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フェオドラ大暴走

「……うーん。荷電粒子砲さえ完成していれば貴様らなど皆殺しであったものを!」


サイファが残念そうに言う。


「お前らの要塞のビーム。あれがそうだから」


「だってあれ緑にもらったものだし!魔法を動力にして動くとこまでしかわからん!だから最後まで使わんかったぞ!」


「威張るな!」


二人が醜い言い争いをしていると次々に声が掛けられた。


「アンタら、いい加減にしなさい!大怪我したんでしょ!」


とグー姉。


「ホント、おバカですね。」


麗亜。


「おバカなとこが可愛いんじゃない!」


フェオドラ。


そこは病室。

包帯でぐるぐる巻きにされた男女。

それは真とサイファ。

荷電粒子砲発射の衝撃で吹き飛ばされた二人。

全身を地面に打ち付けて、保健室に運ばれていた。

打撲であった。

生物的な感染や自己免疫の異常という原因がある病気と違い、単純な外傷である怪我であれば、魔法である程度は治療可能なのだ。

とは言っても骨接ぎ以上の治療は難しいし、打撲の治療も熱が出たら冷やすという程度である。

不完全だったとしても荷電粒子砲の威力は凄まじかった。それでも二人が打撲ですんだ理由。

二人とも体重が軽かった。そのせいで吹き飛ばされただけですんだのだ。

そんな二人を見て麗亜が説教モードに入る。


「正直言って質量のある物質が発射されてたら私たちまで死んでましたよ!」


「うん?」


真が首をかしげる。


「某掲示板の光速のう○こっていう話です。物質は光速に近づくにつれて質量が増大するんです。つまり質量が無限になって重力崩壊。そしてブラックホール誕生というわけです」


「発射されたのがうん○なら、音速に達したら空気の摩擦で即効でなくなるんじゃね?最悪の場合でもプラズマ○んこになって即効で消えると思うけど……」


揚げ足を取るつもりはなかったのだが、つい疑問を口に出してしまった。

麗亜に睨まれ目をそらす。

サイファも他人のフリをする。

無言。気まずい雰囲気。

仕方なかったのだ。

心配してくれてそう言ったのはわかるのだが、確かに危なかった。それは認める。

だが、ツッコミどころが満載だったのだ。

無言の圧力に目をそらす真。

するとフェオドラと目が合った。

うれしそうな顔をしている。

そしてなぜかフェオドラは陶器製の取っ手がついた器を握っている。

ん陶器製の器?真は首をひねった。


「フェオドラさんや。なにそれ?」


「動けない亭主の下の世話は嫁の役目さ!」


尿瓶だった。

そしてフェオドラは尿瓶を持って笑顔でサムズアップ。

真はツッコミすら面倒くさくなった。

麗亜もやれやれといった様子である。

真と麗亜はアイコンタクトで話題を変えることにした。


「ところで麗亜、話があるんだって?」


「っちょッ!スルー!スルーなの!」


スルーである。


「ええ。ニケちゃんのことで……」


「しくしくしくしく……」


泣き出したフェオドラを華麗にスルーしながら話を続ける。

そして麗亜が神妙に語る。


「ニケちゃんは黄生さんの娘さんらしいんです……」


それを聞いたとき真はおろかフェオドラまでが固まってしまっていた。


「も、もしかして……私の娘?」


フェオドラがパクパクと口を動かしながら、どうにか言葉を搾り出す。


「え?レッドと黄生さんってそういう関係?」


真が聞く。他意はない。


「いや違うんです」


と慌てて麗亜が言ったが、フェオドラの声にかき消されてしまう。


「チガウ ノ ヨ!チガウ ノ ヨ! ウワキ ジャ ナイノ ヨ!」


動揺しながら慌てて否定するフェオドラ。


「マコト ヲ スキナコト ニ キヅク マエ ナノ ヨ! ちゃ、チャント ワカレタノ ヨ ! ドゲザ シタノ ヨ!」


「いや割とどうでもいいから」


「へぶッ!」


クリティカルヒット。

真は決して『フェオドラが何しようが興味ないからどうでもいいしー』という意味で言ったのではない。

『フェオドラが過去になにしようとも受け入れる』と言ったつもりだったのである。

そもそも桃井に嫌われていた原因の一つに異常なほどの女癖の悪さがある事すら知っているのだ。

そのことを伝えようと必死になって真が言う。


「いや、前世も今もモテるの知ってるから」


そう真が言うと、フェオドラは崩れ落ちた。

どうやらトドメだったらしい。

真が言いたかったのは「もてるんだから色々あるんだろうし別に気にしないよ」だったのだが、フェオドラにとっては「このクソビッチ!うぜー!」と聞こえたのだ。

なぜビッチと思われるのが嫌なのか?

フェオドラは赤口という男だった。

そして女漁りを続けたヤリチン野郎である。

そんな赤口はあとくされのないビッチとよく遊んだ。

そして思ったのだ。遊び以上の関係はありえないわと。

心の底では下に見ていたし、かなりバカにしてたのだ。

そんな男性時代にはかなり最低の部類に入る男だったフェオドラ。

ビッチと思われたら高確率で真に見捨てられると思ったのだ。

真っ白になったフェオドラ。

その脳内に悪魔的な考えがよぎる。


「ふふふふふふふふ」


レイプ目で笑い出すフェオドラ。真の背中に冷たい汗が流れる。

前世、赤口がキレた時のことが走馬灯のように真の脳内で再生されていく。

カツアゲの現場を見てキレた赤口がヤンキーをボコにしたら大量に仲間を呼ばれたときの光景。

タクシーの運転手にからんでいるチンピラを見てキレた赤口がそのチンピラをボコにしたら大量に仲間を呼ばれたときの光景。

最終的にそのチンピラの兄貴分の組事務所を襲撃、拳銃を持った大量のヤクザを呼(略)

さんざんロクでもない目に合わされたのだ。(しかも真が暴力で後始末させられた)

そしてフェオドラの目が見開かれる。


「……ないもん」


「え?」


「びっちじゃないもん!」


がばっと起きるフェオドラ。

その目には涙を溜めていた。


「いいもん……処女だって証明するもん!今から真犯すもん!サイファ!」


「な、なんじゃ」


「『真ってちょっと可愛いよね』って言ってたよね!交ざるなら今よ!麗亜!」


「ひゃ、ひゃい!」


「地平線のその先へ!」


サムズアップ。

そして、いきなり脱ぎだすフェオドラ。


「っちょ!グー姉!助けて」


「今回は真ちゃんも悪いから助けませんよー」


「っちょっ!っちょー!」


にじり寄り真に覆いかぶさるフェオドラ。

真が涙目になりながら助けを求める。

その時だった。

ガラガラガラとドアが開かれた。


「フィーちゃん。マコトはどんな具合だ?」


扉を開けた人物。それはレーガン。

そしてレーガンが見たもの。

半裸で真に覆いかぶさるフェオドラ。

様子見しながら交ざろうかどうか考えるサイファ。

顔を真っ赤にしながらガン見する麗亜。

三名の姿と真を助けないでニコニコとしながら放置するグー姉であった。

そんな光景を見てレーガンはキレた。


「おいコラ。ミドリマコトちょっと表出ろ!フェオドラ!」


「はいッ!」


「包囲が止んだらオヤジさんに報告するからな!サイファ!」


「お、おう!なんじゃ!」


「お父上のトルーマン教授が泣くぞ!お前も報告な。グー!」


「なぬ!私もですか!」


「お前が止めなくてどうする!お前もフェオドラの親父さんに報告だ!黒沢麗亜!」


「ひゃいッ!」


「お前も懲罰だ!後で追って知らせる!」


そう言うと真の襟を掴んで引きずっていく。


「っちょ!俺は悪くない!悪くない!悪くないのにー……」


「るせー!ちょっとこっち来い!」


ガチャーンと勢いよく引き戸が閉められる音がする。

廊下から真の悲鳴が聞こえたような気がした。

重い沈黙。


「あの……そう言えばニケさんは養子みたいですよ……」


「もっと早く言って欲しかったな……マジで」(フェオドラ)


「オヤジにばれたら生きていけないのじゃ……」(サイファ)


「私は悪くないはずなんですけど」(グー)


死屍累々であった。


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