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再構築少女-元男でしたが今は女の子です-  作者: もやし豆腐
Chapter 1 : The man is tossed about by the his body.
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Episode 6 : 地上と空の狭間で彼女(彼)は決意する

 眼下に広がるのはベイズの中央都市マルグリッサ。

 年中常春の穏やかな気候が特徴的な場所である。

 その景色はどこか古臭い。

 乱立する大小さまざまな建物は、その一個一個が建築家達の作品であるように、形はまるで揃っておらず、道も区画わけされたマス目の様なものではなく、地形に合わせて曲がりくねっている。

 そして何よりも街中に自然が残っていることに驚きだった。

 街の中央を流れる大きな川。

 此処からでも豆粒に小さく見える人々が川辺でたむろしているのが見えた。

 俺は思わず「おぉ……」と呟いていた。


「……やはり君はアランの様だな。そうやって一人夢中で窓の外を眺めている姿が瓜二つだ」


 不意に横から声を掛けられた。


「――あっ、えっと……一人だけ燥いでいてすみません」

「何を謝る必要がある。わしは別に君が何してようとも構わないさ、それに疲れているだろうし積もる話はまた後でしよう」


 リュドミールは机の上に置いてあるコーヒーを軽く飲んだ。

 そのあと小さな声で「まあ、こんなものだろう」という声が聞こえた。

 そういえば俺が今いるのは、起動エレベーターのゴンドラの中だったりする。


 起動エレベーターは全高約10万kmの超巨大建築で、その用途は地上と宇宙港をつなぐ物だ。

 エレベーターには3つのステーションがあり、それは下から低軌道ステーション、静止軌道ステーション、高軌道ステーションと呼ばれている。

 一番上の高軌道ステーションは高さ訳5万kmの位置に存在しているて、船が往来する港があるのはここである。

 中間地点の静止軌道ステーションは主に研究施設、並び免税街が格納されていて地元の人間はもちろんのこと、観光客達も多く訪れる場所だ。

 低軌道ステーションはちょっとしたアミューズメントパークが併設されていることが多くあり、惑星によってその種類は多岐にわたっている。

 ここベイズではアミューズメントパークの規模を小さくし、その代りにこの美しい星の地表を眺めるための展望室が設けられているそうだ。

 先程ゴンドラの中にあったパンフレットにそう書いてあったのを読んだから間違いない。


 そして地上から一番下の低軌道ステーションまでかかる時間は大体2時間ほど。

 しかし静止軌道まで移動するには1週間ほどかかる。

 その代り静止軌道を超えれば高軌道ステーションまではあっという間なので、起動エレベーターで一番退屈なのは静止軌道に行くまでの間だったりする。


 それでもこの地上と宇宙をつなぐエレベーターのゴンドラは、よく見かける“普通のエレベーター”と違って全高が60mの巨大な筒型で中は13フロアに分かれている。

 その内装はちょっとした地上のクルーザーのようになっていて各種娯楽施設並び宿泊施設が併設されている為、本当に退屈することはあんまりない。

 今いるのはゴンドラの中に設けられた宿泊施設の客室の一つである。

 リュドミールが用意したのは客室の中では最も最高のSランク船室で、その内装は地上のホテルのスイートルームと何ら変わりのない大きさであり、俺はこの部屋に入った途端、年甲斐もなく心がワクワクしていたものである。

 そして年甲斐もなくはしゃぎ過ぎた結果――あの窮地から救ってくれたリュドミールを放置し俺は一人外の景色を満喫していたのだ。


「でも、元帥がいる横で自分は……」

「はぁ――別に構わないといっているではないか、それに君と私は軍の中で上と下とういう立場ではあるが、供に戦いを生き抜いた友だろう? 」

「それは元帥のお導きがあったからこそで――」

「君はもう少し自分に自信を持て」

「自分は……最後に仲間を死に追いやりました。そんな自分には、あなたを友と呼ぶ資格はないと思います」


 そんな風に自分を卑下している俺をみたリュドミールは、一段と深いため息を吐き立ち上がった。


「じゃあ、私はもっと愚かな人間だな」


 リュドミールは俺のほうに歩いてきて、そして俺と同じように窓枠の縁に座った。


「私は君よりも多くの部下を死に追いやった」


 リュドミールの言葉には多くの後悔や悔しさの念が感じられ、そういった彼はどこか遠くを見つめていた。


「いいか、指揮官たる者犠牲を恐れてはならない。それは戦闘に送り出す時もそうだが、退避命令を出すときだってそうだ。私達の言葉には、その一声で人を何万と殺すほどの力がある。自分に自信が有るか無いかではない、自分自身を信じることが大切であり。それこそがいい結果につながるのだ」

「では自分はそれが無かったという事ですね」

「あの時の君は、そんな腐っていなかったと思うが……今の君はどうしようも無いくらいに落ちぶれたな」


 リュドミールの俺を見る瞳は穏やかに見えた。

 しかしその瞳をじっと見つめていると、その瞳の中には怒りが多分に含まれていることを俺は理解した。


「では、自分はどうすればよいのでしょうか」

「さぁ、な……ただ一つわたしが君に言えるのなら“君がそんな姿になってしまったのは、君の心が弱いから”ではないか」

「……どういう、ことですか?」

「そういう事だ。丁度いい、これを機に君がなにをすべきか悩んでみるといいさ」


 そういったリュドミールは立ち上がり、隣の部屋の扉を開け中に入っていった。




        ×     ×      ×




 あれから暫く遠ざかっていく地表を見つめ続けていた俺は、リュドミールの言った言葉について考え、そして俺は過去を振り返っていた。

 俺の心が弱い。

 つまり、今の俺の心がリュドミールと会った当時と変化したということか。

 ならそれは、第三次海峡戦争の最終決戦の場であろう。


 第三次海峡戦争の末期――俺は幾つかの艦隊を指揮する指揮官だった。

 戦況は此方が優勢、敵の損失は25%を超えようとしていた時の事だ。

 突然前方から高エネルギー反応を検出し、次の瞬間には戦場のど真ん中を巨大なレーザーが通過。

 そこにいた味方艦隊は敵を押しとどめる役をしていたが、その攻撃により壊滅、敵艦隊がそこから前線をのし上げてきた。

 すぐさまそこの補充に行かせるべきだったのだが、依然として高エネルギー反応は消えておらず、危険を冒すわけにもいかずそこに艦隊を向かわせることは出来なかった。

 そうしているうちに前線はどんどんと押し上げられていった。

 全体としては此方の戦況はまだ優勢。

 しかし着々とこちらも押されてきていて、味方損失率は15%を超えようとしていた。

 幸いにして、前線にいた俺の艦隊が敵に与えられたダメージは軽微。

 後方にはリュドミールが指揮する大艦隊がおり、敵の前線をそこで止めている。

 だが、このままでは相手の怒涛の勢いに押され前線を維持できなくなるかもしれない。

 そしてその状況を見た俺は、敵の決戦兵器破壊に単独で乗り出すことを決心したのである。

 その結果は、肉を切らせて骨を断つものであった。

 俺は敵の決戦兵器の破壊を成功させた。

 しかし自身の艦隊の6割方を失うという結果にもなった。

 決戦兵器がなくなったことによる敵の戦意喪失。

 俺が逃げた先の艦隊は士気がもともと高くなかったのか、決戦兵器を破壊しかえる頃にはしっぽを巻いて逃げだすところであった。

 ただ少数はまだ戦意がのこっていたようで、俺はそれを叩きながら味方陣営の方まで撤退することになった。

 俺が戦闘宙域から撤退した後は、リュドミール率いる大艦隊による敵への追い込みが行われた。

 こうして第3次海峡戦争は、敵の損失率50%越え、味方の損失も30%を超えたところで敵の降伏宣言により終わった。


 この後――俺は決戦兵器を叩き、そして戦争終結への糸口を開いた人物として英雄と呼ばれるようになった。



「はあ……」



 やはりあの時の事を考えると、どうしても他にやり方があったのではないかと悩んでしまう。

 俺は近くにあったソファーに体を投げ出した。




 戦争中の俺はただ、戦いに勝つためだけにすべてを費やしてきた。

 それはリュドミールの言った通り、犠牲者が出るのは当たり前で、それが普通だと考えていたからこその物だ。

 しかしあの最後の時、俺は愛する人を失った。

 そしてそれが俺の今までの考え方を否定し続けている。



 当時、俺は、戦争が始まってすぐにある女性に一目惚れをした。

 その女性の名はキャロ・スタックバード。

 彼女は美しいブロンドの髪を持つ女性で、性格は明るくて社交的、彼女の笑顔はその場にいる人々の心を癒していて、一言でいうなら俺にとっては女神様みたいな人だった。

 当時の俺は内気であまり社交的ではなく、お世辞にも話がうまい奴とは言えないような人間だったが、彼女と出会ってからそれを治すことに努めたのはいい思い出だったかも知れない。


 そんな彼女と俺の出会いは、気の休まることが無い戦場だった。

 彼女との出会い方は最悪だったが、それがお互いに強烈な印象を残したのは確かだろう。

 そんな彼女と俺はその後、同じような出世街道を歩むことになり、よく同じ仕事をする仲になった。

 そうしている内に俺は、美しくも強くそしてなにより優しい彼女に益々惹かれていた。

 もちろんあの時の俺は戦争バカだったし勝利の事を一番に考える人間だった。

 でもそれと同時に彼女への思いも伝えようと、口下手を治す努力を重ねて彼女と少しずつ話すようになっていった。

 今思えばそのの行動自体いけなかったのかもしれない……

 

 第3次海峡戦争が苛烈を極めてきた頃の事だ。

 俺は俺自身の艦隊を持つことが許された。

 そして当時、俺の艦隊は既定の数が足りておらずその埋め合わせをしてくれる人物を探し回っていた。

 そんな時だ――

 その頃にはそれなりに仲良くなっていたキャロを俺は誘おうと思った。

 今まで頑張って口下手を治してきてそれなりに話せるようになった俺は、彼女を誘おうとかなり意気込んでいた。

 俺は彼女とゆっくり話せる機会を窺い、そして頭を下げ頼んだ。

 そして彼女は、俺が思ったよりもあっさりとそれを快諾してくれた。 


 もちろんあの時の事は今でもよく覚えている。

 俺は終始ハイテンションで、彼女はそれを若干引き気味に笑っていた。

 それからの俺達は快進撃の毎日だった。

 憧れの女性と毎日同じ仕事ができる。

 嬉しかった、そして良いところを見せようと張り切っていたからでもある。


 丁度このころだ、当時から俺の事を気にかけていたリュドミールが俺を食事に招待してくれた。

 俺は彼と食事をしていく中で、俺は彼と意気投合した。

 大尉の俺と、当時連邦軍の艦隊司令部の大将だったリュドミール、立場を超えお互いを愛称で呼び合う仲になったきっかけだった。

 彼の功績は目覚ましく、もともと彼は辺境地域の一軍人だったのを、今の立場にまでのし上げてきたのだと教えてくれた。

 俺は俺で孤児院育ちからの数年で大尉にのし上がったことで、少しだけ知名度があった。

もちろん彼ほどではなかったが。

 彼は「我々は似ている、供に頑張ろう」とその時俺に言った。

たぶん、俺がこの後に更に目覚ましい戦果を挙げる要因になったのは紛れもなくこれがきっかけだと思う。


 そして数か月後――リュドミールが元帥になっていて、俺はいくつかの艦隊を指揮する指揮官となっていた。


 もうこの頃にはキャロとの仲もだいぶ進展していて、俺はこの戦争が終わったら正式にキャロに結婚を申し込もうと密かに企んでいた。

 だが運命は――俺の淡い夢を粉々に粉砕した。


 戦争の最終局面。

 俺が決戦兵器に突貫を掛けたときの事だった。


 決戦兵器の前で立ちはだかった1隻の超大型戦艦。

 これが唯の戦艦だったら――そう願ったのはもう戦いが終わった後で、すべてが取り返しのつかないことになったあとの事である。


 あれは唯の戦艦ではなかった。

 始祖移民船から回収したロストテクノロジーを大量に組み込んだ最新鋭の戦艦だったのだ。

 此方の攻撃はすべてを防がれ、まったく攻撃が通じず逆に敵の不可解な広範囲攻撃の前に防戦一方となった。


 その時だ、彼女はあの戦艦の内部に特攻すると俺に告げた。

 内部に特攻……普通の艦船なら不可能である。

 だが彼女の乗っている艦には可能だった。

 彼女の船は連邦でも数隻しかない自己転移艦、つまり自由自在に好きな空間へとワープできる艦だったのだ。

 俺はもちろん反対しようとした。

 しかし彼女は、俺の返事も待たず通信を切った。

 そして――彼女の艦がまばゆい光を放った後、目の前の戦艦は巨大な鉄塊へと変貌した。


 一瞬だった。


 数秒間、何が起きたかわからなかった。

 俺はひたすら彼女の艦の信号を探した。

 結局見つからなかったが……


 その後はただ怒りにまかせて敵決戦兵器への攻撃を指示した。

 敵の決戦兵器はあっけなく大破。

 俺は無事帰還した。


 俺は最愛の人を失う結果となった。

 あの後はひたすら地獄だった。

 俺は戦争を終結に導いた英雄と呼ばれた。

 全てを失った人間が英雄。


 確かに、俺は客観的に見て英雄なのかもしれない。

 だけれど自分の心は、それを受け入れることがどうしても出来なかった。

 自分の愛する人間を守れなくて何が英雄なのだと、そう言ってずっと否定し続けてきた。


 そしてあれから7年立ち、大尉となった俺の元に来た依頼は、皮肉にも俺の愛する人を死に追いやった元凶の更にその元凶、始祖移民船の調査だった。

 正直最初は、乗り気ではなかった。

 でも、俺の知らない誰かに利用されて、また俺の周りに牙をむくのではないか――

 そう考えると居ても経ってもいられなかった。

 そして俺は二つ返事で任務を許諾したのだった。



 ずっと過去を振り返ってばっかだった人生を変えてやろうと、そう思って今回の任務を受けたのだ。


 そうか、そういう事か……


 頭の中の雲が今――晴れたような気がした。




 

「どうやら、何かつかんだようだな」


 そういう声が聞こえ、振り返ると。

 其処にはリュドミールがいた。



「ああ…‥」


 俺はソファーから立ち上がりリュドミールの目を見つめた。

 それうするとリュドミールの方も、ただ俺の目を見て「そうか」とだけ呟いた。






 変わらなければいけない――


 俺は変わらなければいけないのだ。


 まだ、如何すればいいとか、何をすればいいとか何て分からない。


 俺はもう、俺の大切なものを失うような失敗はしたくない。

 

 そのためには過去何て振り返って後悔しても意味はないんだ。


 英雄――ずっと否定してきた。


 そしてその言葉が嫌いだった。

 

 俺は、今まで俺自身の弱さから逃げてきた。

 

 だけどそれじゃダメなんだ。

 

 俺は、俺自身から目をそらさすのを止めなければいけない。


 この体になった訳など知らない。

 

 なら、俺はこれを俺自身に与えられた試練だと思えばいい。


 そして、昔の俺よりも強くなってやろう。

 

 そうなるために、とりあえず当面は今の状況を飲み込む事が大切かも知れない。



 ――俺は拳を軽く握り、外の景色を見つめた。


 




 これにて『Chapter1:The man is tossed about by the his body.』終了です。

 ゲームで例えるのならチュートリアルを終了くらいでしょうか。

現状予定しているストーリーの1割も終わってません(笑)

 本当にはじまりの始まりって感じです。

 次回からChapter 2 と行きたいところですが――

 

 次回はChapter 1 で話されていなかった、クレア以外の人物からみた話のショートストーリ集を掲載する予定です。


 ご一読ありがとうございました!! 

 

 

 


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