「俺TUEEE!」 改め
「……さま……ご主人様……起きてください……」
ゆさゆさと揺すられている。
そのことに気づいた瞬間、緑の意識は一気に覚醒、飛び起きて自分を揺らしている何者かから距離をとる。
「誰だ!」
目の前には黒髪の少女がいた。
とんでもない美少女だ。
少女は一瞬呆けた表情を表情を浮かべると、ケタケタと笑いだした。
「やだなぁ何言ってるんですか! さっきまで一緒に戦ってたじゃないですか!」
このとき、真の戦士としての本能は目の前の少女が自己と同レベルかそれ以上の戦闘力を持つ存在であると感じていた。
深い警戒。
だが、それと同時に高校生活で培ったハイパーエロゲセンサーが何かのフラグの臭いを感じとっていた。
相手を観察する。
深窓の令嬢のような華奢な立ち姿。
なぜか野暮ったいセーラー服を着ているがそれすらも完璧に着こなしている。
そんな令嬢ぜんとした姿だが、なぜか一部の隙もない。
まるで生まれながらの戦闘マシーンのように感じられた。
少女はにっこり笑うと肩から掛けているスポーツバッグを目の前に差し出して指差した。
そのスポーツバッグには
「俺TUEEE!」
という文字が。
「おまえかーッ!」
「はいーっ♪」
ハイパーエロゲセンサーの方が正しかった。
生まれながらの戦闘マシーンというのも正しかったのだが。
「あ、ご主人様。オージン様からお手紙です」
「ん? なになに・・・」
手紙を開くとそこには
「れいぷ め もえるよね? だって やんでれだもの
おーじん
草食系戦士にヒロインとかいろいろ用意しといた
喜んで受けとれ」
「おどりゃああああああ! ゴラァ!」
ビリビリビリッー!
速攻で破り捨て地面に叩きつけ踏みにじる。
なぜかオージンのキャラは真をいらいらさせる。
これを近親憎悪という。
「ロボ子さん!」
「はい!ところでロボ子って私のことですか?」
「そうだ。 なんか適当に自分の名前考えて!」
「た●まよ○こ?」
「それ以外で!」
「み○ん?」
「それもダメ!」
「ヨ○かア○シア?」
「ぜったいダメ!つうかわざとだよね!」
「んー。良い名前ありませんねぇ・・・」
とわざとらしく言いながらチラチラと真を見ている。
名前をつけろという意味なのだろう。
――名前……鬼瓦権三郎? ミルコ・ゴッヅォーリ? つうかおっさんの名前しか思いつかねえ!……目の前の女は巨大化した怪人を素手で葬り去る戦闘兵器ぃ!まじめにやらんとめんどくさい事になるぅ!
ジョジョ立ちしながら考えをめぐらせる。
――我が日本のエロゲは世界一ぃぃぃぃぃぃッ!だが、同時にスターウォーズは世界のオタクの共通言語ォ!黒沢 → ダースベイダー 麗亜 → レイア姫に決めたぁッ! やや暴走族風だがな!
「……じゃあ、黒沢麗亜というのはどうだ?」
「……」
――マズイ! 外したか! だが、この真ォ! この程度の試練などエロゲ力で乗り越えて見せるわァッ!
「えへへー。うれしいなぁ。ありがとうございまーす!」
喜んでくれた。
真は学校が男子校だったのでメンバー以外の女性と話したことはあまりない。
正体がマップ兵器クラスのロボットだとしても女の子に喜んでもらえた。
真はこの世界に来て初めてオージンに感謝した。
そしてなぜか自分の顔が真っ赤になっているのに気がついた。




