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第三章 最終話 言論テロ@青山公開処刑

「真ちゃん。これで終わりですかね?」


麗亜が仰向けになった真を覗き込む。


「いんや。もう二つ残ってるよ」


「一つは巨人ですよね。もう一つは」


「もうすぐ来るよ」


「まっことー!」


フェオドラとイングリッドが駆け足でやって来る。


「お兄ちゃん!なんかいまいち存在が空気だった私に罰を!腹パンしてから優しく抱きしめて欲しいなー!」


「まっことー!あのねー。今回の件で思ったんだ。やっぱ子供つくろ!子供いいわー!ね!」


アホどもがサラウンドでどうでもいい話を始める。


「お二人の事ですか?」


「違うよ。……あ、到着した」


大勢の馬の走る音が聞こえた。

馬に乗るのは亜人。

なぜかその手には猟銃を持っていた。


「何者!」


フェオドラが叫ぶ。


「青山さんだよ」


「え?」


「イングリッド!」


「はい!お兄ちゃん!」


「イングリッドの部下は無事だよ。青山さんが保護してくれてる」


「それが全知全能か?」


男の声がした。

馬に乗った男。

それはブルー。青山匠その人だった。


「そこまで便利じゃないよ。にしても青山さん。それ村田銃だろ?相変わらず無茶するね」


青山の配下の亜人達が持っているのは村田銃だった。

日本初の国産の小銃。

それを青山は開発したのだ。


「パキスタンの山奥でAK47作ってるくらいだ。これくらいは可能だろ?」


いや普通できないだろ。

部品のゴムリングに薬きょうに……まあいいや。

真には反論する気力はすでに無かった。


「ところでさ。青山さん。隣の女の子は?」


「ああ、俺のアシスタントをしてもらってる緑美咲だ」


そう言って青山は金髪の髪を適当に結んでいる少女を紹介する。


「真、俺と戦え」


「ああいいよー。今日はさすがに疲れたんで体治ってからでいいですか?」


「ああ、万全の状態でお前と戦いたい」


青山はそう言ってニヤッと笑い真に手を差し出す。

真はその手を取った。

ライバルという奇妙な縁で結ばれた二人の再会。

爽やかな空気が流れた。

そして事件は起こる。


「んー?匠。お前コイツの事めっちゃ大好きだろ?」


美咲の爆弾発言が青山を襲う。

緑美咲の言論テロ@青山公開処刑が始まろうとしていた。


「な、な、な、ななななな。ミサ!おまえ!」


顔を真っ赤にする青山。


「違う!違う!違う俺はヤツに勝たねばならんのだ!」


「ならもっと前に勝負つけられただろ?なんだかんだ言い分けして戦わないじゃんお前。だいたい匠が緑に挑んだのだってどう考えたって敵討……」


「あー!あー!あー!」


狼狽し必死になる青山。

それを見てゲスな笑いを浮かべながら美咲はトドメに入る。


「そもそも匠って仕事関係以外で友達いないだろ」


青山の精神にダメージ。


「だってさコイツ。アラサーの男なのにコミュニケーション能力全然無いじゃん」


青山の精神にクリティカルダメージ。


「今だってプライベートの話しできるの俺とニキータだけじゃね?コイツ心許した相手じゃないと仕事以外の話しないのな」


青山の精神を抉る致命的ダメージ。


「もうやめたげて!青山さんのMPはゼロよ!」


真が叫ぶ。


「今回だってさー。本当は金借りに来たんだぜ!素直にお願いすればいいのにさ!」


青山が倒れる。


「タオル!誰かタオル投げてー!」(真)


「あ、青山大丈夫か!」(フェオドラ)


「緑美咲。なんて恐ろしい子!」(麗亜)


「ソビエトには崩壊されても困るから言ってくれれば幾らでも援助するのに」(イングリッド)


「いやいやいやいや!青山はブルー時代には人気あったし!私も友達だと思ってるし」


フェオドラの反論。

友人が皆無なわけではない。


「いやだってコイツの目見ただろ!友達いないところに放り込まれたガキが、たまたまダチ見つけたときみたいなあの目!」


美咲の行動、それはただの嫉妬だった。

青山が自分に見せない顔をしているのが気に入らなかったのだ。

そして青山を追い込むことへの理由などない。

ムカついたのでイジワルしただけだ。


「青山さん。女性の人気もありましたよ。それがコミュ力皆無なんてことは……」


「ねーよ!女に不自由しないアラサー男があんなにド下手ってことねーだろ!人が初めてだと思って好き放題しやがって!……あッ!?」


青山はすでにピクリとも動かない。

顔を真っ赤にして下を向く美咲。


聞かなければ良かった。

それがその場にいた全員の共通認識だった。

恋人や夫婦間のあれやこれ。

それらは高度にプライベートな内容で、決して表に出してならないものだし、それは聞いてしまった瞬間負けなのだ。

そうだ聞かなかったことにしよう。

そう皆は心に決めた。


結論から言えば、このことは噂話にも後の歴史書にも残らなかった。

だが青山総書記の日記には一言だけおかしな記述がある。


「最近みんなが優しい。その優しさが辛い……」


全て台無しだった。

こうして美咲の言論テロによって青山と真の戦いはウヤムヤになった。

それでよかったのかもしれない。

誰も(肉体的に)傷つかなかったのだから。



学舎の一室で真の製作したラジオの試作品から音が流れ始める。


「CQ、CQ、こちらは人類統一連合。全ての通信可能な手段で呼びかけを行っている。我らは我らの世界を破壊した集団から逃亡した難民である。これより2年後に我らは貴君らの世界に到着する予定である。当方は技術その他の物資の提供をする用意がある。どうか我らの世界の生き残り、約1万名を受け入れて欲しい。お願いだ……」


真に影響された本来はモブであるはずのバグキャラ。

それが最後の奇跡を起こしたのである。

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