黄生1
黄生桜はこの3年を振り返る。
最終決戦からの3年はひどいものだった。
大河ドラマに出演した後、すぐに会ったこともない男とのスキャンダルが連日報道された。
それが致命傷となり強制降板。
プロダクションやテレビ局に干されて、仕事もなくなり、アダルトビデオに出演させられそうになって慌てて引退。
仕方ないので以前からキープしていた赤口と結婚でもしようと思っていたら、泣きながら土下座されて何度も何度も謝られて……結局、別れた。
最後まで面白みの無い男だった。
仕事も恋人も失った黄生を救い上げたのが今の出版社。
仕事の内容は戦隊メンバーとしての身体能力を使っての取材。
芸能人のスキャンダル、ヤクザの抗争、暴走族への取材、どれもこれもくだらない。
なぜこんなくだらい仕事をしているのだろう?
自分はもっと高く飛べる。
自分は選ばれた存在のはずなのだ。
これも全てあの緑真のせいだ。赤口も青山も桃井も真に会ってから変わってしまった。
なぜ、あんなエッチなことばかり考えている何のとりえも無いくだらない男を気にするのだろう?
犠牲になって当然だ。当たり前なのだ。
真に対する憎しみの気持ちが日増しに強くなっていく。
死者を憎んでも、自分の墓の穴を掘っているだけだというのに。
だが、そんな日々も終わりだ。
数ヶ月前、赤口からメールを受け取った。
『桃井の行方がわかった。
X日にさいたま市へ遊説へ行く。
その後に会おう。青山も来る。 赤口』
本当だったら赤口に会うなんて嫌だ。
だが、桃井の情報を得られるのだ。
癌で死んだと言われていた桃井。
桃井が生きていた。
黄生には、ただそれだけで自分の人生が無駄ではなかったかのように思えた。
なんか寒気が……まずい……インフル?
インフルなのか?




