見知らぬ処へ 5
ゲームもそこそこに定刻十分前に教室に着いた慧。周りを見るとグループでで固まっていた。彼らはこのクラスで二年過ごしているのだからグループが出来上がっているのは当然の事だ。先天的な超能力保持者は世間から隔離するために半ば強制的にこの学園に入れられるため幼い頃からココに居るという人も少なくは無いだろう。教室に入るなり奇異の視線を向けられる慧。しかしそんな事は毛ほども気にせず適当に空いてる席を見つけて座る。クラスの人数は大体四十人位か。
――今日の予定はホームルームだけか。現状から考えると今までの学校生活とあまり変わらなそうだ。魔術とかそういうオカルトがある以外は。やることも無いし携帯でも弄ってよう。
そう思い慧が携帯を弄っていると突然声をかけられた。
「なんだ君は。普通科の人間が迷い込んで来たのか? ここは君のような凡人がいていい場所じゃないんだぞ」
普通慧は何か言われた所で無視を決め込むのだが、初対面の人間にこんなに高慢で尊大な事を言う奴に興味が湧いたのか声のした方向を向いた。そこには金髪碧眼高身長の美男子と、その後ろにおろおろとした紺色の髪、桃色の瞳でおっとりとした雰囲気の女性がいた。髪型はツインテールだ。
「ちょ、ちょっと唯くんマズイってそんなこといっちゃ……」
「玲菜は黙っててくれないか」
「ご、ごめんなさい」
玲菜、と呼ばれた女は萎縮して黙ってしまった。
「俺、編入生なんだよ。なんか才能があるとかないとかいわれてな。五年制の学校いってて進路決まらなくてよ、路頭に迷ってたらなんかこの学校から編入案内の資料が届いたって訳よ」
「成る程、そういうことだったのか、すまないね。それにしても編入、か。狙って出来る事じゃあない。面白いな、君」
唯と呼ばれていた青年は何かに納得したように一人で頷いていた。
「ああ、僕は真野唯だ。横にいる女は千葉玲菜。何故か知らないが僕のパートナーだ。それで、君の名前は?」
「俺の名前は逢見慧。ま、よろしく」
「よろしくね、逢見くん」
玲菜はにっこりと微笑み手を振った。慧達の会話に興味があったのか教室の視線が彼に集中していた。「編入生だってよ」「裏口入学じゃないの?」なんという会話も伺えたが、慧は気にもとめない。普段からゲームをやっているお陰で煽り耐性は高い。
「そういえばパートナーって一体何?」
「特科の人はね実技の授業とかを二人一組で受けるの。その時の為のパートナーなの」
玲菜は笑顔で慧に説明した。いつも笑顔で愛想が良さそうだ。
「へー、そうなんだ。じゃ、俺のパートナーになっちまった奴は可哀想だ」
「僕たちは二年間色々学び経験してきた。だから余程の事がない限りフォローしきれるだろうよ。それに、教員も無能じゃあない。それが出来ない様なクズをパートナーに宛がいはしないだろう。まあ僕はそもそもパートナーなんて必要無いと思うんだがね」
己は、己だけは高みにいる。そういう雰囲気を唯は纏わせていた。無駄に自信に溢れ高慢。普通なら嫌われる事間違いなしな性格だろうが、実際のところどうなのだろうか。
――こいつかなり面白そうだな。なんかあれだ、理屈はないが面白そう。