわかったらしい。修也は若干の恥ずかしさを感じながら「すいません、お願いします……」と小さな声で言うのであった。
そうして提供された夕食もまた非常に美味であった。高級料理の知識など無いため、ああだこうだと批判は出来ないが、少なくとも彼自身は満足できる料理であった。
加えて虫料理と言った彼が生理的に受け付けない料理が主流では無さそうなことに人知れず修也は安堵する。
「(今日呼び出されるということは無いだろうけど……、明日は一体どうしたらいいんだろう……)」
情報が足りないと判断して彼はメイリアから話を聞いたものの、結局この状況はどういうことなのか判断するのに役立つ情報ではなかった。
もう少しちゃんと考えてから質問しようと思うものの、ここが異世界であると判断出来る情報などそう簡単には思いつかない。
こうして思い悩んでいる時に外の状況を伺えないというのは案外ストレスだな、と彼はなんとなく嫌な気分になる。果たして外の様子がどうなっているのか……、と彼は思い悩むが単純に外に行けばよい事に気がつく。
「メイリアさん、外に行くことって出来ますか?」
「外、で御座いますか? それでしたら今からよりも明日改めて時間を取るのが宜しいかと愚考しますが」
軟禁されることも考えていたためあっさりと外出許可が出たことに修也は内心驚く。彼は明日外出することを決めると、することも無いため就寝することをメイリアに伝える。
「それでは明日外出できますよう手配致します。何かご用命が御座いましたら備え付けのベルを鳴らしていただければすぐに参りますのでご遠慮なさらずにお呼び出しください」
「失礼致します」と軽く頭を下げてメイリアは退室する。やはりムーンウォークで退室するメイリアを見て「あ、そういえば足の動きについて聞くの忘れてた」と修也は思うのであった。
静寂が広がる深夜の王宮の一角にコツリコツリと一つの足音が響く。その足音はハッキリとした意志を感じるものであり、やがてどこかで足を止めると次にコンコンコンッと扉をノックする音が響いた。
「入れ」
扉の先から入室を促す男の声が聞こえる。その言葉に従い足音の主は扉を開けて恭しく頭を下げると静かに入室した。その部屋には先客がおり声の主の傍らで静かに立っていた。この話し合いに3人以外の人物は不要なのか先の男が入室者に声を掛ける。
「メイリアよ、勇者殿の様子はどうだ」
入室者であるメイリアは修也の部屋での様子から受けた印象をそのまま問いかけてきた人物、レゲーム王に伝える。
「特に取り乱した様子も無くこちらに対して隔意も感じられませんでした。警戒はしている様子でしたがこちらから危害を与えられることを危惧しているのではなく、こちら側の言い分が信じがたいことによるものかと思われます」
「そうか……。確かに召喚の儀を行った我々でさえ勇者の存在は信じがたいものである。召喚された勇者殿にとってはより荒唐無稽に思えよう。だが伝承が真であれば勇者殿の協力は必要不可欠。勇者殿に協力してもらうためにも引き続き懐柔を続けるように」
「畏まりました」
入室した時と同じ様にメイリアは頭を下げる。修也が外出を希望していることをこの場では報告していないが、既に彼女は担当の者に伝えている。レゲーム王はその様子に頷くと彼の横に立つ人物に声を掛ける。
「アースよ、明日は街での勇者殿の護衛と監視を頼むぞ」
その人物はアースであり、騎士団長という立場が示す通りこの国で一番の実力者である。仮に勇者の身に危険が迫ればその身を挺して守るのに彼以上の適任者はこの国には居ない。無論、勇者が国民に危害を加えたり逃亡したりしないよう監視することも任務に含まれる。
レゲーム王の命令に対してアースは「畏まりました」とただ一言だけ答えてメイリアと同様に頭を下げるのであった。
無理矢理引き延ばした感