見知らぬ処へ 4
中は社宅の一室の用な感じだった。一人暮らしをするには広い。慧は居間へと足を運ぶ。そこにはこたつと教科書ブラウン管テレビ等が置かれている。こたつは布団を外されて今はただのちゃぶ台と大差ないが冬は大活躍することだろう。畳に腰掛け周りを見る慧。
「やけに新しげだなこの部屋。壁が真っ白だししかも畳もまだ青くて匂いがする」
そういって慧はゴロンと大の字になって寝っ転がった。少しして慧は起き上がると荷物の整理を始めた。服や小説、漫画、CD等を床に積み上げパソコンをセットし、ゲーム機をブラウン管テレビに接続した。いつもならゲームを始めるところだが今日は疲れているのか慧は寝室へ行き押し入れから布団を出してそのまま寝てしまった。
朝五時。普段ならばまず目覚める事はない時間に慧は目覚めた。布団から出て顔を洗いに行く。そして気がつく、朝食が無いことに。財布の中を見ると千円札が三枚入っていた。
「コンビニでも行くか」
慧は地図を見てコンビニの位置を確認する。そこまで遠くは無い様だ。寝間着のポケットに財布と携帯電話を入れ朝食を買うため家を出た。勿論戸締りは忘れない。コンビニへは二分程で到着した。塩おにぎりとカップ麺それと紙パックのコーヒーを購入し、慧は店を出た。
「そういえばアイツこのコーヒーの事泥水っていってたな……」
通っていた学校の友人の事を思い出し呟いた。
部屋に戻った慧はキッチンでお湯を沸かし、カップ麺に注ぐとそれを持って寝床へ行き、布団の中に入る。彼の食事はダメ人間のそれだった。食事を終えた慧は今日の予定を確認した。本格的な授業は今日じゃまだ始まらないみたいだ。
「編入先が普通科じゃなくて特科って何なんだ? 普通科はきっとナチ式魔術とかを教えてるんだろうけど、特科? 特殊な魔術でも学ぶのか? 俺にそんな才能があるとは思えないぞ。しかも三学年からとか周りから大幅に遅れてるじゃん。あーあどうすればいいんだか」
自分の訳がわからない境遇に文句をいいながら慧は立ち上がり服を着替える。適当なジーンズにパーカーというありふれた服装。勿論ファッションセンスを磨く気なんて彼には無い。服に使う金など基本的には無く殆どゲームやCD、漫画、小説など趣味のモノへと費やされる。
「まだ六時前か。確か学校には九時に到着すればいいんだよな? 徒歩五分程度としてまだまだ余裕があるな」
慧は暇を潰すためにゲーム機の電源を入れた。そしてお気に入りのヘッドフォンを装着する。彼が普段からやっているのはFPS。音はとても重要だ。