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編入

次の日の朝。

講義が始まる前に麗亜と真が生徒たちに紹介される。


「真です。魔法使えませんけどよろしくお願いします」


「「アニキ!よろしくお願いしますッ!」」


男子生徒全員が力強く挨拶をする。

女子生徒たちはざわめく。


――美形……だけど可愛い系……王子様じゃなくてお姫さまだと……(女)

――やべえ……なにあのエロイ生物……(女)

――見た目は可愛いのに男子に慕われる……なにこのギャップ(女)

――レイアちゃんの本に出てた服装だ! やべ! 実際見たらエロイ!(女)

――マコトたんはぁはぁ(男)


「麗亜です。真ちゃんと同じで魔法とか使ったことありませんけどよろしくお願いします」


「「レイアちゃーん!!!」」


男子はそんなレイアを見て女子の反応などお構いなくざわめく。


――美少女だと……(男)

――なにあの服(セーラー服)……どうしてこんなにときめくんだ!(男)

――どうして……どうしてアニキの周りだけ美形率が異常に高いんだ……憎しみで世界を滅ぼせたらどんなに……(男)

――貧乳……はぁはぁ……(男)

――レイアたんはぁはぁ(女)


「なんか……人気者のようだな。 じゃあ、自己紹介の必要はないようだね!」


フェオドラはうれしそうに話を続ける。


「ところで諸君! 最初に言っておく。 そこの真は私のだからな! 手を出したら焼へぶッ!」


グー姉の助走をつけたナックルがフェオドラに打ち下ろされる。

縦に回転しながらガッシャーン!とドアを突き破って廊下に吹っ飛んでいくフェオドラ。

さも何もなかったように華麗にスルーしてグー姉は生徒たち、そして真に注意する。


「えーっと。 当校では恋愛は自由です。 組合の兄弟姉妹を悲しませない範囲で楽しんでください。

ただ、……真ちゃん。 二つのナッツが無事でいて欲しかったらいい加減なことしちゃだめですよ。

もし調子に乗ったら串刺しにしますからね二つとも」


きゅっ!

真は思わず内股になる。


――相変わらず怖えええー! だがそこがいい!(男)

――ああ……一度でいいから副学長にゴミを見るような目つきで罵られたい!(男)

――グーお姉さま……素敵(女)


「じゃあ、二人とも席に座ってくださーい」


「はーいって……グー姉じゃなくて副学園長先生! なんで学園長が真ちゃんの隣なんですか」


真の隣の席にはフェオドラが座っていた。

殴られて吹っ飛んだのに瞬間移動していた。


「それは私から説明しよう!

同級生! なんだろうこのトキメキワード!

雨降っちゃったな…傘貸してやるよ! ズギューン!なんかのイベント盛りだくさん!」


「寮と校舎は屋根の付いた通路で繋がってましたよ」


「更衣室を覗いたり! シャワー室を覗いたり! そんなドキドキイベント!」


「真ちゃん。覗きますか?」


「ナッツが惜しい。それに覗きは女子全員を敵に回すからやらない」


「甘酸っぱい青春うんん! 手をつないだり、金がないから公園デートしたり、親がいないときを見計らって家でエッチしたりとか!」


「親いないし(真)」


「あんた金ならいくらでもあるでしょ(グー)」


「そもそもここ寮やん(麗亜)」


「だりゃああああああッ! いいの! とにかく一緒にいーるーのー! そうじゃなきゃ仕事なんかしないんだから!」


そんなやり取りを見て、生徒たちは固まる。


「……え? 学園長ってそういうキャラなの?」


真面目で、明るくて、優しくて、たまに怖い。

そんなフェオドラのキャラが崩壊していく。

だが、生徒一同は納得した。

フェオドラは16歳の少女なのだ。

それを小さい頃から大人の中で権力闘争に明け暮れ抑圧されて育ってきたのだ。

(実際は、権力闘争を仕掛けたのはフェオドラだし、本人は泥仕合が大好きなのだが)

生き別れの思い人が帰ってきたのだ。

少しくらい羽目をはずしてもいいじゃないか、と。


「学園長! はい。 自己紹介!」


男子生徒がはやし立てる。


「同級生なんだから、フィーでいいよ。 えっと……フェオドラです。学園長やってます。

基礎科学の講座のときは先生です。よろしくね。」


そう言って楽しそうに笑う。

グー姉は仕方ないなという顔をしていた。


「はーい。授業始まりますよー」


人のよさそうな顔をした女性の教師が教室に入ってくる。


「副学園長。もうよろしいですか?」


「はい。メイ先生。そこの三人が編入生です」


「三人?二人じゃなくてですか?」


「やっほーメイちゃん!」


「ってフィー! なんであんたが生徒やってるのよ!」


「愛ゆえに」


サムズアップ。


「わけわかんないわよ! ちょっとグー! 副学園長!」


「とりあえず……そのまま受け入れてやってください。私からもお願いします」


「なんなのよ……まあ、いいわ」


「じゃあ、お願いします」


「はーい」


こうして初日の授業が始まった。

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