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さいたま事件

グロ注意。

JRさいたま新都心駅


黄生は赤口の演説を見ていた。

今や赤口の存在は注目の的だった。

歴代の戦隊メンバーが国会に召喚され緑の平均寿命や死亡率、整形手術のことまでが報道されていた。

そして時を同じくして、国境なきレンジャーが緑へ宣戦布告。

政府は国境なきレンジャーを悪の組織と認定、新しい戦隊を組織した。

だが、以前のような戦隊に対する熱狂はない。

正義の敵は別の正義。

それを国民は理解してしまったのだ。


赤口の演説は熱がこもっていた。

熱狂する聴衆。

レッドコールが上がる。

黄生に気づいたのだろうか、赤口が笑みを浮かべ強く手を振っている。

黄生も手を振り返し、持っていたカメラを構える。

黄生はカメラを構えシャッターを押す。何枚も写真を撮る。

聴衆の興奮が最高潮に達した。


その時、爆発が起こった。



それは演説中に起こった。

レッドコールが上がり、それに答えようと聴衆に手を振っていた。

遠くに黄生の姿を確認して手を振った。伝わったかどうかはわからない。

桃井や青山、そして聴衆にこの3年で話せなかったこと。それを全て話そう。

そう思いながら演説をする。

聴衆の最前列、すぐ目の前に少年が立っているのに気づいた。


真だった。


いや、真の顔をした緑の一族だった。

いつかは殺しに来るだろうと思っていたが、案外早かった。聴衆がいる目の前なのにだ。

それほど、邪魔だったのだろうか。


少年の身体に撒きついたリード線のようなものが見えた。

すぐに駆け出す。

真の顔をした少年にタックルをして押し倒す。

とにかく聴衆に被害を出してはならない。

そのまま少年に覆いかぶさった瞬間、赤口は自分の体が跳ね上がったのを感じ、そのまま気を失った。




爆発。

聴衆はパニックを起こした。

我先にと逃げ出す。


だが、黄生だけは赤口に向かって走り出す。

一度は結婚を考えた男だ。だが、異性として恋愛感情も愛情をも感じたことはなかった。

ただ、単に真面目さを取り繕った薄っぺらで面白みのない学級委員みたいな男。

正しいだけの傲慢さを思い知らされた愚かな男。

一度の失敗で人生を変えてしまった男。

そんな彼が好きだった。

愛してはいなかったが、友情は感じていた。

そう、大切な友人ではあったのだ。


爆弾で吹き飛ばされたのだろうか、赤口は仰向けで倒れていた。

SPや聴衆、何人もが倒れている。だが、殆どの人は自力で動いていた。

一番重篤なのは赤口だろう。動けないように見える。

辺りは血で染まり、病院での死では嗅ぐことのできない、火薬と生臭い血のにおいが充満していた。

誰も助けようとはしていない。

皆、逃げるので必死なのだ。


黄生は自分が呆けていたのに気づいて慌てて赤口に駆け寄る。

赤口は全身を血に染めていた。

血まみれの顔。血の中からも所々えぐれているのがわかる。

スーツはびりびりに破け、その奥からは血が滴っている。

浅い呼吸を繰り返しながら、たまに咳き込む。

首には黒い金属の破片が刺さっている。

何をすればいいのかもわからないほど、ボロボロになった赤口の手を取る。

指が数本吹き飛んでいて腕の肉のかなりの部分が無くなっていた。

赤口が強く咳き込み、体が痙攣し、目を見開いた。

頬の肉が吹き飛んでいて、奥歯も無くなっていた。


赤口は目を覚ました。

今まで寝ていたらしい。

手の感覚がおかしいことに気づく。

手を顔の前に持ってこようとするが手をあげることができない。

異常なほど重く感じる。

少しづつ、少しづつ、力を入れながら手を引きずり顔の前に持って来る。

そして赤口が見たもの、それは手のひらが半分ほど裂け、指が無くなっている自分の手だった。

腕も肉が裂けぼろぼろになっている。

手に力が入らない。

筋肉まで裂けているからだ。

首が熱い。

首から何かが流れている。

苦しい。呼吸がうまくできない。

耳の中でジンジンと音がする。

ジンジンジンジンとうるさすぎて周りの音が何も聞こえない。


赤口は誰かが手を掴んでいるのに気がついた。

黄生だった。

泣いている。

酷いことをした自分のためにまだ涙を流してくれるのか。

申し訳ない気持ちとうれしい気持ちが同時に湧き上がる。


「ご……め……ん……」


それだけを唸り声のようになりながら発する。

黄生に届いただろうか……


淵が緑色に光る黒くて丸いものがいくつも見える。

それがどんどん増えていく。

ああ、これが死なのかと赤口は妙に冷静な気分になって受け入れた。

とうとう、皮膚の感覚すらも失われた。

なぜか根拠のない幸福感に包まれる。

そして、今まで味わったことのない猛烈な眠気が襲う。

黒かったものが消え、光が見える。

光に吸い込まれるような感覚がしてそこで再び意識が失われた。


今度は二度と目覚めることはない。

それが死。



「陽介! 陽介! 陽介! 陽介! 陽介!」


黄生は悲鳴のような声を上げていた。

赤口の喉から詰まったような音が聞こえた。

瞳孔が開いた目を開けたまま、赤口の身体は動かなくなった。

サイレンの音。うめき声。泣き喚く子供の声。

そこは地獄だった。


その中で黄生は自分が泣いていることに気がついた。





目覚めないはずの死。そこから赤口の意識は戻ってきた。

目の前には、大男。


「いよッ! まったく、真ちゃんの周りは面白い人材ばかりだのう」


――なぜ、知っている?


「貴方は何者ですか?」


「オージン。まあ、北欧神話のアレな」


雑な自己紹介。

体裁を整えることすらしない。


「……真が何かやらかしましたか?」


露骨に目をそらしながらオージンは語る。


「うん、まあそうだ。 えーっと。 本題本題っと。 勇者よ、真ちゃんのところに行きたくはないかね?」


赤口死亡。

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