ブルー1
ブルー研究所。
そこには、歴代のブルー達が己の戦隊装備を装着し完全武装して整列していた。
その目の前の壇上に男がいた。
60歳ほどであろうか。
それはブルー研究所の理事長だった。
代表は静かな声でそこにいた全員に語りかける。
「今から、緑がここを襲撃するという知らせを受けた。
今のうちにみんな避難しなさい。
私が最後まで戦って時間を稼ぐ」
「理事長! あんたが犠牲になるなんておかしいだろ!
あんたは世の中に必要な人間じゃないか!
逃げろよ! 逃げてくれよ!」
そう言う研究所の仲間を見て、理事長は悲しそうな顔をした。
「僕らの仲間はねえ……
赤は大臣やってるし、黄色や桃色はバカみたいなテレビ番組に出てさ。
最初から緑なんていなかったように振舞ってるよ。ヘラヘラ笑いながらね。
自分たちのために緑君が酷い死に方をしたっていうのにね。
僕は思うんだ。
僕らの戦いには名誉なんてなかったんだ。
僕らはねえ、僕らの戦隊は最低の卑怯者だったんだよ。
僕はねえ……もう耐えられないんだ。
僕らの仲間を殺した連中……いや僕も共犯か……
そんな連中に手を貸すのはもううんざりなんだよ……
死ぬのは怖いけどね、卑怯者のままで死ぬのはもっと怖いんだ」
そう言った理事長は腕につけた携帯端末を操作する。
理事長の身体を光が包み、鎧のようなものを纏った姿になる。
変身だった。
そこにいたのは槍を持った青い戦士。
デザインは古く何十年も前の戦隊のようだった。
だが、その戦闘力は現代の自衛隊を凌ぐほどであった。
なぜ、何十年も前に戦いを終えた彼が変身できたのか?
ブルー研究所は戦隊装備の開発も行っている。
そこから生まれた、まだ発表してない汎用装備。
赤口が訴えていた警察や自衛隊に配るための装備。
それをブルー研究所は、記者会見のすぐ後に研究員である研究者全員に配布していた。
機能性だけを追求した結果デザインは後回しだったのだ。
老戦士が静かに宣言する。
「みんなはさっさと逃げるんだ。僕に遠慮することはないよ。
これは僕の戦いだ。僕の最後の戦いだ。誰にも邪魔させないよ」
だが、老戦士だけを死地に赴かせることはなかった。
「理事長酷いですよ! これは俺の戦いでもあるんですよ!」
そう言うと青山は変身し、理事長の隣に立つ。
その姿は理事長と同じく槍を持った青い戦士だった。
「りーじちょー! 俺もお供しますよ!」
「ヤツラには一矢報いないとな……」
「最後までブルーとして生きられるなんて幸せだなぁ!」
口々に好きなことを言いながら、全部で10人の青い戦士が理事長のそばに並ぶ。
「よしッ! 行くよ。
他のみんなは地下にトレーラーを用意してあるからそれで裏から逃げてくれ」
そう命じて理事長は表門に向かう。
その後に続く10人の青。
人生の最終決戦に赴く青。
そんな仲間の背中を見ながら逃げることを選択した青。
逃げる青たちのすまなそうな視線を背中に受けながら、理事長、それに青山たち10人は最後の戦いへ赴こうとしていた。




