表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/95

ブルー2

研究所の正門。

門から出た11人のブルー達が考えていた中でも最悪の事態が発生していた。

それは最悪の事態。

多数の緑に囲まれた状況。

だが、数は問題ではなかった。

問題は緑の刺客。

それらは小学生以下にしか見えない子供たちだった。

子供たちが剣や斧や銃を手にしている。

ヒーローとしての誇りを持つものが子供相手に戦えるはずがない。

攻撃なんてできるはずがない。

それを狙った戦術だった。


「理事長……無力化しましょう」


一人がそう提案した。

精神的に無難な選択。


「緑には……反吐が出るね……

仕方がない!殺さないように無力化しよう!」


「了解! うおおおおおおおおぉッ!」


血気盛んな一人が子供たちに突っ込んで行った。

その時、青山は子供たちを見ていた。

理事長の指示に論理以外の部分で疑問を感じたからだ。

その論理以外の部分を論理化するために細かく彼らを観察して思考を巡らせる。



幼すぎて改造手術も整形手術もしていないのだろう。

子供らしい細い体。

そこにいるのは誰一人として同じ顔をしていない。

個人を特定できる顔。

様々な人種。

様々な顔。

だが、共通するものもある。

それが瞳。いやその瞳の奥にあるもの。


無。


心のない機械として育てられた彼らの目の奥にあるのは無。

仲間と出会う前の真と同じ目をした子供たち。

それを見て、青山の背筋にぞわっとした気落ちの悪い感触が走った。


「マズイッ! みんな逃げろォッ!」


青山は理解したのだ。

緑の狙いを。

そうだ緑は、命に価値があるなんて思っていない。

そんな概念が存在することなんて知らない。

貼り付いたような笑顔で突進するブルーの一人に向かって手を差し出す子供。

そして掛け声を掛ける。


「せーのッ!」


閃光。

その時、突進していったブルーは見た。

子供の体が内側から吹き飛んでいくのを。

そしてそれが彼の見た最後の映像だった。

子供の自爆。

突っ込んでいったブルーの肉片と子供の肉片が宙を舞う。

戦隊装備など全く意味はなかった。


「銃を使え!」


誰かが叫んだ。

パニックになった青山以外の10人がその声に釣られて銃を抜いた。

その後は地獄のようだった。

たった10分にも満たない間の出来事。

次々と破裂していく子供たち。

それに巻き込まれないようにやむなく射殺するブルー達。

彼らは歓喜とも悲鳴とも取れるような奇妙な声を上げる。

青山が後ろから殴り昏倒させた緑の子供。

無力化されたそれに銃弾を打ち込む仲間。

理性はどこかに消え、狂気が場を支配していた。

青たちはそこまでしても次々に爆発に巻き込まれていく。

あっという間にブルーの生き残りは残り五人となってしまった。

銃で撃たれても吹き飛んだ仲間を見ても、子供たちは躊躇することもなく無表情で自爆するために迫ってくる。

圧倒的な絶望感。

だが、その状況を変える通信がもたらされる。


「全員の脱出が完了しました! 今、国道沿いに……ザザッ……」


生き残った五人は安堵した。

仲間は無事脱出できたのだ。


「理事長! 俺たちも脱出しましょう!」


「うんそうだね。 僕が殿しんがりになる! 青山君みんなを先導して!」


「理事長! あなたも逃げてください!」


「……みんなを頼む」


理事長はそう言うや否や子供たちに突っ込んでいった。

青山には止めることはできなかった。


「みんな! 撤退だ!」


青山と生き残りのブルー達は施設に駆け出す。

理事長の方を振り返りもせずに。

研究所のドアを閉めたとき、爆発音と振動がした。

青山たちは研究所の地下を経由して搬入口を目指す。

そこには自分たちの分の武装したトレーラーがあるはずだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ