表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/95

あさまでなまなんとか(放送事故つき)

真が死んでから3年。


赤口は保守系のタカ派の若手政治家として名を馳せていた。

元戦隊のレッドを務めるだけある甘いマスク。

友と恋人を亡くしたという重いバックストーリー。

真と桃井に自信をへし折られたせいか、人柄が良く見える柔らかい物腰。

そして筋は通ってはいるが過激な発言。

メディアがこぞって出演させた。

批判するためだ。


戦隊を使うのではなく正規の自衛隊戦力を使うべき。

子供を実質的な戦場に送り出すのはおかしい。

戦隊の装備を自衛隊や警察に一般化すべきだ。

戦隊に関するあらゆる技術を秘匿するのではなく開放すべきだ。

それが赤口の主張である。

当たり前のことを言っている彼の主張はだんだんと賛同者を増やしていった。



「でもねえ! あんたッ! あんたがレッドやってた時だって警察と自衛隊合わせて千人以上の殉職者が出たんですよ! それをわかっているのか!」


目の前の男はなぜか勝ち誇ったような顔で赤口を見ている。


テレビの生放送の討論番組。そこに赤口は出演している。

戦隊装備をその技術の知識を警察や自衛隊に開示すべきか否か。

それがテーマである。

もう何年も議論してきた。いつもいつも彼らは赤口を倒すために論戦を挑んできた。

そして最後には誰もが右翼というレッテル貼りに終始する。

いつも通り。それがこの茶番。同じ事を繰り返して議論はいつまでも先に進まない。

だが茶番だからこそいつも通りでなければならない。

いつもの通り、赤口は目の前の男を真っ直ぐ見ながら、威圧感を与えないよう丁寧に言葉を選んで答える。


「だからこそ全ての情報を開示すべきなんです。

僕らのような素人ではなく訓練を受けた警察官や自衛官こそ戦隊装備を使うのに相応しい。

彼らが装備を使えば死者が出ることもないでしょう。

それに戦隊装備で治安活動をすれば、あっという間に秘密結社などは壊滅できます。

被害を未然に防ぐことも難しくはないでしょう。

素人の子供に戦わせる必要なんてありませんよ。

それに一年の任期が終わったら装備は政府に回収されるんです。

余っているんですよ!使って何が悪いんですか」


「あんたねー! 何言ってるかわかってるのか! 自衛隊が戦隊装備を市民に向けたらどうするんだよ! 責任取れないよ!」


この男は何を言っているのだ?

市民を威嚇・攻撃する必要なんてどこにある?

赤口はため息をつく。メディアはいつもこうだ。事実から目をそらす事だけを考えている。

人数と装備を整えて犯罪者やテロリストとして検挙する。

そんな単純なことすら、平和のお題目を基に複雑にされる。


刺激するから警察は取り締まってはならない。

反政府運動なのだから表現の自由の保護の下である。

相手にも言い分がある。

全て何ものかの陰謀だ。


馬鹿馬鹿しい。

この男だけじゃない。

子供に全てを押し付けるこの世界の全てがだ。

だが、もううんざりだ。誰もこの世界の異常さを知らない。

そう彼らは何も知らないのだ。

口止めはされている。口止めに見合う報酬も約束されている。

それを何十年もかけてでも変えようと思った。

何十年も茶番を繰り返して変えてやろうと思った。

元レッドの仲間の議員にも何度も釘を刺されている。

余計なことはするなと。命はないとまで脅されている。それでも最大限努力はしてきた。

だからこそ、こんなくだらない奴相手でも我慢しなければならない。

ストレスをためながら茶番に挑もうとする赤口。

ふと目の前の男を見る。

いやらしく光る下卑た目。

そしてその男は赤口に言ってはならない言葉を吐いた。


「地味なグリーンを見殺しにした負け犬は違うねぇ! 今度は警察や自衛隊に死ねだってさ」


最初、何を言われているのかわからなかった。

だがすぐに理解した。そうだ全く正しい。

自分は負け犬なのだ。名誉すらも持っていない。卑怯な負け犬なのだ。

そんな負け犬が何を気にする必要があるのだろう?

自分は失うものなどなにももってはいないのだ。

安全に世の中をを変えようとすること自体が間違っていたのだ。


その時、赤口の覚悟が決まった。


深い深いため息をつく。

この日、自分は全てを敵に回す。メディアだけではない。

この世界をだ。

かけ金は自分の命だ。安い自分の命だ。


「……わかりました」


目の前の男は勝ったとでも思ったのか加虐的な笑みを浮かべ言い放った。


「なにがだ! 自分が負け犬だって認めたのかねぇ! 国民にちゃんと謝りなさいよ!」


「私が謝罪すべきなのは情報を隠していることです。

そして私が今から言うのは、私が知っている全ての情報です。

まずは……」


心の奥底にしまっていた全てをぶちまける。

この日、少なくない人数が社会を維持するための犠牲を知ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ