《空色、いい気持ちです。》
九十九「ホットココアかぁ。」
自分には、コーヒーを買うつもりだったが、ココアの温もりに、心が揺らぐ。
ふと、主人公
渚九十九が、空を仰ぐ。
九十九『おっと、また、貴方ですか。先程、申し上げましたが、僕への干渉は程々に、お願いします。
同じ超能力者として引かれるのは、わかりますがね。』
『まあ、いいでしょう。貴方にも、経験があると観ます。不意に、買いたい物が変わり、思考の渦にのまれる。そんな時の、判断基準は、何なのか。』
『まさに、ターニングポイント』
『初志貫徹、コーヒーか、今、直感が働いた、ココアか。いや、直感ではなく、迷いで、この思考こそが、直感が誘発したものか?』
『さて、真実は、どれか。
答えは、
言うまでもありませんね。貴方は、既に知っているのだから。』
『忘れてしまいましたか?では、思い出すまで、お付き合いしましょう。』
と、九十九は、ココアを2本購入し、校舎1階の購買部を後にした。
同じ校舎の3階、1-Aと記された教室。
ホームルーム10分前。大分、生徒が揃ってきた。
まだ、知りあって2週間ほど、まだまだ空気が堅い。
九十九の目線の先にいる女子、神野涼子。2本持つ、ココアの一本の、行き先だ。
朝は、大概、九十九が一番、神野が二番であり、会話をするようになった様子。
涼子は、明るく爽やかな、ショートヘアの似合う女子生徒。
不意に、九十九が振り返り、肩越しから話す。
九十九『おっと、説明は僕からしましょう。涼子、さっきも、言いましたが、
近未来の、僕の彼女です。
そして、涼子の机で、グループになってるのは、
赤坂明奈
皆木香
3人共に、明智第一中の出身との事、以上』
九十九は視線を戻すと、涼子の席に近づき、机に、ココアをおく。
九十九「はい、ホット」
涼子「わっ、早、サンキュー」
明奈「えー、いいなー。明奈分は?」
皆木「図々しいわね、明奈。その左手にある、もう一本の、ココア。私の為に、でしょ?渚君」
九十九「いや、違うし。」
『何故、そうなる?』
明奈「じゃあ、やっぱり、明奈の分だ。」
九十九「いや、僕のだ。」
皆木「恥ずかしがり屋さんね、渚君。ココアを渡し位じゃ、噂にもならない。
だから、本心に逆らわず、ココアを、私に渡しなさい。」
九十九『皆木香、くっ、キャラが濃すぎるだろ、嫌いな乗りではないが。
いや、むしろ好きだ。』
涼子「九十九君が、困ってるじゃない、二人とも、やめなよ。」
皆木「その申し出を、受理します。」
明奈「う〜、わかった、けど、なんで、そもそも、ナギーは、リョウちんの、
ココアを買いにいったの?」
九十九『ナギーは、辞めて欲しい。』
九十九「それは、神野さんの、下、」
*キーイン、九十九が片目を閉じる。世界の色が、反転する。
『それは、神野さんの、下着を見てしまった為で、やむなく、買いにいかされたのだ。』
涼子『わっわ、何で、言っちゃうかなぁ。なんか、ヤダ。』
明奈と皆木が、白けた視線を向ける。
明奈『ふーん。』
皆木『減点ですね。』
九十九「なんだ、嫌な感じだ、この道は、不安を感じる。
『貴方は、どう思います。』
「虫の知らせ、素直に従うべきか。気にせず、進むか?」
「先の、コーヒーか、ココアの選択に似ています。日常は、こんな積み重ねで、出来ている。」
「僕の選ぶのは。」
世界が戻る。
九十九「それは、神野さんの、下・・・」
涼子「わっわ、」
九十九は涼子の前に、手をだしストップのジェスチャー。
九十九「神野さんの、下を通ったとき、ベランダから、頼まれただけだ。
1階の渡り廊下を、歩いていた、僕を見つけた、神野さんは、中々の幸運だ。」
明奈「ナギーは、パシらされたんだ。」
九十九「いや、声が聞こえて、上をみたら、校舎に挟まれた、空の色と、桜の色が、中々でね、気付かせてくれた、お礼。」
明奈「お〜、ナギーがそこまで感動する景色、明奈も見たい。」
皆木「右に同意。」
涼子『九十九君、サンキュー。下着見られたって、なんか、恥ずかしいから。』
「キーン、コーン、カーン、コーン。」
予鈴の鐘が鳴る。
涼子「先生きちゃうね、休み時間に、皆で見に行こうよ。九十九君と同じ空をね。」
皆木「その申し出を、受理します。」
明奈「へへ、楽しみなのだ。」
九十九「その案内、引き受けよう。」
九十九『やば、皆木の口調が、写った。』
教室のドアが開き、担任きた。
担任「予鈴、鳴ってるぞ、席に着け。」
生徒達「ハーイ」
わらわらと、自席に戻る、生徒達。
九十九『教室の一番後ろ中央、僕の席から、空は見えにくいが、心は、空色です。』
『実は、空をみたのは、貴方のおかげです。貴方に、気付いたあの時です。』
『ありがとう。』
担任「渚、渚九十九、返事をしないか。」
九十九『おっと、いけない。では、また、貴方とは、次の機会に。』
九十九「ハイ、すみません。」
担任「五月病には、早いぞ、渚。」
九十九「まだ、四月ですね。」
生徒達の、笑い声が響いた。
明一中トリオも、笑っている。
⁇『・・・』
一人を除いては。