とある商人の復讐劇
本来、ディーノこと出川は名もなきモブキャラの一人であった。
だが真に出会った人間が次々とバグを起こした中、ディーノもまた同じくバグを起こした。
その中でもディーノのバグは変わっていた。
そのバグは知性。
今まで学習の機会がなかったディーノ。
そんなディーノだが生まれて始めて努力をした。
今まで全く勉強をした事のない真に先輩面したかったのだ。
幸いなことに真の友達の頭のよさそうな面々は普通高校や大学生。
実業系の授業なら対抗する余地があった。
電気、ソフト・ハードウェア、プログラム。
その全てに全力を注いだ。
それが今まで眠っていたディーノの知性が花開いた瞬間だった。
本来ならディーノは19歳のときにチンピラとささいなことで口論になりナイフで刺されて死ぬ運命だった。
ところが真によって子分も含めて交友関係が激変し死亡フラグは掻き消えた。
これがディーノが生き残った直接の原因である。
そして真の友人たちが破滅する中、唯一正解を引いたのがディーノだった。
ディーノは真を親友だと思っていた。
真が死んだとき、真の友人たちが怒りを露にする中、ディーノだけは怒りを飲み込んだ。
まずディーノは復讐のためになにが必要なのかを考えた。
赤口は権力を欲し、桃井は武力を欲し、青山は謀略に走った。
だがディーノは違った。
ディーノが欲したのは金の力。
小さなソフトウェアメーカーをたちあげたディーノはヤンキー独特の不可解なチート能力、気合の力を持ってのし上がっていった。
ソフトウェア産業が斜陽を迎えたあとのことも考え、さまざまな企業を買収しくことも忘れない。
時には金の亡者、また時には詐欺師と陰口を叩かれながらも気にもせず金の力を求めていった。
ディーノの目的は一つ。
緑を破滅させること。
そのために影でありとあらゆる手段で赤口、桃井、青山へ支援をしていたのだ。
ディーノには陰口を気にしている暇などなかった。
そして事件は起こった。
赤口の暗殺事件を皮切りに本性をむき出しにした緑。
並行宇宙への航行理論青山ドライブの開発者である青山博士を研究所ごと抹殺。
反緑のNGO団体を運営していた桃井までも抹殺することに成功した。
そして緑は国を乗っ取り恐怖政治を敷いた。
それでもディーノは緑に反抗するそぶりすら見せなかった。
復讐のときが訪れるのをひたすら待ちながら。
ディーノは緑の生産部門に喰らいつき、彼らの技術を手に入れることに成功していた。
そしてディーノは計画を開始した。
緑の技術を幾重にも迂回して反緑の組織に提供。
同時に青山の遺産である異世界航行装置の開発に着手した。
ディーノの会社であるディーノインダストリー。
実はその幹部は赤口や桃井、青山の仲間で構成されていた。
ディーノは戸籍を偽造してまで彼らを仲間に引き入れたのだ。
そして何年も後に起こった世界と緑の全面戦争。
一切の躊躇なく、核などの破壊するためだけの兵器を使う緑。
人々は死に絶え人間の住める場所は失われていった。
それを見たディーノは決断した。
緑との闘争を諦め、生き残った人々を別の世界へ逃がすことを。
ディーノは自分を曲げてまで復讐を諦めた。
ディーノはやっとの思いで開発した異世界間航行船『USG青山』に載せられる限りの人間を収容し、世界を後にした。
乗員は世界中のあらゆる人種を集めた。
乗員構成は半分は子供、あとの半分は医師、技師や学者や研究者、そして子供を養育するための人員。
ディーノは船に搭乗するつもりはなかった。
この人類が滅びるところを眺めるつもりだったのだ。
だがそれは許されなかった。
ディーノの会社であるディーノインダストリーグループの幹部の全員一致でリーダーとして乗員に選ばれたのだ。
こうして人類統一連合は生まれた。
目指すは人間が住むことのできる環境の世界。
とりあえずは異世界航行で2年ほどかかる近くの世界を目指して。
便宜上人類の生き残りという意味を込めて人類統一連合を名乗り、ディーノはその世界に人類が居ることを祈り、全ての通信手段で交信を試みた。
それがロキとの決戦までに地球に起こった出来事だった。




