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第一話 召喚

 佐藤修也は特に変わったところの無い16歳の少年であった。


 高校一年生となり順調に友人も増え、とはいえ別にクラスの中心人物となることもなく、昼休みには彼女が欲しいだのあの動画が面白かっただのといった雑談をしながらクラスの端っこで過ごし、いじめに合うことも無く、誰かに告白されるようなことも無いというどこにでも居る凡人として過ごしていた。


 では現状に不満があるのかと言えばそれもなく、「自分は特別な存在であり他人とは違う何かを成し遂げられる人物である」という中学二年生頃にありがちな思い込みを己の黒歴史として葬り、今がそれなりに楽しく、将来にあからさまな不安要素が無ければそれでよいと分を弁えている。


「不満は無い……、けど暇なんだよなあ。彼女も居ないし」


 彼の通う学校が夏休みに入り、近いうちに実施される部活の合宿に憂鬱さを覚えながら自室のベッドでだらだらと時間を潰していると、ふと押し入れに仕舞っているレトロゲームの事が頭に浮かんだ。


「今やってるゲームも飽きたし、どうせなら昔のゲームをやるか」


 手に持っている最新の携帯ゲーム機をその辺に放り出し、押し入れの深い場所に仕舞ってあるゲームを引っ張りだす。


「だいぶ埃被ってるな。まあ大丈夫だろ」


 精密機械に埃が天敵であることは知っているが、きちんと掃除をするような気も起きないので軽くゲーム機本体やカセットソフトの埃を手で払い端子をテレビへと接続する。


 なんとなく遊び始めたのは横スクロールアクションで、敵キャラクターにぶつかるとのけ反ってしまい操作性の悪さも相まってそのまま穴へと落ちてしまうというレトロゲーム特有の難易度を味わうこととなった。


「だー、くそ! 穴に落ちたら無敵時間の意味が無いんだよ!」


 理不尽な難易度に対して意地になりプレイを続けるものの次第に飽きてしまい、結局修也はゲーム機の電源を消してしまう。


「次だ次! もうちょい簡単な奴!」


 そんな風に次から次へと色々なゲームを始めてはすぐに辞めてしまい、さて次はどのゲームをプレイしようかと考えているとどこからか焦げくさい臭いが漂ってくる。


 不審に思いキョロキョロと周りを見るとゲーム機からプスプスと音を立てながら煙が出ているのが見えた。


「ヤバい! 流石に埃まみれなのは不味かったか!」


 叫ぶ暇があればさっさと事態に対処すべきなのだが、以前電子レンジがコンセント部分と共に「ボン!」と大きな音を出して爆発したのを見たことのある彼は怖気づいてしまう。


 どうすれば良いのかわからずパニック状態になった彼はただオロオロとするばかりであり、果たしてその結末もまた彼が以前経験したものとほとんど(・・・・)同じになるのであった。


 小さくない爆発音と閃光が発生し修也は目を瞑り顔を背ける。


 「こんなことになるんだったら面倒くさがらずにきちんと埃を落としてからゲームをするんだった」と後悔するが、現実逃避して惨状を放置するわけにもいかない。


 嫌々ながら目を開けるとそこには目を疑う光景があった。


「おい……、こりゃ一体どういうことだよ」


 彼の予想が正しければそこには壊れてしまったゲーム機の残骸や爆発したコンセント、砂嵐を写したテレビがあるはずだった。しかし今彼の目の前にあるのは何だかよくわからないが無駄に輝く黄金で出来た飾りがなされた壁であり、当然そんなものに見覚えは無い。


 全く以てして意味がわからず茫然としていると背後からざわめきが聞こえることに気付く。半ば反射的に振り返ると彼は息をのんだ。


 意味がわからない。自分はいつの間にか寝てしまっていて夢を見ているのではないだろうか。はたまた寝ている間に誰かに捕まえられてドッキリをされているのではないか。


 彼の目の前には大勢の人が居た。特に目立つのはド派手な椅子に座って大きな金色の冠を被り、真っ赤なマントを羽織り、大きく腹が出ている男だ。


 他にもピンクや赤といった目に優しくない色をしたドレスを身に纏った女性達、ギラギラと光を反射する程に磨かれた甲冑を着た男達、神経質そうな顔をしたチョビ髭の男などなど修也に混乱を与えるには十分な人材がそこにはいた。


 混乱しつつも彼は一つの事を思う。帰りたい。家に非常に帰りたい。目の前に広がっていた光景こそ違うものの、自室には惨状が広がっていることがほぼ確実である。


 彼は早く後始末をしてゲームなどせずにゆっくりと眠りたいと考えた。そんな思いを知ってか知らずか冠を被った男が口を開き修也へと話しかけた。


「おお、立ち居振る舞いを見ただけでもわかるぞ。そなたは真の勇者だ。今この国、いや、この世界は魔王の脅威にさらされておる。どうかその力を以てしてこの世界をどうか救ってくだされ」


 言葉はわかるが言っている意味がわからない。いきなり勇者だの魔王だのと言われて状況を把握できるはずも無く、修也は疑問を口にすることにした。


「ちょ、ちょっと待ってください! 勇者って何ですか?! 俺は高校生ですよ?! それに魔王って?! この世界って何ですか?!」


「おお、すまない。まさか本当に儀式が成功するとは思っていなかったのでつい興奮してしまったのだ。儂はこの国の王レゲーム・ロト。今この世界には魔王と呼ばれる者が存在しておる。その者がこの世界を支配すると宣言したのだ。そして異なる世界より勇者を召喚する儀式を行いそなたが現れたのだ」


 勇者とはどういうことなのか、異なる世界とはどういう意味なのか、召喚とはなんなのか、様々な疑問が彼の頭の中で渦巻き口からは意味のある言葉が出てこない。


 レゲーム王の説明の意味が分からず修也が悶々としているとレゲーム王は縋るように修也に話しかけた。


「勇者殿、改めて申し上げる。どうかこの世界を魔王から救ってくれぬだろうか」

「えっと……」


 いきなりそんなこと言われても困る、という思いも彼にはあった。加えて異世界に召喚しただの自分が勇者だの言われても、はいそうですかと納得出来る訳も無い。そんな風に混乱していたからだろうか。修也の口から出た言葉は王の頼みに答えるものではなく、彼の疑問であった。


「……何で皆さんはさっきからずっと足踏みしてるんですか?」

プロットみたいなものが大体出来たので投稿開始です。

毎日更新、一話につき2500字前後を目指します。

尚書き溜めは無い模様。

おおまかな設定しか決まっていないので、矛盾や無駄な描写が出ると思いますがよろしくお願いします。

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