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真のお別れ会

その頃、日本

東京都のとある工業高校


「兄貴いいいいぃぃぃぃぃ!なんで死んじまったんじゃああああぁ!」


屈強な学ラン男たちが絶叫する。


工業高校の体育館。

そこでは真のお別れ会が催されていた。

存在感の薄いグリーンの死。これは世間一般では何の意味も持たない。

だが、真を知っている友人知人の反応は全く違っていた。

体育館には偏差値が低そうなさまざまな色の髪の毛の男子生徒。

身だしなみに気を使わないオタクたち。

それだけではなく、さまざまな人々が集まっていた。

体育館の壇上で学ランにシルクハットという奇妙な出で立ちの男がスピーチを始める。


「緑真君は、僕ら広域暴走族『ヘルズマジシャン』に萌えを……真の愛を教えてくれました。

盗んだバイクで走り出すしか能がなかった僕たちは彼との出会いで……うう(号泣)

就職も絶望的だった、ぼ、僕らはエロゲ会社をたちあげ……真人間に……」


生徒代表の追悼が終わり、中年の男がスピーチを始めた


「警察署署長の……です。

真君。君は世界を救ってくれた。

みんな感謝しているだろう。

だが、私は君がそれだけをなし得たわけではない事を知っている。

A区の暴走族や愚連隊。それはこの一年でそのほとんどが解散した。

君が彼らに愛のすばらしさを教えてくれたからだと私は知っている!

そう!それこそが……」


「愛ってエロゲだよな……」


レッドがあきれた声で言い放つ。


「まあ、いいんじゃない。みんな幸せそうだし……」


ブルーもあきれた声で答える。


結局、真の死体は見つからなかった。

壇上には棺があり、その中には泣きゲーが詰め込まれていた。

教師と生徒一同からの最後のプレゼントである。

そこに集まった全員が真の死を心から悼んでいた。


「……あいつのHDDと家の中……鬼畜陵辱系ばっかりだったよな……」


「キニスンナ」


部屋の後始末を頼まれたレッドとブルーもあきれながらも心のそこから真の死を悼んでいる。


「……ところで……桃井の状態はどうなんだ」


「お前が把握してるべきだろ婚約者殿」


「あれは……あくまでそういう『設定』だよ……俺は嫌われてるよ……口も聞いてもらえない……」


「……悪い。言い過ぎた。……今……病院に入院してるよ。元から危うい精神状態だったが……彼女は真の死に 耐えられ……なかった。」


「……そうか」


「これから『何があっても』徹底的に隠蔽されるよ。

幸せになれないヒロインはいてはならないんだ。

彼女の意思とは関係なく」


「……そうか」


真の死後、後味の悪い苦味が口の中にこびりついているような感覚をレッドは味わっていた。

そしてそれは永遠に続く……それが生き残った自分への罰なのだとレッドはそう理解していた。

ふと前を見る。遺影の真はレッドに微笑みかけている。今のレッドにはそれが何よりも辛かった。


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