新しいわたしのつくりかた
ジャキン、ジャキン。
鋏を閉じる度、耳元で音がする。
パラ、パラ、パラ。
鋏を閉じる度、足元で音がする。
首と足が少しチクチクして
切る手を止めて、払い落とす。
目の前に置かれた鏡には
小さい頃から変わらない幼い顔が映っていて
さっきまで上半身を半分覆っていた黒い髪が
首が出る程まで短くなったの確認する。
家の一番広いところで、新聞紙を敷いて。
その上に座って、右手に鋏を握って。
腰まであった髪はもう要らない。
顔を隠していた髪はもう要らない。
新しいわたしになるから。
昨日卒業証書を受け取った。
学生だったわたしはもういない。
だから今日からわたしは大人のわたしになるの。
首に冷気が当たる。
耳は少し覗くくらいに。
前髪ももう少し、斜めに切り揃えて。
ほらもう、昨日とは違うわたし。
これから格好良いわたしになるの。
鏡に映っている顔は何一つ変わってはないけれど
少しだけ誇らしい気持ち。
下ばっかり見てた私はもういない。
鏡に向かって笑いかけてみる。
新しいわたしのはじまり。