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ターニングポイント  作者: ばすてと
6/6

《香色。皆木さん》

九十九達が、茜色の空を見た日の1時限目休み時間。

渡り廊下の先で空を見上げる女子生徒。


皆木『やはり、ダメなのね。窓が開いた状態では、あの景色は見られない。この時間、同じ景色に出会える確率は3%未満。分かってはいたけど、残念な結果だわ。』

皆木からは、表情は変わらないが、肩から脱力感が見て取れる。



皆木『あの人と一緒なら、見られたかもしれないわね。渚君。私の知る限り、最高のタイミングを生み出す人。』



皆木は、ベランダへと視線を移す。そこには、九十九の姿があった。



皆木『あなたの秘密、しりたいわ。』

鋭い視線を送る。



皆木『購買部のお昼。あの激戦で難なく、焼きそばパンをゲットする、あなた、只者ではない。

まだあるわ、激レアで入荷のタイミングが不定。”二日目カレーのカレーパン”までも、手にしている。

私でさえまだなのに。 大体、カレーが被ってるじゃない。それも、解せないわ。って、それは関係ないわね。』


皆木は、ベランダに視線を固定し無表情だ。




明菜「あ、かおりん発見。やっぱり、かおりんも見に来たの。誘ってよぉ。」

背後から声をかけたのは、明菜。皆木と同じで、朝の景色を見に来たようだ。



皆木「明菜、残念な結果だわ。」

明菜「あちゃぁ、本当だ。窓全開だね。全然さっきと違うし、がっかりだよぉ。」


落胆の表情を浮かべ、首をかしげる明菜。

ふと、視線を空に向ける。




明菜「あれ、ナギー発見。」

明菜もベランダにいる、九十九を見つける。



明菜「おぉーい、ナギー。」

ベランダの九十九に向かい手を振る。しかし、九十九は気づかない。変わりに周囲の視線が、明菜と皆木に集まった。



皆木「いくわよ、明菜。」

皆木が下を向きながら、明菜の背を押していく。多少、顔が赤い。流石に恥ずかしかった様子だ。




皆木『明菜、あなたという人は。毎度毎度。もう少し、周囲を気にして欲しい。でも、これが、明菜なの。理解しているでしょう、香。そう、人はコントロール出来ない。ならば、自分が変わればいいの。とりあえず、今は、ここから撤退するのが得策。』



明菜「えっ、えっ。かおりん、ちょっと~。やぁ~。」

ずんずんずんと、背を押される明菜は、いちいち、声にする。その度に、周囲の視線が二人にむき、皆木の足が早足になった。




九十九「何やってるんだか。」

いつの間にかに、二人に視線を送る九十九。



九十九『ちょっと、皆木さんの声がきこえましてね。貴方にも聞こえましたか。いい事いいますね~。”人はコントロールできない。自分が変わればいい”。素敵な声でしたね。思わず反応してしまい、見てみれば皆木さんだった訳です。


あの声内容は、中々出来そうで出来ない、超能力入門編なんですよね。僕もついつい忘れてしまう事です。』




~3時限目の休み時間~

九十九が購買部へ向かう、後をつける皆木。


皆木『渚君に合わせれば、レアパンを買える確率は高いハズだわ。この2週間で、カレー・焼きそば・コロッケパンを難なく手に入れる、あなたのタイミング盗ませてもらう。』



廊下の柱や、階段に身を隠し尾行する。不意に振り向き、数歩戻る九十九。



皆木『っ!なんて事、後進するなんて予想外。』



しかし、九十九は皆木には気づかず、廊下の掲示板を流し見て、そのまま歩を進めた。




皆木『ふぅ~。ここで、掲示板を見る所あたりが、渚君のタイミングなの?。ふつうなら、購買部には走って行きたい所。休み時間も半分を過ぎたのに、余裕なのね。』



掲示板を一通り見た九十九は、歩を進める。

後をつける皆木。




皆木『さぁ、購買部まで来たわ。まだ、人が残っている当然よね。』


しかし、九十九は購買部をすり抜ける。

皆木『!?』

驚きの表情の皆木。



九十九は、購買部先の自販機でジュースを購入し戻ってくる。

そこには、もう、人影はまばらだった。そして、九十九来ると同時に、新しいパンが並べられる。

そこには、あのカレーパンも入荷された。




皆木『なぜなの、渚君。あなたの、タイミングの良さ。只、ジュースを買ったこの時間差で状況が一変するなんて。』



皆木は、考えると同時に購買部へ足が進んでいた。そして、

皆木「カレーパンを2個。」




おばちゃん「はい、300円だよ。」

皆木「あっ、財布・・・」

おばちゃん「あらら、生徒手帳でつけられるけど、どうする。」




皆木は顔を赤らめている。

皆木『私としたことが、こんなイージーミスを。なんて事、生徒手帳でつけなんて、入学早々借金を背負うの香。でも、見たところ、10個ほどしか無い、ここで諦めたらカレーパンは手に入らない確率が高いわ。くぅ~、どうしたら、』




横から手が伸びる。

九十九「ハイ、600円でカレーパン二つ追加ね。高木さん」

購買部のおばちゃんには、高木という名札が付いていた。




九十九「皆木さん、教室で返してね。300円。」

皆木「あ、ありがとう。」



皆木『渚君、ポイント高すぎです。そして、やっぱりタイミングがいいのね。』



購買部の袋を手に、並んで教室へ帰る二人。

ちょっと背の低い皆木は、九十九を見上げ顔みた。





キーン・コーン・カーン・コーン、4時限目終了のチャイムがなり、昼休みが訪れる。


慌てて教室を飛び出していく者、机を寄せ集まる者、にわかに教室・校舎が騒がしくなる。



そんな中、涼子と皆木な椅子を並べて雑談し始めている。

机の上には昼食が並んでおり、涼子はお手製のお弁当。皆木は、先ほど九十九を尾行した時に買った、購買部の袋がおいてあった。



涼子「速攻で教室出ていたけど、帰りが遅いね、明菜。」

皆木「今日の購買部は、いつもより戦場なの。」

涼子「えっ、なんでなんで。」



皆木は不敵な笑みを浮かべている。

涼子「また、そうやって香りは、意味深にするんだ。いいもん、別に知らなくたって。」


頬を膨らます涼子に、皆木が指でつっつく。

涼子「ぶぅ~。きゃ、ちょっとヤダ~。」





九十九は、カレーパンを食べながら、やり取りを見ていた。

九十九『何やってんだか。』



そこへ、明菜がヘトヘトになった様子で二人の前あらわれる。

明菜「うぅ~、買えなかった。やきそばパンもコロッケパンも売り切れ~。そもそも、三階からハンデありすぎだよ~。噂ではカレーパン入荷したって。でも絶対むり~。」




涼子「それで、結局どうしたの。」

明菜「とりあえず、卵サンドはゲットした。それと、ドーナツ。」



涼子「そう、良かったね。」

明菜「でもさぁ~、朝は目玉焼きだったんだよ~。それに、ドーナッツはやっぱり3時のオヤツでしょ~なんか寂しい。」


二人の会話を横目に、購買部の袋からパンを取り出す皆木。




明菜「あり、かおりんも購買部に行ったの。明菜の方が教室早く出たよね?いつの間に?

えぇ~!それに、そ、そ、それは、幻の二日目カレーのカレーパン。

なんで、どうして、かおりんズルい。いったい、いつ買ったの。明菜が行った時はなかったよ。」



軽い錯乱状態の明菜。

皆木「入手ルートは秘密よ。二つあるから、一つは、卵サンドと交換してあげるわ。」



明菜の動きが止まる。そして、強烈なハグ。


明菜「かおり~ん、超大好き~。」

皆木「きゃっ」

皆木に抱き着く明菜。

力いっぱい抱きしめられ、呼吸ができない皆木が、腕をはがそうとバタバタする。



九十九『何やってんだか。』

影峰『いいなぁ~あれ。』




涼子「ちょっと、明菜、落ち着いて、ね。」

涼子に、肩をたたかれ我に返る明菜と、解放される皆木。



皆木「ちょっと、後悔した。減点。」


涼子「まぁまぁ、香りも、怒らない怒らない。でも、いいなぁ~。私もカレーパン食べてみたい。」

明菜「半分こしっよか。」

涼子「えっ、いいの。でも、せっかくだし一個丸々食べたいんじゃないの。」

明菜「大丈夫、気にしないで。その変わり、お弁当分けて~ちょうだい。りょうちんのお弁当、美味しいいんだよね~。」

涼子「本当、手前みそだよ。」



二人の契約が成立しようとしていた所に、皆木が割って入る。

皆木「その必要はないわ。」


やりとりを見ていた九十九に、皆木が指をさす。

涼子と明菜はの二人は、視線を指先に移す。




九十九の机には、二つ目のカレーパンがおいてあった。

明菜・涼子「あぁ~、幻の二日目カレーのカレーパンだぁ。」



やり取りを見ていた九十九、片目状態になっている。

九十九『ふぅ~、やはりこうきましたか。カレーパン買おうとした時から、薄々感じてはいたけど。まさか、涼子さんに渡るとは、これも運命(サダメ)かもしれませんね。将来の彼女に譲りますか。』




皆木「渚君、あなたも、二つカレーパンを購入しいたわね。ここは、涼子に献上して高感度UPを図るタイミングよ。」

腕組みをした皆木が、九十九を見下ろす。



九十九『タイミングときましたか。皆木さん、中々やりますね。その通りです。』

九十九「明一中トリオの頼みじゃ断れないよ。いいよ。」



涼子「え、でも、悪いよ。それに、恥ずかしい。」

明菜「りょうちん、何が恥ずかしいの。」

涼子「だって、男子にお弁当分けるの恥ずかしいよ。」


皆木「なにを言っているの涼子、手料理弁当を食べられるなんて、渚君は超幸せ、幸せ絶頂間違いなしよ。そうよね、渚君。これは、男子の夢よ、憧れよ、桃源郷なのよ。」


皆木から、ただならぬオーラを感じる。



九十九「ありがたく、頂戴します。」

九十九『なんなんだ、この威圧は。』




明菜「あ、でもナギーお箸と器がないよ。」

九十九「あっ、そういえば。」

皆木「では、明菜のドーナツを渚君へ。そして、涼子のお弁当は、明菜がもらう。これで決まり。ベストな形だわ、渚君。」


九十九「えぇ?男子の夢と桃源郷は?」



皆木「決まりだね、ナギー。」

涼子「ありがと、九十九君。」



九十九は、キョトンとしている。机の上にはドーナツが置かれていた。



皆木『渚君、本当。いいタイミングなのね、素敵だわ。これからも見せてもらう。』




立ち尽くす九十九に、視線をおくる皆木香。

個性豊かな香りさん、果たして九十九の超能力に気付くのか。そして、誰もが持っている事に気付き、その能力を開花させるのか。



九十九『素質有りますよ、皆木香さん。貴方もそう見ている。素質高いですよね、彼女。』

九十九はドーナツをかじりながら、こちらに笑みを浮かべている。




そして、明一中トリオは、朝見た景色を、放課後もう一度見に行く作戦を立て始めたようだ。


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