Episode 44 : 目覚めたら
今回、途中でやたら小難しいこと書いてますが。作者の貧弱知識で書いているため、多分正しくないと思います。雰囲気をなんとなく味わっていただけたら幸いです。
暖かい食事、“私”の両隣に立つ男女。
その光景はとても懐かしい様でとても遠い。
なぜなら“こうなるはずの未来は既に閉ざされてしまっている”のだから……。
じゃあなんで“私”いるのだろう……“俺”は何を――――
「――ッ」
突如として目の前が白く包まれ、意識が覚醒を始める。
眩しさに目を細め、拳を眼前へと移動させた。
「今のは……一体」
見覚えのない光景、でも確かに知っていた光景。
なぜそんな物を俺は見たのだろうか……。
まったく見当がつかな――
「目が……目があいた」
耳元から震える女の声が聞こえた。
暖かくて、気持ちよくて……抱きしめられているような。
「クレア! よかった……本当に、本当に……ッ」
「アン、ジュ……? 」
耳元から囁かれる声は俺の義姉、アンジェリカ・スタックバードの声で、震える声は俺に向けられていて。
なんでそんなに震えているんだろう……。
俺に何かあったのか?
いや、あったな。
俺はバルツァーとの戦いで、体の全身が捻じれるような痛みを感じる中で意識を失ったんだ。
「ここは……」
「ここはネブラスカの総合病院よ。あなたは酷い怪我をしていたから一番近いこの星に運び込まれたの」
アンジュは答える。
何時の間にか俺はまた病院のベッドにいたようだ。
前にも大怪我をして、気づいたら病院にいたことがあったな。
確かあの時は俺がこの体になった時か、そうなると思ったよりも期間はあいてない。
不運なのか幸運なのか、俺はまだ生きているようだ。
でもネブラスカの病院になんでアンジュが……。
「なんで、ここに」
「あなたが大怪我したからって聞いたからに決まってるでしょ馬鹿ッ」
抱きしめてくる腕の力が一層強くなるのを感じる。
アンジュは俺が怪我をしたことを凄く心配しているんだ。
ちゃんと帰ってくるって約束したのに、また俺は……。
「すまなかった」
「そんな言葉だけで済むと思ってるの⁉ 私が、私がどれだけ心配したと思ってるのよ‼ 」
アンジュはかつて無いほど怒りを俺にぶつけてきくる。
その反面、アンジュが俺を抱きしめる力はさらに力が加わっていた。
本当に、本当に俺の事を心配してたんだ。
俺にとっても彼女にとっても、お互いにたった一人の家族だというのに……俺はまたそれを忘れて、ああするしかなかったとはいえ危険な賭けみたいな事をッ。
拳に小さく力が入る。
ちゃんと謝らないといけない。
でも、何を言えば良いかがわからない。
何かを言わなきゃいけなくて、でも何を言えばいいのかわからなくて――
俺はただアンジュの顔を見つめてるだけだった。
「……怒鳴ってごめんなさい。本当に目がちゃんと覚めてくれてよかったわ」
暫くするとアンジュの顔は優しい表情に変わり、俺を包み込む片方の手で俺の頭を撫ぜていた。
アンジュが撫ぜるたびに俺の中で温かさが、何処からともなく湧き出した安心感が、俺の心を包み込みそして涙を流させる。
「ごめん……ごめんなさいアンジュ」
「謝らなくてもいいのよクレア。私はこれからもクレアがちゃんと元気でいてくれるなら、私はそれだけで……それだけでいいから。でも、でももう……無茶苦茶な事はしないで」
気が付けばアンジュの声も涙ぐんでいた。
俺はそっとアンジュのこしに手を回し力があまり入らない腕で、小さく抱きしめた。
またこうして会えたことに喜びを胸に秘めて。
× × ×
「クレアが目を覚ましたってホントっ⁉ 」
アンジュと会話して暫くした後、騒がしい足音とともに俺の病室に飛び込んできたのは、銀髪の少女――エレナ――だった。
何時ものように眩しい笑顔で、透き通るような銀髪を病室の窓から差し込む陽光に反射させ駆け入ってくる。
大きく開かれた横スライドのドアは、ストッパーにあたり大きな音を立て、反動でまた元の位置に戻ろうと動く。
部屋に入ってきたエレナは、そのエメラルドの様に綺麗な瞳を大きく見開かせて、暫く俺を凝視する。
「エレナ、心配させて……うわッ」
「よかった。よかったぁ……何週間も目を覚まさなかったから。私、クレアともう話せなかったらどうしようって、すっごく心配したんだよっ」
エレナは口に手をあて、さも信じられないといった様な様子を見せた後――今の俺には――目にもとまらぬ速さで駆け出し俺に飛びついてきていた。
俺はその勢いを受け止めようと両手を前に伸ばし受け止めようとした。
でもエレナの勢いは予想以上に強くて、しかも俺の筋力は想像以上に弱っていたため一緒にベッドに倒れ込む。
柔らかい布団の感触が俺の背中を包んだ。
よく見ればエレナの目元には涙が溜まっていて、やはり彼女も俺がこうなってしまったことをとても心配していたみたいだ。
そう思うと、やはり申し訳なく感じてしまう。
その反面なぜだか心の奥では嬉しいと思う自分がいた。
「……ごめんなさい。ありがとう」
「いいよ。全然気にしてない! よかった。本当に……ほんとうに、ほんとに……ほんと――う、うぅ、うわぁああん」
エレナはだんだんとその笑顔を泣き顔に変えて、俺の上で涙を流し始めた。
エレナが涙をあふれさせるたび、俺の頬に彼女の涙が零れ落ちていく。
元気に来たと思えばやっぱり相当な無理をしていたみたいだ。
会った当時はこんなにも表情が変わるようになるなんて思ってもみなかったけれど、彼女は確実に回復の兆しを見せていた。
「なんで、わらっへるの?」
「エレナの顔が泣いてて変だからです」
「なくなっへ、いうほおが、むりにきまっへるひゃん! 」
「ふふっ、嘘です。心配してくれたことが嬉しかったからですよ」
優しくエレナの頭を撫でる。
なんだか不思議な気分だ。
見た目的には彼女のが年上だが、中身を考えれば俺のがずっと年上なのだから。
そう考えるとなんだか複雑な気分になる。
そもそも元の性別すら違うし。
そうなるとこれは……もしかして、非常にまずい状況なのではないだろうか。
歳の差だって10歳以上離れてるし。
そう思った瞬間なぜだか無性に恥ずかしくなってきた。
「コホンッ」
わざとらしい咳き込みが聞こえる。
小さく目を動かせばアンジュが複雑そうな表情をして俺達を見ていた。
「あ、アンジュ。これはべ、べつに」
いや、違うんだ! これは別にやましい気持ちなんて!
そもそも俺は、俺は――
アンジュと二人っきりでない以上、口には出せなかったが必死に目で弁明を試みる。
しかし、意外にもこの状況で一番早く動いたのはエレナだった。
「す、すみませんアンジェリカさん‼ 怪我が悪化しちゃいますよね」
エレナがアンジェリカを視界に入れたとたん慌てて俺から離れていった。
なぜエレナが慌ててて?
そもそもエレナはアンジュの事を知っているようだが、アンジュもエレナの事を知っているのか?
「そうそう、怪我人にあんま無茶させちゃいけないわよエレナちゃん」
「はい! 」
「それとクレアも。ちゃんと離れてほしかったら確りと言葉で伝えなさい」
どうやら、二人は知り合いだったらしい。
でも、何時の間に?
「わ、わかった……あ、あのさアンジュ、アンジュとエレナは何時の間に知り合ったんだ?」
エレナとアンジュ、元々二人に接点はなかったはず。
いや、俺自体アンジュの事をそんなに詳しく知らないから、もしかしたら元々知り合いだったのかもしれないけど。
と思ったら二人が顔を合わせて何か頷き合っている。
「エレナちゃんとは大体一ヶ月前くらいにあったんだったかしらね? 」
「はい。大体それくらいたちましたかね」
エレナはそう言いながら俺に笑顔を向ける。
一ヶ月くらい……少なくとも俺がエレナと会ったのは<ジークフリート>を旅立って暫くしてから。
となると元々接点があったようには思えない。
じゃあ、アンジュが此処に来てから知り合ったという事になる。
だったら俺は、
「それじゃあ、お‥…私は一ヶ月も寝たきりだったということに」
「そうよ。というかあなた一回心臓止まったんだからこっちは大変だったのよ」
「そうそう。アンジェリカさんが居なかったらクレア死んでたかもしれないんだから! 」
俺の心臓が一回止まった?
それって俺は一度死んでしまったという事か……いや、俺は生きているから蘇生は上手くいったという事か。
それで蘇生をしたのはほかでもないアンジュ。
じゃあその時にエレナもその場にいて知り合ったという事か。
その後も二人の会話は止まらなかった。俺は聞いていて耳と胸が痛くなりそうな気分になりながら二人の話に相槌を打ち続ける。
で、どうやらエレナはアンジュに簡単な応急処置の仕方とかを時々教えてもらっていたり、自分自身の事も相談しているらしい。
そこでさらに二人は仲良くなった様だ。
「私が医者でよかったわねクレア? 本当あなたの状態酷かったんだから」
アンジュが冷やかすような目で俺を見つめ。
「そうだよクレア。クレアを運んできてくれた人たちの顔がずっと青ざめてて、アンジェリカさんが来るまで皆お通夜みたいになってたんだよ」
エレナはアンジュとは対象的に本当に心配そうな目をして俺を見つめていた。
「ごめんなさい」
二人の言う事はもう本当にその通りだ。実際こうなった原因の八割方は俺に責任がある。
そんな風に思っていると、どこからか壁をかるくノックする音が聞こえた。
「良い雰囲気で悪いが失礼させてもらう」
低く響く声に、俺達三人が扉の方へと顔を向けるとランドが立っていた。
彼は前見た時と同様に変わりない姿でそこにいる。
「それとすまんがね。俺とこいつだけにしてもらいたい」
ランドはツカツカと革のブーツを響かせ俺のベッドに近づいてくる。
アンジェリカとエレナは俺に小さく微笑むとランドと入れ替わる様に部屋から出て行った。
「よぉ……だいぶ前みたいに可愛く戻ったなぁレディ」
「ランドさん……」
ランドの言葉自体は軽いジョークだったが、その視線と声は全く持ってふざけていなかった。
これは、仕事の時のランドの顔だ。俺は即座に理解する。
「俺は、今からお前に一つ聞かなければならないことがある。答えによっては、俺はお前に鞭を打つか独房にぶち込まなきゃいけねぇ。もしくはその両方もある。だからちゃんと答えてくれよ?」
間違いない。俺が独断専行でやったあれについて聞きに来たのだ。
スィリーがあの場にいた時点で、ランドが俺の存在を知らないわけがない。
ある意味であの時の俺の行動は、相手の様子を監視するだけの俺の任務からは大きく外れた行動であるから、こうなるのは仕方のない事だ。
「覚悟してます……」
「まだ何も言ってない。それとそういう言葉は自分に否があるみたいな口ぶりだ。聞く前からそう言う事は言わねェ方がいいぜ」
「はい……」
凄味の聞いた目で睨み付けられているのと、自分がやったことを考え速くも俺の気分は憂鬱だった。
「じゃあ聞くぞ? ちなみにこの会話はたった今、録音を始めた。そのことを理解して答えろ」
つまりこの音声は上えと提出され、俺の今後についてが決定されるという事だ。
「ヒューゴスティア連邦議会、諮問機関【コマンダーズ】戦闘斥候コマンド・グラーディオ、司令官アデルバート・コベット少将の命により、ヒューゴスティア連邦軍の法規に従い、ヒューゴスティア連邦軍最高司令官より発せられた規定により戦地軍法会議を開催する。監督者――デルタ小隊「クラウソラス」、アルヴィン・ハイドフェルド中尉。判事――デルタ小隊「クラウソラス」小隊長ロランド・ファラレーエフ大佐。被告人――デルタ小隊「クラウソラス」クレア・ハーミット少尉。告発内容は作戦途中の命令違反となっている」
ランドがそう言ったところで扉の陰からハイドが現れた。
軍法会議になるのは、それとなく予想はついたがかなり簡略化されているらしい。
「今回は我々が集めた情報を示し、それにだけ答えてもらう事となる。その際、イエスかノーで答えてもらってもいいし、黙秘しても構わない。いいかな? 」
「はい。判事どの」
「よし、では。お前はストラフェル監視の任務に就いていた。それはあっているか? 」
「はい、判事どの。あっています。私はストラフェル監視の任務に就いていました」
「この任務では対象が我々に対して脅威であると、小隊長の判断がない限り、貴様は監視対象に危害を加えること及び武器の使用を認められていなかったそれもいいな? 」
「はい、判事どの」
「だがお前はストラフェルに反抗した部下の一人に、ストラフェルを暴行すること、武器を使用することを強要された。いいな? 」
「……え」
「――聞こえなかったようだな。お前は指揮官に反抗した部下の一人に強要され、あのような任務から外れる行動を致し方なくした。そういうことだな?」
事実に反するランドの証言に、訳が分からなくて上を振り向けば。ランドの口元が小さく笑っていた。
そしてその口が俺にうなずけと動いていた。
嘘を吐くことに、罪悪感を覚える一方で、庇ってくれたランドに感謝する。
ここで真実をこたえるのは、ランドの恩に泥をぶつけるにも等しい。
だから俺はありがたく、その嘘に乗ることにした。
「……はい。そうです判事どの。怪しまれない様、私はあの時ああするしかありませんでした」
「つまりお前は、任務を全うするために仕方なくの行動であると主張するんだな?」
「はい判事どの」
そう答えるとランドは暫く黙りこむ。
それから俺の目をスッと見据えてから口を開いた。
「当法廷は被告人に判決を言い渡す。被告人を二週間の謹慎処分とする。これにて閉廷とする」
そしてランドは手元の端末を少し操作すると。
俺の頭に手を置き大きな口を開けた。
「よしよし上出来だ。まあありゃ立派な違反行動ではあったけどよ。おじさんとしてはアレだけやってくれりゃ、満足ってもんなんだよ解るか?」
あまりランドの言ってることは理解できなかった。
俺はあの時、ただ必死だったのだ。
だから俺は罰を受けることを当然だとも思っていたから、ランドの言う事はあまり理解できるものではなかった。
「とってもよくできましたってことさレディ。俺としては優秀な部下を独房入りさせるのはいやだからなぁ。まあ今回はそう言う事だからよ。この事は俺達小隊だけの秘密だぜ」
そういってランドは俺の頭をごしごしと強く撫でつけた。
「ありがとう……ございます」
「いいってことよ。さてじゃあ、俺達はそろそろいくぜ。家族の時間を長いこと奪いたくねぇしな」
ランドは小さく鼻を鳴らしながら、小さく手を持ち上げ出て行こうとする。
そうだ。ランドなら――
「あのランドさん」
「――おう。どしたよ? 」
若干、つんのめりそうになりつつ振り向いたランド。
本当はこのまま颯爽と帰っていきたっかのかもしれない。
でも、俺としては聞かなければならない事がある。
「あの、スィリーやモーゼフは大丈夫……ですか? 」
それを聞いたランドは、小さな溜息をついてからまた顔をほころばせる。
「ああ、お前さんよりもよっぽど“軽傷”だったぜ。もう二人とも元気さ。モーゼフって野郎は出てった後の事は知らねぇけどな」
「そうでしたか……」
よかった。二人とも命に別状はないみたいだ。
俺はホッと息をついた。
「じゃあ。また来るぜレディ。今度までには痩せとけよ。“ぽっちゃり”した奴は俺の部隊じゃ直ぐばてるからよ。がっはっはっはッ」
ランドが謎の一言を残し出て行ったところで、俺は自分の体を見た。
そして口元が引きつった。
ランドの言うとおり、いや……これはぽっちゃり通り越してかなり丸くなっている。
俺は心の中で謹慎中の二週間、で元の体形に戻ることを決めた。
最近、時間がありあまるほどあるのですが、いざ時間があると何していいか分からなくなって困ります。
続き書けよとつっこまれそうですが。残念ながら、いざ書こうとするとどう書こうかと迷い、筆が止まってしまいます。悲しいですね(苦笑)
ではでは、みなさんまた次回。多分明日?には上がるはずです。




