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特撮戦隊最後の戦い 後編

敵の要塞の主砲から発射されたビームがロボに近づいていた。

レバー操作でかわす。

紙一重でかわしたと思った瞬間。

ビーム自体が爆発した。

真の想定よりもはるかに強い衝撃がロボを襲う。


「警告! 警告! 左腕の装甲が破損!」


まずいと真は思った。

相手が思ったよりも強力な武装だったのだ。

冷や汗が流れる。

近寄らなければならない。

だが、強力な主砲により近づくことができない。

いっそのこと、密着した状態よりは威力が落ちるが、

近づけるところまで近づいてワープドライブを開放し自爆しようと考えた。

その時だった。

モニターにデスマーチ三世の姿が浮かび上がる。


「特撮戦隊よ! これは録画である。 余の最後のメッセージを送る!」


真はそれを凝視した。

要塞に動きはない。

メッセージを聞けということなのだろうか。


「余の要塞は今の民間の技術水準を超えている。

おかしいと思ったことだろう。

そのことの真相を打ち明ける!

我々の技術。それは緑に提供されたものだ!」


知っている。

全て知っていた。

今やこの世にはいない宇宙皇帝は続けた。


「余は緑の手のひらで踊らされていたのだ!

それに気づいたときには遅かった! 遅かったのだ!

そこで、余は自らの矜持のために貴様らとの最後の勝負を申し出る!

貴様ら緑との最後の勝負だ!

さあ、はじめようぞ!」


「警告! 警告! ロックオンされました!」


真は推進装置を最大にして突っ込んだ。

ビームとミサイルの波状攻撃。

しかし、今度はビームが爆発するのがわかっている。

ミサイルはただの足止めだ。

真は躊躇せずに突っ込んで行った。

爆風と衝撃の中、きりもみしながら攻撃の穴を通って要塞に近づいていく。

要塞の主砲へ近接したときは戦隊ロボ『俺TUEEE!』も真もボロボロになっていた。

ゼロ距離になった砲身。

真はブレードを抜き砲身を切り裂き、ロボのビーム砲でミサイルポッドを破壊していく。


真空の宇宙。爆発の光だけが見える。

真には破壊音が響き渡ったかのように思えた。


要塞を無力化。

地球に落ちない程度の距離もある。

あとは爆破を残すのみ。


ふとモニタに通信要請が入っているのに気がついた。

通信をオンにするとレッドの声が聞こえてくる。


「おい! 真!なんで俺たちをおいてきやがったんだ!」


「君らの命を守るためだよ……手に負えない案件は緑の仕事だ。この作戦では君らを無傷で返すことはできないと判断した」


「このバカ野郎! 何をするつもりだ!」


「自爆シークエンスを起動。要塞を破壊する」


絶句。


「レッドはヒーローの年齢制限の特例で次の参院選に出馬するよね。

ブルーはヒーロー活動が認められて研究に無制限の予算がつくって喜んでた。

イエローは次の大河ドラマのヒロインが決まった。

ピンクは……なんでアイドルの道を蹴って普通の高校生やろうとしてるんだろうね……

みんな未来があるよ……俺にはない未来がね……」


「お前だって!お前だって未来が……」


「知っているだろ……緑の寿命。

緑に同情してはなりません。あれはそう作られた人形です。

最初に説明受けたよな?

まあその分、楽しくて濃い一生を過ごしたけどな!にゃはははは!」


緑の一族は極端に寿命が短い。

生まれたときからこの一年のためだけに薬物や生体改造を何度も繰り返す。

ほとんどの緑は引退後三年以内に死亡する。

真の身体も例外ではなく、もはや生身の部分は限界を迎えていた。


「お、俺!お前らを……緑が死ななくてもいい世の中を作ってみせる!」


「……ありがとうリーダー」


通信をオンにしたまま真は作戦を開始した。

リミッターを解除。

ワープドライブの出力を最大にする。

暴走するワープドライブ。

これを爆発させる。

その作業の最中、真はどうでもいいつぶやきをした。


「あーあ……そういやあのゲームやってなかったな……」


グリーンに任命されて、独り暮らしになった真はゲームにはまっていた。

高校には女子生徒がいなかった。いわゆる男子校。

底辺工業高校……おバカに残された最後のフロンティア。

教師とのエロゲの貸し借り。なぜかチャンプ○ードとム○が置かれた図書館。

脳みそより拳を使うことが多い、まさにオタとヤンキーによる野生の王国。

そこでヤンキーになれなかったものはエロゲに覚醒する!

真もエロゲエリートとして授業よりも多くエロゲに囲まれた生活をしてきたのだ!

主に睡眠時間を削って。


――エロいものからエロいものまでさんざんヤリ尽くした。エアー恋愛最高!我が青春に一遍の悔いなしッ!クワッ!


そこで真はあることに気づく。とても重要なことだ。


「ぬおおおおおおッ!リーダー!リーダー!緊急だ!」


「なんだなんだ!どうした真!」


「HDD処分してくれ!あと押入れとベッドの下! 頼む! 頼むぅ! 頼むでござる! 『自爆シークエンスが開始されました』たの……ござ……ザザッ……HDDぃッ!…… 『通信が切断されました』」


――まあ、たぶん大丈夫だろ……オンラインストレージの大量のエロ動画以外は……


『自爆まであと10秒』


「おつかれーっす。悪かったな……つきあわせて……」


ロボに礼を言う。返事など帰ってこないことを知っていながら。

だが、なぜか『俺TUEEE!』が愛おしく感じられたのだ。


『ご主人様の最後の戦いに共に参加できたたことを光栄に思います』


「え?」


『爆破します』



どこまでも広い宇宙の片隅で真は星になった。

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