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空のオト  作者: 悠々
一章
9/9

08 暁の鈴

よく分からないうちに、歌音は豪華なな箱を押し付けられ、馬車に連れ込まれた。

よくよく考えると、これは拉致ではなかろうか。再びジワジワ恐怖が来た。驚き過ぎやら何やらで、今迄恐怖感覚が麻痺していたらしい。


ーーー逃げれないかな・・・。


ここが何処かも分からないのだが。ガタゴトと乗り心地の悪い馬車の中で、閉められて見えない窓を見つめる。

そういえば、気づくとあの教会のような場所にいたのだ。思い出せるのは、突風と桜色に染まる視界。一瞬のうちに、見知らぬ場所に立っていた。


ーーー本当に異世界とかだったら、帰れないし。


いや、帰る必要は無い。

でも、とにかくこの先を考えることすら恐ろしい状況から逃げたい。確実に、現実だろうと空想だろうと、ろくでもないことに巻き込まれている。

窓すら閉じられた白い馬車は、これからの暗示のようで、不安になる。


「・・・そういえば、この箱はなんだろう」


凄く高そうな箱である。箱のくせに。


見た目に反してかなり軽い。試しに振ってみると、音がしなかった。


ーーー空っぽ?


うーん?と首を傾げて箱を眺めたが、透視能力は無いので分かるわけがない。


「開けて、いいのかな?」


鍵が掛かっている様子は無い。同乗者がいないのは好都合。あの王様(自称)が乗って来るのでは、と一時は警戒していたが、他の馬車に乗りこんでいくのを見た。

いつ開けるの?


ーーー今しかないよね。


えい、と思い切って開けて見た。

開けた途端に王様が飛び込む事も無く、至って静かに開いた。


「うわ、綺麗・・・」


入っていたのは、鈴だった。

しかし、見ただけで普通の鈴では無い事が分かる。

それは揺らめくような、冷たい朝の色。

雫のような形をしているのが、更に清涼な雰囲気を感じさせる。

ごちゃごちゃした飾りのある箱に入っているのが似つかわしくない、とてもシンプルで綺麗な鈴は、振ってみても音がしなかった。

つっかえたような音さえ鳴らず、チリとも言わない。


「何で鳴らないんだろう?」


垂れた首紐を指で抓んでブラブラと揺らしていると、突然馬車が止まった。


「到着、早!?」


わたわたと鈴を仕舞う。

目的地は、さっきの場所から目と鼻の先の距離であるようだった。


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