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ド変態の告白

ホモ注意

「……で、なぜこんなことした……?」


「……なんのこと?」


真はフェオドラ(赤口)の胸倉を掴む。

麗亜はそれを見て、勝ち誇った顔でフェオドラの髪から手を離す。


「チューッだ! チューッだ! ベロチューッだあぁ!」


「あー。なんか可愛かったから……つい……てへぺろ」


「あーてへぺろね……じゃねえ!ごるゥあああああああぁッ!」


絶叫。心の底からの叫び。すでに真は涙目だった。


「泣き顔の男の娘……ハァハァ……」


――変態だあぁッ!レッドが壊れた!


青ざめる真。

横で麗亜がボキボキと指を鳴らす。

こめかみに血管が浮き出ている。


「久しぶりにキ……」


「まあ、それは冗談として……」


麗亜の言葉を遮ってフェオドラ(赤口)は語りだす。


「おいコラァ! シカトしてんじゃねえッ!」


キレてヤンキーになる麗亜を無視してそのまま続ける。


「そうだねえ……あれは……」



赤口は人に言えない悩みを抱えていた。

それは、本当の意味で異性に興味がない。

魂の根の部分で異性を欲したことがない……ということであった。


女性を抱いたことはある。異性に不思議ともてる。

だが、満たされなかった。

興奮はするような気はする。……いや、ただ単に外部的な刺激に反応しているだけなのかもしれない。


なぜなら、自慰や夢精をしたことがなかった。

しようと努力をした。

エロ本、AV、ネット、小説、思春期から同年代が普通、欲しがるものを試した。


だが、無駄だった。


エロスというものを感じない。

ムラムラとしない。

女性も試した。試したというのは表現上の事ではない。

本当に試しただけだった。

結果、外部的刺激で使えることはわかった。

だが、ただそれだけだった。

なんの興味もわかなかった。


最終的に初めての相手には、ゴミを見るような目で見られ別れることになった。

今思うと自分は人でなしだったのだろう。何の感情もわかなかった。

それよりも、もう一つの可能性を恐れていたのだ。


同性愛。ホモ。


それだけは、回避せねばならない。

自分は恋を知らないだけなのだと赤口は自分を納得させて、必死な思いで、女遊びを繰り返した。

そしてある日、赤口は全てが空しくなって女遊びをやめた。

それからは、男らしさを追求した。

身体を鍛え、勉強も。死ぬほど努力したのだ。

表面上は男の中の男に見えるように体裁を整えようともした。

そして実際、殆どの人間は騙されてくれた。

それはまるで同性愛者という烙印から逃げるかのようだった。

だが、救いもあった。同級生の男子にも全くときめかなかったのだ。

そう、自分は絶対にホモであるはずがない。

女に興味がないのは、恋をまだ知らないだけ。

つりあう相手がいないだけなのだ。

男に興味がないのがその証拠だ。

それは確信に変わり狂気へとひた走った。


そしてレッドに任命され、あの事件が起こる。

婚約者桃井からの絶縁。許せなかった。

何が許せなかったのだろうか?

確かに自分は異性として桃井を愛してはいない。

興味もない。

だが、自分の保身のために必要なのだ。

ホモではない。それだけを証明するためだけにヒロインを欲していたのだ。

殺してでも奪い取る。そんな狂気で彼女を殴ろうとしたとき、真に投げ飛ばされた。

パニックを起こした赤口は暴力を振るい……結局、完全な敗北を味わうことになった。

単純な腕力でも心でも負けた。自分は完全な悪役だったのだ。


そのときの真、それは自分が目指していた漢そのもだった。

それからは真のためになんでもした。

真との友情の先に真の漢になるヒントがあるのだと確信していた。

昔の漫画のように暑苦しい男の友情があるのだと信じたのだ。

だが、漢は自分を置いて去っていった。

最後まで漢として。


胸に穴が空いたようだった。

負け犬になったという羞恥心。

そして漢を目指すという道標がなくなったという焦り。

だが、このとき赤口は気づいていなかった。

人生を変えてしまうほどの深い哀しみ。その原因となった感情に。


そして、イエロー黄生桜と婚約した頃、自分の本性を理解した。


その日、赤口は眠りについていた。

それまで、何度も夢に出てきた真。

今までは無言で責めるような目をしていた。

だがその日の夢は違った。

真にキスをされる夢だった。

いやらしさのかけらもないバードキスの夢。

目が覚めた赤口は、疲れていたせいでわけのわからない夢を見てしまっただけなのだろうと思っていた。

だが、すぐに赤口は自分の下着の異変に気づいた。

ゴワゴワと固まったパンツ。


夢精。


生まれて初めてだった。

子供のようなキスの夢だったというのもショックだったが、その対象が男だったことがそのショックを上回ってしまった。

そして、それは死刑判決だった。

赤口は自分の本性に気がついてしまった。

今まで目を背けてきた、ほんとうの自分に。


そして、泣いた。声をあげて号泣した。

自分の気持ち。

尊敬ではなく恋。

友情ではなく愛。

自分が誰に恋をしていたのか。誰を愛していたのか。

その時、気づいてしまった。

だが、全ては遅すぎたのだ。


そして、自分を知ってしまった赤口は黄生に泣きながら土下座をして婚約を解消。

以後の人生を真に捧げようと決意を固めた。




「……というわけなのさ」


――聞かなければよかった……

真は涙目で麗亜にアイコンタクトと送る。


『タ・ス・ケ・テ』


『ド・ウ・シ・ロ・ト・?』


麗亜が返す。

それを見て、真は逃走を決意。

だが駆け出す瞬間、フェオドラ(赤口)に肩を掴まれる。


「どこに行くんだい? 大丈夫。 今の私は完全なオンナだよ」


「中身! 中身! 魂! OSが男だろ!」


わめく真を無視して。服を脱ぎ出す。


「なッ! なんで服を脱ぐ」


フェオドラ(赤口)は鼻で笑い、言い放つ。


「交尾だよ!交尾! 犯るのさ! 君をネッ!」


「させるかボケェッ!」


麗亜がフェオドラを羽交い絞めにする。


「ぬおおおおおッ! はなせえええッ!」


「離すかぁッ! このド変態! XVIDE○でもニューハーフとホモは別ページだぁッ!」


と元ロボは自分を棚に上げド変態を怒鳴る。


「ニューハーフではないわぁッ! 正真正銘のオンナだぁッ! 女として生まれて女として生きてきたんじゃああああッ!」


ド変態が暴れながら叫ぶ。


「うるせえぇッ!」


麗亜がフェオドラを羽交い絞めにしたままの手を首の後ろへ回す。フルネルソン。

そして間髪入れず後方へ反り投げる。スープレックス。

フルネルソンスープレックス、飛龍式原爆固め、ドラゴンスープレックス。


床に頭から突き刺さった、フェオドラ。

普通ならただではすまない。


「前世が間違ってただけなんじゃあああぁッ!」


野獣の咆哮。

元気だった。


怯える真。

カオスがそこにはあった。

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