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ターニングポイント  作者: ばすてと
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《茜色。涼子さん》

九十九と涼子は、高校生初日の朝の話に、花を咲かせていた。



涼子「それでね、その後の休み時間も、九十九君が誰かに呼ばれないかなぁ、って、見ていたんだよ。」



九十九「あぁ、あの時の視線は、神野さんのだったんだね。」



涼子「そうしたら、明菜は更に勘違いするし、大変だったんだから。

結局、その後の授業で、九十九君が、先生から指名されたんで、苗字が渚だったんだ。ってなった訳。」




九十九「あれ、でも、昼休みに軽く、雑談したよね。その時は、九十九君って呼ばれたような?」



涼子「あれは、朝に九十九君って呼んだでしょ。それに、ほら、私の勘違いも、あったし。」



涼子は、急に顔を赤らめる。

どうやら、話かけた事、気がある様に思われた、一見をプレイバックしているようだ。



九十九「ありましたねぇ。」

少し、含みをもたせて返す、九十九。



涼子「あー馬鹿にして、私なりに気を使ったんだよ。その後、急に”渚君”じゃ、

更に、意識しちゃうかもしれないって。」



九十九『そうなんだよな~、

人はこの思い込みで、勝手に人を作り上げ、自分の形を、作りあげていってしまうだよな~。


貴方も経験済みですね。僕もです。」


九十九が、コチラに軽く目配せをする。そして、九十九の行動が始まるようだ。




九十九「そうだったんだ。なんか、ありがとう。」

軽く頭を下げた、九十九。涼子もつられて頭をさげる。

涼子「いえいえ、こちらこそ。」



そして、目が合いまた、笑う。



九十九「神野さん。えっと、名前は、涼子さんだよね。」

涼子「そうだよ。」


九十九「漢字どうやって書くの?」



涼子「えっと、涼しいに、子供の子。」

九十九「涼しいに、子供の子かぁ。なんか、いい響きだね。」


涼子「どうしたの、急に?」




九十九「自分の名前好き?、

僕は九十九って、結構、きにいってるんだ。」


涼子「もちろん、自分の名前だもん。好きだよ。」



九十九「神野って言う名前も、神の野原って感じで。いいよね。

そして、涼子でしょ。うん、いい響きだ。」



涼子が照れくさそうに言う。


「九十九君、褒めすぎ。単なる名前だよ。確かに、涼子って名前は好きだけど、

そこまで、言われるとなんだか恥ずかしいよ。」



九十九「涼子さん。」

不意に名前で呼ぶ、九十九。



涼子「え、何。急に、あらたまって。なんか、悪いこと言った。」


九十九「ん、言ってないよ。ただ、涼子さんって、やっぱりいい響きだなって思って。」


涼子「だから、言い過ぎだって。」




涼子は、九十九に名前で呼ばれている事を、意識していないようだ。



本来は、そんなに大きな事ではないのかもしれない。

一部の者たちの価値観が定着し、大げさにとらえる。それが、人の心なのかもしれない。





九十九「了解。さて、課題に戻ろうかな。涼子さん、ちなみに、どの武将が知りたい。」


涼子「んっとね、じゃぁ。メジャーな所で、孔明あたりかな。」

九十九「OK。孔明ね、では、彼で行ってみますか。」



九十九は、ノートに記してある。諸葛亮の字を丸で囲った。



涼子「え、そんな簡単に決めっちゃっていいの?」


九十九「いいの、適当に選んで、誰も聞いてないより。涼子さん一人でも、興味をもって聞いてくれる。

この事実があった方が、やりがいあるでしょ。」


涼子は黙って、”うんうん”と頷いている。




軽い、静寂と茜色に染まる教室。

沈黙をやっぶたのは、皆木と明菜だった。




明菜「りょうちん、遅いっ。ぜっんぜん帰ってこないから、あっちこっち、探したんだよ。」

皆木「涼子、減点ね。」



教室の扉から、オーバーアクションで、声を掛ける明菜と、皆木であった。



涼子「あー、ごめんね。忘れてた。」

片手を前に、頭をさげる涼子。




涼子「でも、時間的にちょうど良くない。

ほら、夕日だし、そろそろ下校時間だし。ってダメ?」


片手をずらし、ウィンクしながら、二人を除く。




状況を理解できない、九十九は、黙って成り行きを見ている。



皆木「仕方ないわね、渚君を探す。

その目的は、涼子が達成したみたいだから、加点をあげるわ。」



明菜「じゃぁ、そういう事でプラマイゼロだね。」


涼子「ありがと~。」




涼子は二人から、視線を九十九に移す。


涼子「そんな訳で、行きましょう。九十九君。」



九十九は突然の誘いに、簡単な言葉しかでなっかた。

九十九「どこへ?」




明菜「えぇ~、りょうちん、ナギーにまだ言ってないの。」

そう言った、

明菜が続けて説明しようとする。



明菜「あのね、ナギー。じつはね、」


皆木が明菜を止める。



皆木「まって、明菜。

どうせなら、知らない方が幸せかも。黙っていましょう。」




皆木の思わせぶりなセリフに、九十九が反応する。



九十九「知らない方が幸せって、ちょっと気になるですけど。教えてくれませんかね。悪い話なら、早めに知りたいです。」




*キーィン:九十九が片目を閉じる。世界が反転する。

九十九『こっ、これは?』


*バキ、バリバリ、世界にヒビが入り、元の世界に戻る。

九十九は、片目を抑えている。



涼子「九十九君、どうしたの。そんなに落ち込まなくても、別に悪い話ではないよ。」


九十九の、異変に気付いた涼子が、優しく声をかける。




九十九『っく、私利私欲に能力は使えない。知っていたのに、ついつい魔が差した。


通常状態で使える能力以外は、暫く控えよう。

まぁ、普段通りに生活している分には、パーフェクト、オブ、タイミングで、よい方向への積み重ねが可能だし、問題ない。』




九十九の超能力には、片目を閉じ能力を引き上げるものと、通常時からおこる、法則やタイミングを組み合わせた能力がある。


通常時の能力は、誰もが持つ力で、九十九は、これを敏感感じ、意識を集中し能力を高めている。





九十九「なんでもないよ。心配ない。さてっと、じゃぁ、お誘いに乗りますか。」


明菜「レッツゴー。」



九十九「その前に、帰り支度するから待って。」


皆木「その申し出を受理します。渚君ってタイミングいいし。」



九十九『皆木、いい感してるなぁ~。』



4人は揃って教室を後にする。

九十九「やっぱ気になるなぁ。」

明菜「黙ってついてきなさい。」

明菜は、そういうと、一足先に階段を駆け降りていく。



皆木「何も、とって食う訳では無いわ、ただ。」

九十九「ただ?」

皆木は沈黙する。



九十九「おーい、だまるなー。」

涼子「大丈夫、大丈夫、いい事だから。」


九十九「まぁ、涼子さんがそういうなら、黙ってついて行くよ。」

皆木「!?」


何かに気付く皆木




そして、明菜が手招きする場所へ歩をすすめる。

そこは、朝に4人で集まった場所であった。銀空桜。



九十九「そういう事か。」



皆木「さすがは、渚君ね。いいタイミングだわ。」

涼子「本当、さっき来た時はまだ、窓があいてたもんね。」

明菜「ほらほら、ナギーも一緒に上をみるよ。」




4人が声を合わせる。

「せーの。」



窓が、茜色に輝く空を、オパールの様に染め上げる。

風に舞い、香る桜の香り。暖色系に包まれた空間が4人を囲む。



4人「おぉー。」


両手を広げ空を仰ぐ、涼子と明菜。

こぶしを握る、皆木と九十九。

しばし、時間のたつのを忘れ、見とれている。




時折、感動の言葉がもれる。

「綺麗だね」「うん」「なんか幸せ」「うん」「この学校に入れてよかった」「うん」




数分が立ち、太陽が校舎の陰に隠れた。

オーパルの様な光は消え、茜色だけが残る。



明菜「あっ、終わっちゃった。明日も見れるかな。」

皆木「終演のようね。明日は雨よ、桜も散ってしまう。」


明菜「えぇ~残念。来年まで、おあずけなの。」




確かに、もう一度みたい。来年まで見られない。

その事実が、4人をさらに、不思議な感情に引き込んでいった。



九十九「ありがとう、涼子さん。

誘ってくれて、朝の景色を、夕方また見てみようだなんて、気が付かなかった。


時間で見え方も、状況も変わる。大切な事を思い出しました。」



涼子「えぇ~、もとは九十九君のおかげだよ。それに、香が言い出したの。」


涼子が真顔になり、皆木のまねをする。



涼子「夕方もいい感じの確率、50パーセント、ってね。」


明菜「りょうちん、かおりんの真似旨い。」

明菜はケラケら笑っている。



九十九『そう、貴重な、能力の一つじゃないか。


立ち位置や時間、感情を変えれば、世の中見え方も変わるって。


周りがかわるんじゃない、それに気づくよう自分が変わる。』


『貴方も知っていたなら、ひと声かけ下さいよ。僕とした事が、なんだか恥ずかしい。


貴方に、忘れていましたね。なんて、言える立場じゃなっかたですね。』




笑っている、明菜を無視して、皆木が切り込んでくる。

皆木「渚君、さっき教室で何をしていたの。」



九十九「あぁ、世界史の課題だけど。結局、終わらなかった。」

涼子「ごっめん、私が、邪魔したからだよね。」



九十九「別に、邪魔されたなんて思ってないよ、涼子さんのおかげで、誰にするかも決まったし。」


涼子「本当、良かった。」




皆木「また。」

皆木が目を細め、九十九をみる。



皆木の沈黙を、明奈が破る。


明菜「あぁー、そういえば、ナギーいつのまにか、りょうちんを名前でよんでる。」


明菜が口に手をあて、こちらを指さす。



皆木「そう、朝は神野さんだった。急に名前になるなんて、何かあったに違いです。ハイ。」



明菜「やっぱり、りょうちんはナギーの事を。」


明菜は手を、ぶんぶんさせた。皆木は細めた目を、涼子に向ける。




涼子「えっえっ」

急展開に、ついてこれない様子の涼子


涼子「あぁ~そういえば、九十九君、名前でよんでる。あれ、いつから、えぇ~。」



顔を真っ赤、いや、茜色に染め、ほほをはさみながら、明菜と皆木と九十九の顔をみる。




明菜「りょうちん、ひょっとして、気付いてなかったの。」

皆木「明菜もね。」



涼子「うん、今気づいた。」

思言い切り、首を何度も縦に振る涼子。



慌てている涼子を見ながら、頭をかきながら話す、九十九。



九十九「さっき教室で、三国志の武将の名前の話になって、

涼子さんを名前で呼んだら、響きが心地よかったし、違和感なかったから、そのまま。」



明菜「うんうん、違和感なかった。気付かないし。」

涼子「私も。」



皆木「本当だとすると、なにもなかったのね。残念だわ。」



九十九「そういうことです。はい。」




そこに、またしてもの、風のいたずら。

桜吹雪が4人に舞う。

スカートを抑え込む3人と、身をすくめる1人。



九十九『あっ、桜色が3つ。』



涼子「うぅ~、また、朝のパターンなの、九十九君見たぁ?」

涼子・明菜・皆木が九十九を見る。



九十九「なにも見えていません。ハイ。」

直立不動で答える九十九。

が、涼子の目をみた九十九の顔は、ひきつっていた。



皆木「嘘が下手ですね、0点です。ハイ。」

明菜「ふぅ~、やれやれだね。」




膨れた顔をして、涼子。

涼子「九十九君、ココアね。」



九十九「分かりましたよ。たまたまなのに、なんだかなぁ~。」


明菜「意図的なら幻滅だよ、ナギー。」

九十九「偶然です。」




そんな中、皆木が小声で言う。



皆木「渚君、涼子、朝のココアも、同じだったのね。ピースは、そろったわ。」

九十九と涼子が、そろって皆木の顔をみる。



九十九「皆木さん、何を言っているのかなぁ。」


皆木「おとぼけですね、無駄です。

先ほど涼子が、また、朝のパターン。っと言いました。


そこからの、ココアの要求。反論せずに受け入れた渚君。


さらに、この問への二人の慌てよう。

確率99.9%です。」




明菜「かおりん、すごい。探偵さんみたいだ。」


皆木「ありがとう。でも、状況をつなげれば確実です。」



涼子「ふぇ~ん、もう、どうでもいいよ。九十九君のばかぁ~。」


茜色に染まった、背景に同化するよう。

茜色に染まった涼子が、片手を振り上げる。



軽いステップで、逃げる九十九を、

涼子と明菜が追いかけ、歩きながついていく皆木。



九十九『とんだ被害だ、でも、僕の評価うんぬんではないし、これはこれで、楽しい一日だった。


涼子さんと呼べるようになったし、距離は縮まったかな?なんだか微妙な結果でしたね。』



『さて、貴方にご覧頂きました方法の一つ、思い出して頂けたでしょうか。

やはり、行動は何よりにも勝るエネルギーでしたね。』


『明日は、雨との事。雨でも楽しい事が起こるでしょうか?それも結局、自分しだいですね。』





時を戻して、5分ほど前。

「あっ、桜色。

渚九十九、おまえという奴は。」



購買部、自販機に影峰光。

足元には、飲みかけのジュースが転がっていた。なにやら、一波乱起ある気配。



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