見知らぬ処へ
厨二妄想全開。作中の怪しい知識やら外国語やらはあてにしないでください。
夜。その部屋に光源は無く、あるのは窓から差し込む星明り。部屋にいるのは一人の女性。彼女の顔には喜びと悲しみが同居していた。そして独り、ピアノで愛の夢を語る。
――1945年、ドイツ第三帝国。敗戦の気運が高まり、首都ベルリンが赤軍の波に蹂躙される直前、奇跡が起こる。超人の軍隊の登場。魔術などという科学的に解明不可能な現象を操る者達の働きによって赤軍の進行は大きく停滞した。十数名によって構成される超人の軍隊は世界に衝撃を与えた。しかし、圧倒的物量の前には限界があったのか、再びドイツは窮地に立たされ、間もなく総統が自害し敗戦となった。
戦後、魔術の技術を欲した戦勝国はナチスの研究者を囲い込み、爆発的に普及し今日に至る。
本来、魔術や奇跡などという超常現象とは万人が扱えるモノでは無かった。一部の知恵者や聖職者が長い研究の末にようやく使えるようになるもの。曰く神の力を借りる事。曰く精霊を使役する事。万や億、兆の解釈の仕方があるそれを彼らはあえて、共通の認識でもって無理やり定式化し、凡人でも扱える業とした。
魔術とは本来人と世界との対話で――
大学編入あるいは就職を思い切りしくじった青年、逢見 慧はインターネットで熱心に魔術について調べていた。というのも自分の将来について絶望していた彼の許へ国内最大級の魔術学園、エーリュシオンなる学園から編入案内が届いたからだ。行くあてもない彼は考えなしに編入を決め今に至る。
今、慧はエーリュシオンへ向かう最中だ。その学園は無人島を魔術の力で無理やり広くして作り上げられた所で、東京湾にぽつんと存在する。学園へ行くには船を使う。慧は移動の時間を有意義にするべく、今更になって魔術について検索していた。