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青山4

青山は元レッドの父親と悪の組織の女幹部だった母との間に生まれた。

そんな彼は決して幸せな少年時代を送ったわけではなかった。

なぜなら、緑の死に様を見た父親は壊れてしまっていた。

今ならPTSDと呼ばれる症状なのだろう。

青山の父は何よりも自分が生き残ってしまったことで自分を責め続けていた。

何を見たのか? 仲間の緑になにがあったのか?

一切を話さない父を彼は不気味に思っていた。

そして中学生になったある日、父は青山を見て呟いた。


「ああ……お前は……俺の息子は……なぜあの女……双葉に似てしまったんだ……

俺は……どこにも逃げ場がないのか……すまない……すまない双葉……俺はなんて酷いことを……」


錯乱していたのだろう。

意味など伝わらなかった。

だが、青山の父にはその言葉は大きな意味があったのだろう。

次の日、彼はその言葉を残して首を吊った。

葬式で気丈に振舞う母を見て、開放されたと心の底では思っている自分は人でなしというものだと覚った。

葬式後、母に渡されたノート。

それは手記だった。

歴代の緑の死亡記録。

資料にはブルー研究所の文字があった。

復讐をすれば人でなしではなくなるのではないか。

いつか、全てに復讐すれば悲しむことができるのではないか。

その思いが青山の人生を決定付けた。

父の死後、青山は母の親戚のいる地方都市へ引っ越すことになった。

新しい土地での生活は自分まで新しくなったように思えた。

青山はその土地への愛着を持っていた。

そのせいか、その地方に伝わる棒術の宗家を母に紹介されたときは、心の底から喜んだ。

十数年で青山は土地の神に愛されたかのように誰が見ても恐ろしいほどの上達ぶりを見せた。


『歴代最強のブルー』と呼ばれるほどに。



青山の学んだ武術は棒術。

その恐ろしさはナイフや素手並みの自由な動きができ。

刃物とは違い、素早く途切れない連続攻撃が可能であること。

ありとあらゆる間合いに対応し、投げ技まであること。

実際、金属製の武器の大量生産ができるようになるまでは、戦場でも使われたほどである。

緑の少年はその情報を事前に説明されていた。

気をつけろと言われていた。

そのことを理解していたこそ、青山の手の内を知るために挑発をすることにした。

できれば挑発に乗って激昂して襲い掛かってきて欲しかったのだ。


「いやあ、俺ってラッキー! あの青山さんと戦えるんだぁーッ! もう最ッ高ッ!

このクソども全然歯ごたえなくて俺楽しくなかったんよ!」


少年は挑発するかのようにゲラゲラ笑いながら、研究員の死体を蹴飛ばす。

青山はそんな少年を無視するかのように無言でいる。

挑発が失敗に終わったのを理解するや否や、少年はナイフを順手に構え直し瞬時に攻撃を仕掛けてくる。

少年の頭を狙って頭の上から横薙ぎが見えた。

少年は上体を前に屈め槍の下をくぐる。

ダッキング。


――そのまま足を切り裂いてやるか!


ダッキングしたまま少年は青山の足を狙いナイフを振りかぶる。

少年の首にざわっとした感覚が走った。

まずい。攻撃が来る。

槍の穂先が見えた。

槍の下からの掬い上げ。

身体を捻ってかわす。

槍の穂先は少年の身体をかすめ上方へ流れていく。

そのまま、不自然な体勢からナイフを斬り上ようとする。

超接近戦でのナイフのスピードに勝てるはずがない。

そう確信した。

その瞬間、少年は自分に恐ろしい勢いで突進してくる槍の穂先を見た。

死を感じた。

反射的に身体を捻って体を回転させながら横に飛ぶ。

頭の横を槍が高速で突き抜ける。


「ショートレンジでそのスピードかよ! お前ホントに人間かよ!」


「崩れた体勢からバタフライツイスト決める君も大概だと思うよ」


青山は笑っていた。獰猛な笑みを浮かべて。

少年は微笑み返しながら、持っていたナイフを刃の部分に持ち替え投擲。

青山は、顔に投げられたナイフを首を傾けるだけでかわし、ノーモーションで加速し間合いを詰める。

だが、少年には全てが予想の範疇だった。

少年には奥の手があった。

懐から拳銃のようなものを取り出す。

ヴェルヴェット・リヴォルヴァー。

二世代前の戦隊装備のビームガン。

一分間に600発以上の連射ができ、そのビームは着弾後爆発する。

至近距離で使えば、量産型のスーツを装備していても死体すらも残らないだろう。


「死ねええええええッ!!!」


引き金を引いた。

だが、何も起こらない。

槍の穂先が掠めたのを見た。

一瞬でバラバラになる銃。

そこまでは見えた。


トンッ!


少年は棒のようなものをぶつけられたようなように感じた。

下を見ると槍の穂先が自分の胸に突き刺さっていた。

全く見えなかった。

おかしい。

近いの間合いのはずなのだ。

近距離で長物がそんなに速いわけがない。

だが現実では、槍は着ていたアーマーを貫通しその先の胸に刺さっていた。

幸いなことに骨の代わりに入っている金属制の骨格に阻まれ、致命傷を免れている。

いや違う。

退役したブルーの研究者が生体改造を知らないわけがない。

わざとだ。

そう、青山は金属に阻まれるのを知りながらわざと胸を狙ったのだ。

それも殺さないように手加減して。


「ふざけるなあああああああ!」


怒りがわく。

駆け引きではない生の感情。

懐から予備のナイフを抜き、胸に刺さった槍を片手で掴み、槍を切断するために槍めがて下からナイフを振り上げようとした。


ドサッ。


その瞬間、少年は尻餅をついた自分に気がついた。

投げ技ですらない。

掴んだ槍を下に降ろされただけだ。

だが、力んでいた手は槍を離すことができず、掴んでいた槍につられてそのまま倒されてしまった。

そのことに気づいた瞬間、今度は顎に蹴りが入れられていた。

仰向けになって倒れた緑は、自身の平衡感覚がおかしくなっていることに気がついた。

足に力が入らず、全てがぐちゃぐちゃになったような感覚。

脳震盪を起こしたのだ。


「てめえ! なぜとどめをささねえ! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」


怒りをあらわにするその姿を見て青山はケタケタと笑い出した。


「違うだろ……違うだろ……違うだろおおおおおッ! 真オオォォォォ!

そうじゃない! そうじゃないだろおおお!」


青山の目には狂気が浮かんでいた。


「こんな生ぬるい手なんか使わないだろ!

どうした、カランビットはどうした! 暗器は使わないのか!

微塵(捕獲用の投擲武器)を投げてみろ!

常に隠してる分銅は!

いやお前は素手が一番恐ろしい……」


「お、俺は真じゃない! 何言ってやがる!」


「真オッ! お前だけなんだよ…… 俺が本気で戦えるのは……

俺が本気で戦えるほどの使い手は!」


ゴッっと言う音が少年の中で響いた。

槍の地面に立てる部分、石突きで喉を突かれたのだ。

息ができなくなる。


「真ぉ……俺は……俺は……お前がいなくなってしまって何をしていいかわからなくなったんだ……」


青山は泣いていた。

後二回で二章は終わりです。


失敗した部分直しました。

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