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見知らぬ処へ 2

 船に乗っているのは慧と同年代ばかりというわけではなく、幅広い年齢層の人達がいた。小、中、高、大と全ての課程の教育機関を有しているので当然といえば当然。慧が辺りを見回すと、様々な髪色の人が視界に入ってきた。黒、茶、金を始めに青やら緑やら赤やらその他色々。

 ――髪色を魔術で変化させる事ができるっていうのは本当だったのか。

 それにしたって派手な色ばっかりで目が疲れる。

 調べ事や周りを見ることに飽きた慧は携帯電話にイヤホンを接続し、音楽を聴く事にした。聴く曲は何となく目に入ったベートーヴェンの交響曲九番。全楽章通して七十分。丁度いいだろう。トランクを脇に椅子に浅く腰掛けぼーっと空を眺めつつ音楽を聴くこと凡そ一時間。一番有名な合唱部分が近づき気分も意味もなく高揚していたので、慧は目立たないよう小さな声で音楽に合わせて歌う事にした。

「ふろいでー しぇーねー げったーふんけん とほたー あおす えりーじうむ ヴぃる べとりーてん ふぉいあとぅるんけん ひむりしぇ だいん はいりひとぅむ ……そういえばエリージウムってエーリュシオンのドイツ語じゃなかったか? じゃ俺も火のように酔いしれて胡散臭い楽園に足を踏み入れるとするか」

 慧が独り言を呟いた直後、船は停止。学園の船着場に到着したようだ。彼はイヤホンを外し携帯電話の音楽プレイヤーを停止、トランクの取っ手を引き伸ばして引きずった。

「確か船を降りてすぐに迎えの人が来てるらしいな」

 慧は船から降り、己の足がきちんとした大地を踏みしめている事を確認した後、迎えの人を探した。

「まさか、あの人か?」

身長は160cm位、性別不詳。何故なら黒いローブを羽織って顔を隠しているから。

 ――まさかな。今は二十一世紀だぜ? あんな格好した人が迎えに来るも んなのか? ……何となく目が合った気がする。あ、近づいてきてる。

 「逢見慧さん、ですか?」

とても透き通った女性の声。向こう五年間、碌でもない学校に通っていて普段から女性と係る事がなかった慧は声だけで彼女に惚れそうになっていた。

「は、はい。お、私が逢見慧です」

「学園長の所へ案内します。私について来て下さい」

「わかりました」

ローブの女性は踵を返し歩きはじめた。慧は彼女について行く。二人の間に会話は無く、あるのはトランクのローラーが地面に擦れる音だけ。

十分程歩いて、白くて大きな建物にたどり着いた。

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