見知らぬ処へ 3
白い観音びらきの戸をくぐり、中に入る。建物の中は外壁と同じく真っ白だった。ぱっと見光源は見当たらない。壁自体が発光しているのか。ここまで来ると病的だ。この白い空間の中で黒いローブを羽織っている彼女はどこか異質な雰囲気を纏っている。中に入ってすぐに、慧と彼女を待ち受けていたのは螺旋階段。それを彼女は一段ずつ登る。コツコツ、と床と靴底がぶつかる硬質な音が鳴り響く。ある程度階段を登ると一つの部屋が見えてきた。彼女はそこに入り、慧に入れと言わんばかりに手を振った。彼女に従い、慧は部屋に入る。部屋の中は今までとは対照的で明かり一つ無い暗闇だった。慧が部屋に入ったのを確認すると彼女は扉を閉じた。その瞬間部屋に明かりが降り注いだ。天井を見ると何やら星空が映しだされていた。まるでプラネタリウム。彼女は部屋にあった事務机まで歩み寄り椅子を引き出し座った。
「まずは一言。魔術学園エーリュシオンへようこそ。歓迎しますよ、逢見慧さん。私が学園長です。訳あって名前と顔は晒すことが出来ません。普段は代理人に仕事は任せていますからそう合うことは無いでしょう」
彼女の声色には感情が伺えず凡そ歓迎している様には見えない。もっとも、慧はそんなこと気にかけないが。
「貴方は大学の第三学年への編入となります。G区画の特科クラスへ通ってもらいます。寮の場所も同じくG区画。17棟の21号室です。荷物と教科書その他必要な物はもう送ってあります。何か、質問は?」
「どうして俺が国内でもトップクラスのこの学校に編入出来たんですか?」
これは慧が考えても考えても答えが出なかった疑問だ。
「才能があるんですよ、貴方には。いずれ解ります」
その言葉を聞いて慧は思考を巡らした。
――少なくとも俺は昔受けた適性検査では魔術や超能力への適正がゼロだ ったはずだ。最後に適性検査を受けたのがいつだったか記憶に無いが。と はいえ偉い人があるっていうんだからあるのか?
「授業は明日からです。くれぐれも初日から遅刻するようなことは無いようにお願いします。いいですね? それでは話は終わりです。頑張って下さい。
折角ですから部屋の前まで転移で送ってあげましょう。学校へ通う前に魔法の力の一端を味わうといいでしょう」
彼女の言葉が終わるとともに慧の足元に円が広がった。
――これが噂の魔法円か。
そして魔法円が発光すると、慧は彼の部屋の前に立っていた。
――そういえば転移だとか空間をどうこうする魔術っていうのはかなり高 等技術だったな。それをいとも簡単に発動した学園長はやっぱり凄いんだ ろうな。
ガチャリ、ドアノブを捻り戸を開けた。