04 透徹した黄金の氷
タイトルに規則性を入れるのが楽しいです。
でも厨二臭が居た堪れない。
ーーーうわー、綺麗だなぁ。
天井全面と壁の四方の細長い窓は、ステンドグラスが嵌め込まれている。どれも円形で、真ん中が桃、そこから橙、黄、薄水という鮮やかなグラデーションが綺麗だ。外から透過した光がとても幻想的。
「巫女殿。余はこの国の王、アルフォンス・ノル・ヒューベルトだ。この度、巫女殿をお呼び申し上げた理由はお判りか?」
現実逃避タイム終了。
冷えた黄金の瞳は絶対見ないで、否定の意を表明するために首を振る。
ーーーこの人、国王(自称)なのか・・・。
もう驚けない。
歌音は首を振りながら、チラチラと白ローブの方々のひれ伏して、何かを呟き続ける異様な姿を気にしていた。いや、祈っているのだろうことは分かるのだが、気味の悪いこと仕方が無い。しかも、その祈っている対象が自分であることが落ち着かないし、意味不明だ。
目の前の御仁がいかに美顔を誇っていようと、歌音はそちらの方が気になってしょうがなかった。
「巫女殿」
「ひっ、はい・・・!」
訂正。この王様はとても恐ろしい存在感の持ち主である。
少しイラッとした空気が混じっただけで、ピンと背筋が伸びた。
「巫女殿は、神により古に落とされた祖の天の巫女の末裔であると聞き及んでいる。落とされた異世界で遠き血筋を護る為に。
故に、知らぬも当然か」
何言ってるのかさっぱり分からなかった。
ふむ、と頷いて納得した様子の王様が先程言ったことが、理解をぶっ飛び過ぎている。
巫女?神?異世界?
思わず胡乱な目をしてしまった。
何かのドッキリか、劇の台本か、厨二病患者か。建物が教会っぽいので、何かの宗教かもしれない。厨二病宗教に巻き込まれたのか・・・・・・。
「・・・信じていないな」
あっさりバレた。
不機嫌な色が覗いているのは怖いが、信じられるわけが無い、と呆れた顔で見てしまった。王様は怖いけど、すごく恐いけど、何か怖い故に残念だ。
だから、本音が口を突いて出てしまった。
「・・・信じられない、です。空想でしか無いものを、現実だ、と言い張っているだけにしか見えないので・・・。信じるのは、無理かと」
ーーーあ。
しまった。
ここは大人しく肯定しておけばよかったのに。それか、無言を貫いておけば。
いつもなら、そうしていたはず。
大分、自分が困惑しているのが分かる。普段の対応が出来ない程に。そして、苛立ちもある。理不尽で不可解な恐怖に対するそれは、今の今まで燻っていた。
歌音は内心で溜息を吐いた。
見上げると、観察するような瞳があった。驚いた様子は無い。まぁ、この反応は予想の範囲内であったのだろう。
しかし、さっきまでとは、多少なりとも歌音の評価は変わったらしい。興味無さ気な冷たい瞳に好奇心が混じった、ような気がする。どちらの方が怖く無いかで言うと、こちらの方が少し震えが軽くなったと思う。なら、もうなるようになれ。
暫くじっと見ていたと思う。そして、やっと口を開いた。
「これが現実か、空想か。そなたは判るのか?自分の今居る・・・それか、今迄居た世界が現実なのか」
「・・・・・・謎掛けのよう、ですね。
残念ながら、判りません。だって、どちらにしろ、自分にとって嫌な事とか都合の悪い事があれば、信じたく無いです」
「自分基準で、信じたく無い、と」
「夢なら覚めろ、そんな感じです」
「・・・」
「・・・」
妙な沈黙があった。白ローブ達の不気味な祈りは知らない。
まずかっただろうか。なるようになれ手法は。歌音はたらりと額から汗を流し、見守っていた。
王様(名前忘れた)は、益々じーっと観察してきていた。珍獣を観るような目で。
やがて、ポツリと零した。
「・・・巫女殿、お名前を聞かせて頂きたい」
「・・・?朝桜 歌音、です?」
名前を聞くのが遅い、とか若干ずれたことを考えた。
重苦しさからは抜け切った?
主人公の根っこは、多分こんな感じです。
次は、王様視点で書こうと思います。