最終決戦 5
船の中には子供たちがいた。
50人ほどだろう。
ニコニコとしながら真ににじり寄ってくる。
全員が何かを取り付けたベルトを胸に巻いていた。
爆弾を植え込まれているのだろうか?
この狭い船内で爆弾を使うほど愚かなのだろうか?
いや愚かだ。
人類でありながら人類を滅ぼした狂った集団なのだ。
そのくらいはするのだろう。
「えーっとお前ら。それガキが持ってちゃダメなもんな。没収!」
真が指をパチンと鳴らすと子供のベルトが砂になり崩れ落ちていく。
それを見て子供たちは呆然とした表情を浮かべた後いっせいに泣き出した。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! 叩かないで!」
「叩かねえよ。 俺はお前らを助けに来たんだ…… ほれ行くぞ」
頭をかきながら照れくさそうに真はそう言う。
すると泣き止んだ気丈な子が真の方を向いた。
「どこに行くの?」
「学校」
「敵じゃないの?」
「俺は学校の先生だ」
「……学校行ったことない」
「俺も高校まで行った事なかった。友達作れば結構面白いぞ」
「叩かない?」
「叩かない。食うけどなー!」
「うぐぅッ!」
「……冗談だ」
真は冗談を言いながら魔法で船内をスキャン。
強化された骨格を持つ乗員が数十名。
それと大量の無人兵器。
子供はいないかった。
真の目の前にいるのが地球最後の子供達だったのだ。
それをディーノたちを殺すために使い捨てにするつもりだったのだ。
真の中に沸々と怒りが込み上げる。
昔はわからなかった。
命を奪う罪深さを。
本当にそれを理解したのは子供が生まれたときだった。
初めての子供の顔を見たとき自分の罪深さを理解した。
すると急に胃が痛くなった。
胃痛を抱えたある日、血を吐いた。
ストレス性の潰瘍だったのだ。
結局一年ほど入退院を繰り返した。
苦い思い出である。
真は怒りを飲み込み通信をする。
魔法秘匿回線での通信。
科学だけのセンサーでは捉えることはできないだろう。
「真だ。子供たちを救助した。本部に通信してゲート空けてくれ」
「あいあいさー! くれぐれも緑の偉い人殴りに行っちゃだめですからね!」
「了解。さすがにしねーよ」
真は懐からゲートを出現させるためのマーカーポイント作成装置を出し、床に置いた。
先ほどの子供が興味深そうにそれを見ていた。
「今の誰?」
「先生の奥さん」
「先生は女の人じゃないの」
言われると思ってたが実際言われるとやはりへこむ。
それにしても戦隊スーツを着ているのになぜ女だと思ったのだろう?
「男です。俺は純正品の男です!」
「声が女の子ですよ。女の子先生?」
「あはは。女の子先生!」
「女の子先生!」
「おんなのこせんせー」
真は自分の子供たちにも生徒にも同じ事を言われていた。
世界が虐める……少しへこんだ。
「真ちゃん! ゲート開きます!」
マーカーの場所にゲートが出現。
正式な装置で作ったゲートではないので数分しか持たない。
「はーい整列!」
軍事訓練を受けていた子供たちは一糸乱れぬ動きで一列に並ぶ。
それを見て真は号令をかける。
「行進!」
ゲートになだれ込む子供たち。
ゲートをくぐるとそこには女性が待っていた。
「はじめまして。副理事長のグウェンドルです。こちらは国語のブリュンヒルデ先生です」
「ブリュンヒルデです。よろしくねー」
優しい顔の先生たち。
手を引かれて行く子供たちはもう誰も傷つけなくていいのだなと思った。




