ヴァルホル
意識が覚醒する。
そこは宇宙ではなかった。
そう、そこは西洋の城の一室のような……
真を片目に眼帯をした大男が覗きこんでいた。
――気配を察知できなかった……だと……なんだこいつは……生き物として格が違う。
飛び起きることも距離をとることもできなかった……
最高レベルの警戒をする真を見て、大男は心底うれしそうに笑う。
「おお、起きたか!勇者よ!」
「なにそのロープレ展開!」
即座に突っ込みを入れる。
「ええっとぉ。説明が必要かの?
我はオージン!戦と死の神だ!
ここはヴァルホル。勇敢なる戦士をの魂が行き着く館だ。
貴様はヴァルキュリアに勇者として選ばれた! おめでとう! すっごく久しぶりで超わくわくしたぞ!
ラグナロクまで饗宴と戦いに明け暮れようぞ!」
「北欧神話かよ! つうかさんざん戦ったのにまた戦いですと!」
「うむ!戦死しても翌日には生き返るぞ! 超お得!」
「もう戦いはお腹いっぱいだよぉ! つか、うちの国では、修羅道って言って、そういうの地獄じゃないけど準地獄扱いなんですけど……」
「えーっ! なにその非戦主義! じゃあ酒のみ放題!」
「九条バーリーッ!って学生街の居酒屋かよ! 俺、酒飲めないんだよ!」
※最底辺工業高校の体育祭では、なぜか生徒がみんなビール缶を片手に野次りながら観戦するのが正当スタイル
「うっわ!久しぶりに生きのいい戦士が入荷したかと思えば、情けないほどの草食系……もう!じゃあ、ほしいもんなんかないの!」
「健康な身体!百年使えるやつ!」
「まあ、それはあげるけどさ。なんか他にないの?武器とか酒とか女とか……」
「うーん。地方上級の公務員の資格とか六億円のサッカークジの当たりとか……電気工事士……二種は取ったし。……電験三種……は自分でとればいいや。 危険物……は乙四でいいし。あー、あれだ不動産鑑定士!……あーあと参議院議員を二期以上とか……」
「ぬおおおおお! もうやだああああ!
なんなの! この草食系! 戦士が欲しいものって言ったら血と筋肉と戦いとヤンデレだろ! あとバイクとメタル!」
「おっさんとは少しだけ気が合いそうだ。 だがヤンデレ以外は全て断る!」
「……うむ! 良くわかった! よくわかったということにする!
つまり、貴様は真の戦いに赴きたいと言うことだな! うむ戦士の鑑なり! 古式ゆかしい戦士のいる世界に転生してやろう!」
「っちょ! おっさん! 人のはなし聞いてないだろ! 」
「るせーっ! 送るっつったら送るんだよ! はい! この話終わり!」
「てめえゴラァッ!進路で子供と揉めたときの父親か! せめて国連機関のフランチャイズの広告塔になって講演会一回百万円で……」
「あーあーあーッ! きーこーえーなーいー! はいっ!転送ッ!」
突然、真の意識が遠くなる。
絶対このおっさんをぶっ殺しにここに戻ってこよう……と思いながら真の意識は遥か彼方へと消え去った。